軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

166 大浴場・建設編

というわけで。

もっと大きな浴場を新たに拵えることになりました。

お風呂人気は俺の想像以上で、エルフチームやサテュロスチームを中心に、安定した入浴環境を熱望。

要するに「待たなくてもお風呂に入れるようにして!」っていう要望が多数の上に熱烈で、応えないわけにはいかなくなったのだ。

聞くところによれば、こちらの世界にはお湯に浸かって体を洗うという習慣自体がないらしい。

ファンタジー異世界における洗体といえばもっぱら水で濡らした布巾で体を拭くか、率直に水浴び。

一部地域でサウナ的なものもあるにはあるが、極めてマイナーなのだそうな。

そんな文化圏に風呂を持ち込んだのだから、そりゃ大ブレイクするわって話で。

……ただ。

今や総勢二百人はいるウチの農場。全員を満足させるには屋敷の風呂場を拡張する程度ではとても足りない追いつかない。

どうすればいいかと思案した結果……。

「……新しく大浴場作ろう」

という結論しか出てこなかった。

銭湯とかスパリゾートとか、あれぐらいの規模で男湯と女湯をちゃんと分けて住人たちの憩いの場と化すのだ!!

忙しくなってきたぞ!!

* * *

「……では始めよう」

まずは大浴場を建てる場所の選定だ。

その建設目的は、住人たちの疲れを癒し、憩いを提供すること。

であるからには彼らの主な職場である畑の近く……、ということにしたかったが、少し離れたところに、あえて縄張りをした。

畑はこれからも拡張する予定があるし、あともう一つ不安なことが。

温泉というのは大抵、地下の様々な鉱物成分を含有していて、場合によっては強い酸性もしくはアルカリ性を有している。

そういう成分を畑の近くに垂れ流して、作物の育成に影響がないかと一抹の不安もあるのだ。

屋敷にある個人用浴室も、使い終わったお湯はガキヒトデでしっかり浄化してから海に流す下水ルートを確立してはあるけれども。

しっかり念には念を入れたい。

ということで畑エリアと浴場は隔離できる距離を確保させていただきました。

「ここなんかいいな」

俺は、農場の外部でやや離れた平地を建設予定地と定めた。

地質が硬く、多少深く掘っても容易に地盤が崩れなさそうで、とてもいい。

目に見える範囲に海もあって、排水も都合がよさそうだ。

「よし、ここに温泉浴場を建てよう」

そういうことになった。

浴場を作るにはお湯が必要で、その当ては地下を流れる温泉に頼る。

屋敷の浴室とまったく同じだ。

既にレタスレートちゃんの個人畑を犠牲にして湧き出す温泉は、ここまでパイプでも引いて流してくるには遠すぎるし、実際のところ湧出量は屋敷の個人浴室を満たすので精一杯。

ということで、新たに直下から温泉を湧き出させるのがもっともいいだろう、ということで再び温泉掘りにチャレンジしてもらうことになった。

他ならぬ天使ホルコスフォンに。

「またお願いします」

「マスターの命令なれば、なんなりと」

最初に温泉を掘り当ててくれたのは彼女だからな。

何やら天使には、かつて世界を滅ぼしただけに様々の能力(機能?)が備わって(搭載されて?)いて、それを駆使することで温泉掘り当ても朝飯前らしい。

『まこと、恐ろしい存在ですな』

俺と並んで立つノーライフキングの先生が言った。

『あの天使とやらの能力は、ワシやドラゴンにも匹敵するか、超えるでしょう。世界二大災厄と持ち上げられてはおりますが、上には上がいるということを今さらながら思い知らされます』

先生がここにいるのは、ここ大浴場建設予定地が、先生のダンジョンの近くにあるからだ。

位置関係的に、我が農場と先生のダンジョンの中間辺り?

やや先生のダンジョン寄り地点。

先生が主を務めるダンジョンは、地下に広がる洞窟ダンジョン。なので温泉を掘り進めた時ダンジョン内部にぶつかるかもしれない。そうなっては問題と、あらかじめ承諾を得んとしたが。

『そういう心配ならば無用です聖者様』

先生はいつも通りの鷹揚な口調で言うのだった。

『ダンジョンとは、対流マナの淀みに出来上がった時空の歪み。我が洞窟ダンジョンも存在するのは歪曲した亜空間の内で、実際に地下にあるのではありません。ゆえにどれだけ掘り下げようと接する可能性は皆無』

と、聞いて一安心。

しかし先生は、せっかくの珍しいことが行われると言うので見学にいらっしゃってくれた。

俺と先生が見上げる中、ホルコスフォンは持ち前の飛行能力で空中に静止していた。

「ではこれより、地盤の掘削作業を行います」

わざわざ宣言してくれる真面目な子だ。

「……右手より、ドラゴンキラー」

ブンと空気を焼く音を立てて、ホルコスフォンの右手から光の刃が伸びた。

ビームサーベル?

「……左手より、ゴッドイーター」

左手からも同様。

二振りのビームサーベルが左右それぞれの手から放たれる。

光剣二刀流。

しかもホルコスフォンは、その両手を合わせることで、光の刃をも連なり一振りの大光剣と化す。

「竜と神を屠る刃が一つ連なり、大地を穿ちます」

ホルコスフォンはみずからの体を大回転させ、さながら錐のごとくに鋭く大地へ向けて突進した。

あれはまるで……!?

「ドリルではないかーッ!?」

『天使の必殺技だそうですな。彼女自身ではありませんが、別の個体が大壊滅の際、当時のガイザードラゴンをあれで貫死させたとか』

「マジですか!?」

どうして先生そんなこと知っているのかと一瞬疑問だったが、前にハデス神を呼び出した時に、色々聞いたらしい。

ご自分が不死者となる前の時代とはいえ、知らないことがあるというのは死者の王のプライドを傷つけたのか。

でもこうして勉強したから抜かりはない、ってこと?

とにかく、過去の竜王を滅ぼした消滅剣も、現在は温泉掘り用の掘削機として大活躍しております。

ホルコスフォンはみずからをドリルとして地中深く掘り進み……。

ほどなく。

その穴から高温の水柱が噴き上がった。

「おおーッ!?」

本当に簡単に出るな温泉。

ホルコスフォンが天使の力を駆使しているから、そう見えるのだろうが。

「よし! ここからは俺たちの仕事だ!!」

俺の後ろには既に、土木工事担当のオークチームや、今回は左官としてエルフチーム、細かい支援にゴブリンチームなどが控えていた。

「建てるぞ大浴場!! あったかい風呂に浸かりたいかッ!?」

「「「「「「おおーッッ!!」」」」」」

「毎日体を清潔に保ちたいか!?」

「「「「「「おおぉーッ!!」」」」」」

「温泉効果で美肌になりたいか!?」

「「「「「「にゃああああぁーーーーーッッ!!」」」」」」

最後は一際、女性陣の反応が大きかった。

材木も既に伐り出してあり、作業者たちの心身も絶好調。

やはりお風呂に入れるという目的がモチベーションを高騰させるのか。

実行された浴場作りは、常にないほどの高ペースで進み、完璧に近いクオリティで終わった。