軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1387 ジュニアの冒険:ざまぁ社会人編

「ノリトッ!?」

「兄貴ッ!?」

だばだばだばー。

思わぬところで再会する僕たち兄弟。

次男ノリトとは、こないだ会ったばかりなのに。

遭遇スパンが短すぎる。少なくともあと二~三年は顔を合わさずにいたかった。

別に仲が悪いわけじゃない。

歳のいった兄弟なんてそんなものよ。

「はッ、すみませんオベローヌ様を置いてきぼりにして! いやー、コイツ不肖の兄でして、こんなところで遭遇するのが意外なものでしたから、つい驚いてしまいやんした! げへへへへへへへ!」

誰が不肖だ!?

そりゃーお前みてーに人望ないしカリスマ性もないし弛まぬ努力もしていない不肖の兄だよ! コノヤロウ!

ヒトを見下して楽しいか!?

「はぁあああああッ!? そっちこそ才能に恵まれやがって! ヒトのことを僻める立場かあぁあッ!?」

公共の場で争いが始まる。

「この兄弟も中々闇深そうですなあ」

シャクスさん冷静に分析しないで。

しかしノリトのヤツ、ヴァルプルギス商会長オベローヌさん相手に、どうしてそんな三下ムーブかましてるんだ?

ウェーゴの仲間たちの前ではあんなに堂々と振る舞っているのに、相手によってこんなに鮮やかに態度を変えられるなんて。

社交性◎か?

「そりゃー出資者相手にへりくだるのは当然だろう。資金援助のためなら相手のケツだって舐めるぜオレは」

「やめてくださいね」

オベローヌさんが割とガチ目のトーンで言った。

……ん?

出資者?

資金援助?

「研究費の捻出のためだよ。兄貴を超えるために色々しているからな。そして研究のためには金がかかるんだ」

え?

その話前にも聞いたことがあるような?

たしかお前、レタスレートおばさんからも資金貰ってなかったっけ。

「おばさん一人の援助だけで足りるかよ! だからできるだけ複数のスポンサーを得られるように日々努力してるの! 兄貴とは違うの!」

なんでだよ!?

僕だって日々努力しているよ!

まあノリトは普通に僕を滅殺しようと様々な暗殺拳法を編み出している他に、土壌改良の方法とかも新設してるっぽいし資金提供のうま味は充分あるだろう。

かと言ってあんな太鼓持ちをする必要があるのかというか……。

「あの……ちょっと待ってください?」

そこへシャクスさんが震える声で言う。

「そうした資金提供の相談なら、我がパンデモニウム商会にしてくれなかったのは何故ですか?」

……ふむ、言われてみれば?

シャクスさんの言うことはもっともだ。

「我らパンデモニウム商会は、お父上の頃から長く長くお付き合いさせていただいています。信頼も構築してきたと自負しておりましたのに、どうして我らを差し置いてヴァルプルギス商会に?」

そう言いたくなる気持ちもわかる。

ノリトのことだから『オヤジと同じ取引先なんて使いたくない!』なんて反抗期全開の動機でパンデモニウム商会を避けた可能性もある。

そういうお年頃の弟だ。

コラ、ノリト!

そういうの父さんガチで傷つくんだぞ、やめなさい!!

「わかってるよ! オレだってさすがにそこまでガキじゃねえよ! それにコネがあるなら迷わず使う! 舎弟どもを路頭に迷わすぐらいならプライド何ぞ迷わず捨てる! それがオレの流儀だぜ!!」

ぐぬッ?

この弟、そんな真っ直ぐな眼差しで。

「では、なおさらなんで我が商会をお避けに?」

「いや、行ったよ最初に、オヤジと懇意のパンデモニウム商会に」

ノリトは語る。

「そしたら門前払いくらってよ」

「ゲートフロント払いッ!?」

「『お前みたいなどこの馬の骨ともわからんガキに、由緒あるパンデモニウム商会が相手するわけがないだろう』『どうせガキの作る発明なんて二束三文のつまらんものに違いない。そんなものは下町の三流商会にでも拾ってもらえ』とか言われて叩き出されたわ」

