軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1371 閑話:代替わりのドミノ倒し

「四天王に……なる?」

初めて聞く娘の夢。

こんな歳になるまで子どもの夢を知らなかったなんて親失格……というのは一旦置いておいて……。

「何故四天王なのだ?」

四天王と言えば魔王軍のトップ。

魔王の直接下におり、魔王に代わって軍を指揮することもある。

非常に責任あり、武勲も高く、皆が憧れる地位だというのはわかる。

しかし魔王女という、生まれつき高い地位を持ったマリネにとってそこまで魅力的か、とも思う。

「私は思いましたの。いずれ魔王になるお兄上様の手助けを、どうすれば一番効果的にできるだろうか、と」

うん。

その長男お前のこと潜在的に恐れてるぞ。

「そのためにもっとも適した立場が四天王だと結論に達しましたわ! 私は四天王となり、陰に日向にお兄上様を支え、お守りするのですわ!」

なるほど……。

……なるほど?

でもお前、仮にも魔王女という立場で……。

「いいじゃないですか、過去の歴史に魔王弟、魔王妹で四天王に抜擢された者は多くおりますわ。昨今でもベルフェガミリアさんは前魔王の隠し子でお父上様の異母兄……!」

「わーッ! わーわーわーッ!!」

お前なんで知ってる!?

それ当人含めて知ってるのが五人に満たない極秘事項なんだが!?

とにかく大っぴらになると色々面倒なことになる今からでも! だから黙っていて!

「わかりましたわ! とにかく私は四天王になりたいのです! だからギャラクシーを巡って己を鍛え、四天王に相応しい強さを身に着けたのですわ!!」

そうかぁ……。

でもお前、たしかもう幼女の時点で滅茶苦茶強くなかったか?

大岩を跡形もなく消滅させたり、衝撃波で空を割ったり。

あとで報告を聞いて腰抜かしたぐらいだぞ、我。

「甘いですわねお父上様」

甘いのか。

「人間いつだって現状に満足していてはダメなのですわ。昨日の自分より素晴らしくあろうと自己鍛錬を絶やさない。それこそが人のあるべき姿ですわ」

それはそうなんだろうけれど。

娘よ……“過ぎたるは及ばざるがごとし”という言葉を知っているか?

「それゆえに宇宙を駆け巡り、黄金境を見つけたり、刺青の謎を解いたり、ラグビーとベースボールが入り混じった球技に興じたりしたのですわ! いくつもの試練を乗り越えてタフな女に成長しましたわ!」

そっかー。

すっる必要のない苦労を重ねたのを見て、父はなんと言えばいいんだろうな?

「そして今日、ついに四天王就任に挑戦しますの! 必ずや試練を乗り越えて四天王の一人になって見せますわ!」

そうは言うがマリネよ。

どうやって四天王になるか、お前知っているのか?

「もちろんですとも! 四天王になる方法は三パターンありますわ!

一つ、魔王と四天王の立会いの下に行われる四天王試験に合格すること。

二つ、前任四天王より推薦を受け、魔王と他四天王三人から承認を受けること。

三つ、魔王軍人二百名以上の立会いの下、現行の四天王を一騎打ちで倒すこと。

……ですわ!」

ちゃんと勉強しておるな。

「その中で私は……三番目の方法を選びますわ!!」

一番血の気の多い方法選んできた。

それ魔王軍が一番荒んでた時代のやり口で、昨今はほとんど実行されていないぞ。

戦争中だった、お前が生まれる以前にも廃れていた。

「頑張りますわ! 断じて行えば鬼神も避けますわ!」

その決意をもっと丸く収まる方向に使ってくれないものか。

「既に標的を決めておりますわ! 近日中に、その四天王に挑戦状を叩きつけますわ!」

やっぱりケンカ売るのか。

ちなみに誰に挑戦するのか押し終えておいてくれないか。先に我から謝っておくから。

「お忘れですかお父上様。四天王は代々、聖剣の継承家系が就くことになっています。そして私もお母上様から血統を受け継いでおりますわ!」

そうだな。

どぁが第二妃グラシャラこそかつては四天王。『怨』の称号を得ていた。

「つまり私も『怨』の四天王となる血統を有しているということ! ゆえに私は現四天王『怨』のレヴィアーサさんに挑みますわ!!」

* * *

二時間後。

早い。

もう決闘が行われるのか?

