軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

165 湯船作り

「風呂を作るぞおおおおおおおおおおおおッッ!!」

ついに来た。

この時が。

俺はこれより風呂作りに着手する。

長い間果たそうとして果たせなかった悲願だ!!

そもそもは、我が農場に屋敷を建てる際に、一緒に作成する予定だった。

しかしお湯を沸かすシステムが確立できなかったり、湯船に使う材質に拘りを持ったりしてなかなか進まず、今日まで放置されていた。

半ば頓挫していたこの案件に、ついに差す光明。

それがホルコスフォンの掘り当てた温泉だった!!

「まさか温泉が出てくるとはなあ……!?」

温泉って、火山帯から湧き出すものだって聞いたけど。

この辺どう見回したって火山なんか見当たらないのになあ。

しかし! 重要なのは目の前の事実!

我が農場に温泉が湧きだしたという事実だけが重要なのだ!!

風呂設置に問題となっていた湯沸しのシステムも、温水が勝手に地下から湧き出てくれるんなら必要なし! 一気に解決!

そして、風呂場に使うための材木も、冬の間にダンジョン果樹園で育てておいた檜がある。

そう、山ダンジョンでは果樹だけでなく高級材木も『至高の担い手』で育てておいたのだ。

条件は揃った!

「オークボ! オークたちを招集しろ!! 山ダンジョンから檜を切り出してくるんだ!!」

こうして土木担当のオークチームを駆り出し。

材木の確保、施工。

陶器製のパイプを使って温泉の湧きだす穴から、屋敷を繋いで湯船に注いで……。

* * *

「完成だああああーーーーッ!!」

風呂が。

ついに念願の風呂が完成!

総檜造りで、独特の香りが心地よい!

「今度は何を作ったの旦那様?」

「食い物じゃないのか? じゃあ食い物が出来た時におれを呼んでくれ」

またしても独特の嗅覚で、プラティとヴィールがやって来た。

俺がなんか作り出すと、第六感としか思えない察知能力で駆けつけてくる。

「……ほう、これがお風呂というものね? 話に聞いたから知ってるわ」

とプラティが物珍し気に、既にお湯でいっぱいになった湯船を観察する。

ヴィールの方は食べ物を作ったんじゃないとわかった途端どこかへ行ってしまった。

「前々から言ってたものね旦那様。『お風呂作るお風呂作る』って。でも結局これって体を洗うものでしょう? なら別に水浴びでもいいでしょうに、お湯にすると、どう違いがあるの?」

プラティも今回の作品が食べ物でなかったせいか、テンションの上がり具合がローペースだ。

では実際にたしかめてもらおうではないか。

総檜造りの天然温泉の気持ちよさを!!

* * *

そうして小一時間ほど経って。

「ああああああああ~~~~……」

湯船にどっぷり浸かったプラティは、心底脱力した唸り声を上げていた。

「あああぁ~~~…………」

上げていた。

「ああああああああああああああああああああああぁ~……」

上げることしかしなかった。

もはや完全にプラティは温泉の虜となり、快楽のうなりを上げる楽器と成り果てていた。

下半身も久々に人魚状に戻って、底なしの脱力状態と化している。

「ああああぁ~~……。あぁ……。あああああああぁ~~~……!」

「いい加減何か喋ってください。感想ください」

「気持ちよすぎぃ……。お湯の中に浸るのがこんなにいいなんて知らなかったぁ……!」

年がら年中海水の中にいる人魚からも好評ということで、温泉の凄さが改めて証明されたわけである。

凄いぞ温泉。ビバ温泉。

「じゃあ、俺もそろそろ入りたいので代わってくれない?」

現在俺は、湯船に浸るプラティを見下ろし中。

同じ浴室内で。

プラティが人魚形態に戻っているからこそ許される状況で、下半身は魚、上半身は薄いシャツを着ているから、俺の視界に入ってもギリ問題ない。

さすがに俺まで服を脱いで混浴したら風紀が乱れるのでNG。というので俺が入浴するためにはプラティに上がってもらわなければいけないのだ。

「え~? もうちょっと。もうちょっと入ってたい~」

これはダメだ。

プラティの精神は完全に温泉に溶かされてしまっている。

彼女が温泉にハマってくれるのは嬉しいし、温泉初体験の彼女にもっと満喫してもらうのもいいだろう。

その間俺は……、そうだ!