『御社と懇意の聖者の息子です! 次男です!』とコネをブン回す隙間もなかった……とノリトは語る。

「の、ノリト様……そう言ってアナタを追い返した者は……」

「奇遇にもそこにおりますね」

とノリトが指さす先には見慣れた……そう僕たちにとってお馴染みの……。

「シャゼスぅううううううううううううううッッ!!」

父が子にブチ切れた。

「お前は何をやっとんじゃぁあああああッッ!! ノリト様だぞ! 聖者様による神の発想力と、プラティ様の悪魔の頭脳を併せ持った最強の天才だぞぉおおおおおおおッッ!!」

シャクスさん、ノリトに対してそんな評価だったのか。

普通は隠すものだろうが、実子によるあまりのやらかしに取り繕うこともできてない。

「そんなノリト様の考え出した発明であれば、大当たり確実のリターン極大、おいしいばかりの安牌案件! それを自分から手放すなんて何を考えておるぁああああッッ!?」

「えええええッ!? そんなこと言われたって、教えてもらわなきゃわからねえよ!」

「しっかり教えただろうが引継ぎの時に!! 何も聞いてなかったのか!? それとも聞いた傍から忘れてたかぁあああッ!?」

シャクスさんの怒号が凄まじい。

さもあろうとは思う。

ビッグなビジネスチャンスを逃すなんて商人にとっては絶対にあるまじき愚行だ。

しかも新会長シャゼスさんがしたのは、向こうから提案しにきたのをシャットアウトしてるんだから、ますます怒りは募るだろう。

ネギ背負ってやって来たカモをわざわざ追い返すなんて正気の沙汰ではない。

「お前はッ! お前はヤバいだろうなと感じていたがまさかここまでとはッ!?」

「なんだよ、知らないんだから仕方ないだろ! オヤジと仲良しだって言うならなんで最初に言わないんだよ!」

「言われる前に知っておくべきだと言ってるんだよ!!」

うわぁ、シャクスさん憤怒が爆発。

引退する歳にまでなって、あんなにキレ散らかさなきゃならないなんて。

ウチの父さんがあんな風にならないように、僕も今から励んでいかなければ。

「兄貴も今から励んでおけよ。何十年後かにオヤジがあんな風にキレ散らかさないように」

まさに今思っていることをそのまま指摘しないでくれないかな弟よ!!

自分でわかってることもヒトに言われたらムカつくってあるよね!

それでお前は?

パンデモニウム商会からお断りされてどうしたの?

「もちろん別のスポンサーを探したさ。一回のお断りで挫けるほどオレの雑草マインドはやわじゃねえ!」

お前言うほど雑草じゃないだろ。

そして見つけたのが……まさか……!?

「そう、このヴァルプルギス商会のオベローヌ様よ! こんな若僧の飛び込み営業に広い心で対応してくれた上に、接し方も懇切丁寧だったんだぜ!」

それは……交渉者の理想形……。

ヴァルプルギス商会の新星会長オベローヌさん……!

「それは当然ですよ。ノリトくんの披露してくれた新技術はどれも画期的なものでした。一年に五回収穫できる作物! 砂漠も農地化できる特殊肥料! さらに既存の作物でも従来品より何倍も美味しく、栄養価も高い! いずれも大ヒット間違いなしの金の卵!」

オベローヌさんが溌溂と目を輝かせる。

「そんなものを目前に並べられてときめかない商人はいません! ノリトさんとの出会いは私たちにとってこそ福音でした! ノリトさんのお陰で我が商会は大きく飛躍できましたッ!」

「そちらが最近景気がいい理由は、それかッ!?」

シャクスさんが荒ぶる。

そして再び息子シャゼスさんに当たり散らす。

「このバカ者がぁあああああッ! お前が! お前さえもっとしっかりしていたら、その利益はそのままウチが享受できていたんだぞ!!」

「し、知らねーよ! 知らねえからオレは悪くないだろ!!」

「知らないこと自体が悪いのだ! 何故そのことがわからん貴様ぁああああッッ!」

さすがのシャクスさんもこれには感情のコントロールが効かない模様。

そりゃこんな巨大すぎるビジネスチャンスを見逃すどころか見送ったのだからキレもしようか。

でもノリト、そんな革新技術を農場の外に持ち出していいのか?

せっかくだから農場国で独占した方がいいんでは?

「だって母ちゃんが金出してくんねえんだもん。自国で後援してくれないなら外に求めるのは当然だろう?」

弟も母も仁義がない。

こんな親族を抱えて、僕は上手く国を治めていけるのだろうか?