早急に設営された決闘場には、二百人を優に超えた人だかりができていた。

その中心には、今実の主役となる二人が相対している。

ことの発端……元凶ともいう我が愛娘マリネと。

現四天王『怨』のレヴィアーサ。

彼女は我が直属の部下でもあるのだが、相変わらずよくわからぬ人物だ。

表情も読めず、何を考えているかわからない。

しかし無能というわけではない、少なくともここ十年以上四天王としての職務をしっかりまっとうし、終戦から軍縮などの大きな変化に見舞われた魔王軍を支えてくれた。

ベルフェガミリアが去った時、マモルの対抗として魔軍司令の候補に残り続けたのも彼女だ。

主君としての彼女の評価は『よくわからんが頼りになる』だった。

そのレヴィアーサが我が娘に攻め立てられようとは。

先んじて土下座で謝って『挑戦を断ってもよい』とお墨付きを与えたものの、彼女は笑いながら挑戦を受けると言い切った。

彼女は一体何を考えているのだろう。

「この旅、挑戦を受けていただきありがとうございますわ!」

「いえいえ、敬愛するグラシャラ様のご息女とあれば、何でも聞いてあげちゃいますよ」

……いや?

ただ単にグラシャラの娘だから甘やかしているだけか?

レヴィアーサは元々グラシャラの副官だったからな。今も私よりグラシャラに従っている節がある。

「それでは、一発かましますわよー! 必殺! 爆熱魔族天壊拳ですわー!」

マリネの繰り出す拳から、赤熱する闘気が撃ちだされた。

その巨大さは、元の拳の数十倍……いや数百倍で、レヴィアーサの頭頂をかすめて天空へと飛び去っていった。

……やっぱ闘技場屋外に設定しておいてよかった。

屋内だった魔王城崩壊していたぞ。

「さすがはマリネ様ですね、グラシャラ様のご息女なだけはあります」

あれでビビっていないだと!?

居合わせた観客は大概が驚き恐れて泡噴いたり失神しているというのに。

あとグラシャラの娘ではあるけれど、グラシャラのことはとっくに超えていると思うぞ?

「アナタはその力でもって四天王の座に就こうというのですね。この私を排除してでも」

「私には目標がありますわ! そのためには犠牲もやむなしです!」

過激なこと言うなあ。

しかし、勝負はもう決まったようなものあろう。

「わかりました、降参します」

「へッ?」

次の瞬間、レヴィアーサが両手を上げた。

あれはまさしく降参のポーズ。

「まあ普通にあれだけの実力差を見せつけられたら降参するしかないですよね。わかりました。グラシャラ様から長年お預かりしてきた『怨』の四天王の座、ご息女へお返しいたします」

試合終了。

たしかに圧倒的な実力差であったが、そんなに簡単に負けを認めてしまっていいものなの?

「たしかにマリネ姫の実力から、次期魔王に担ぎ上げようとする動きはあります。こういうのは本人に気がなくても、周囲が騒げばそれだけで問題になるものです。そんな者らを黙らせるためにも四天王就任は有効な手段ではないですか?」

「えッ、そうなんですの?」

「過去、魔王家の血筋であろうとも四天王から魔王に即位した者はいませんからね」

そう。

四天王は昔、魔王家と争い敗れた家系の末裔だ。

つまり敗北者であり反逆者、その代表者である四天王に一度でも就いた者は、魔王という頂点に立てないという慣例だ。

っていうかマリネ聞き直した?

そこまで考えての四天王就任じゃなかったのか?

「マリネ姫のお兄様を思う心、国を思う心、感服いたしました。そのお心に報いるためなら私ごとき、喜んで『怨』の座を明け渡しましょう」

「でも、そうしたらレヴィアーサさんが無職になってしまいますけど、いいんですの?」

今更そこ気にするの?

もはやマリネが何を考えているのかわからない。

「私のことまで気遣ってくださるとは、本当にお心の深広い御方。しかし心配いりません。私はこれを機に、新たなる地位に向かってチャレンジしていきたいと思います」

新たな地位、とは?

「魔国宰相」

ええええええええええええええええッッ!?

「前々から興味あったんですよね。軍事の次は政治と。ルキフ・フォカレ様もそろそろ引退だし、後釜狙って頑張っちゃおうかなーって」

たしかにレヴィアーサの底知れない感じは政治家向きかもしれないが……!?

後任が育つのに十年はかかると言われた魔国宰相だが、軍部で数十年の経験を積んできたレヴィアーサなら即戦力?

時代、即刻動いちゃう?