もっと気もちよく温泉できるように準備しておくのはどうだろう!?

即ち、体を動かし汗をたくさん掻いて、体の表面をドロドロにしてから一風呂浴びてサッパリすると気分爽快! というスンポーだ!

早速行動に移して、外で鍬を振りまくるぞー!!

* * *

さらに時間が経って、畑仕事に打ち込んだ俺は、体中汗だらけ土ぼこりビッシリ張り付き、一刻も早く風呂を浴びねば気もち悪くて仕方がない状況だ。

「まさにベストコンディション! さあ湯を浴びてサッパリするぞーッ!!」

さすがにプラティも、これだけの長時間はのぼせて入浴し続けられまい。

今度こそ念願の、総檜造り天然温泉へ!!

……と思ったら、さらなる問題が発生していた。

なんか屋敷の廊下に、全裸のエルフやサテュロスの娘たちが屯っておる!?

「きゃーッ!? 何ですかアナタたちッ!?」

年頃の娘がはしたない!?

俺は即座に両手で自分の目を覆ったが、ほんの一瞬だけ丸くて可愛いお尻やらが見えてしまった。

不可抗力だよね!

「あっ、聖者様!?」

「ちょうどいいところに来てくださいました! 聖者様からも言ってやってください!!」

「先に入った子たち、全然譲ってくれないんですよ順番!!」

えええ~ッ!?

どうやら、完成したお風呂には我が農場の住人たちが我先にと入浴してイモ洗い状態らしい。

当然入浴中の彼女らは全裸なため、俺が直接見るわけにもいかないが目隠し装備で風呂場に突入する。

「おおい、これはどういうことなんだ!?」

「目隠しされながら『どうなんだ!?』って聞かれてもなあ」

その声はパッファか!?

今、一体何人湯船に入っているんだ!?

「聖者様~、私もおりますよ~」

「パヌ!?」

「ああ~、気持ちいい。こんなにいいものは森の中にもなかったぞ~」

「さらにエルロン!?」

人魚にサテュロス、さらにエルフまでごった煮のお風呂とかどんな酒池肉林だ!?

「待ってください聖者様。これには深いわけがありまして……!」

「バティの声!? お前まで入っているのか!?」

屋敷内に設置した湯船は、せいぜい三人も入ったらギュウギュウの容積だったはずだけど。

一体今湯船の中はどんな状態になっているんだ!?

目隠ししているからわからん!

「狭いですー。でもあったかくて気持ちいいですー」

大地の精霊までいるのか!?

「プラティさんがですね、長く湯に入りすぎましてのぼせてしまいまして」

「え? マジで? 大丈夫なの?」

「アイツに忠実なランプアイが見てるから大丈夫だよ。それより、その騒ぎのせいで、風呂が皆から注目を浴びてしまい……!」

この惨状になったと。

湯船の中が美女たちのイモ洗い状態で、浴室の外にまであふれるような事態になってしまったと!?

「聖者様! 何とかしてください!」

「ずっと裸のまま順番待ちしてたら風邪ひいちゃいそうです! 早く順番替わるように言ってやってください!!」

「そもそも全員が入るのに小さすぎます! 拡張を! 皆が入れるように改造を!!」

お風呂が皆に大好評なのは嬉しいが、完成した傍から改良を要求されるというとんでもない状況。

我が農場のお風呂獲得物語は、大団円を迎えると思いきや、結局終わったのは序章で、間髪なく第二章へと続くことになる。

第二章、大浴場作成編。

……の前に、俺自身は女の子だらけの風呂場に分け入ることもできないので、結局外でオークボやゴブ吉たちと一緒に水浴びした。

* * *

「おい、ご主人様! おれの知らないうちに、あのお湯溜まり大人気じゃないか! おれが最初に発見したのに! プラティと一緒に発見したのに!」

そしてヴィールのヤツが、プラティと共に一番風呂に入るチャンスを逃したと今さら悔やみまくっていた。

薄々気づいてはいたが、コイツ高頻度でビッグウェーブに乗り遅れるな。