軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1356 ジュニアの冒険:最後の将

僕、ジュニア。

……勝った。

長く果てしない戦いに。

しかも『勝ったからなんだ?』という何も得るもののない戦いだった。これが戦いの虚しさというものか。

突如として僕に挑んできた秘密組織ウェーゴ。その上層にいる幹部、農場六聖拳の高弟たちをことごとく撃破。

彼らの、まさに僕の『究極の担い手』へのメタとも捉えられる戦術。

農場聖拳の存在にも運用にもかなり困惑させられるし謎解きも必要であろうが、とりあえず戦いは終わった。

こちらにとって好ましい形に。

「ぐおおおおお……!?」

「まさか、我々が敗北するとは……!?」

「エヌ様になんと申し開きすればよいか……!?」

死屍累々と横たわる、死闘を繰り広げし好敵手たち。

安心してください、死んでいません。

さすがに命を奪うほど、こちらも覚悟決まっていない。

「やったなジュニア殿! さすが我が友!」

僕の後ろで嬉しそうに高揚するゴティア魔王子。

この人一体何しに同行したんだ……と思ったが解説兼リアクション役としては甚だ優秀であったか。

「さて敗北した以上はこちらの指示に従ってもらうとしよう。大人しく連行を受け、事情聴取ののちに貴殿らの目的、存在意義、組織の詳細などを明かしてもらいたい」

「うううぅ……!?」

ゴティア王子の要求は特に不躾なものではなく、体制側としては自分らの管理下に入っていない集団の補足管理は至極当然のものだ。

僕としてもそこまで自分でするのは面倒くさいので、ゴティア魔王子に出しゃばっていただけるのは非常に助かる。

元々魔国から始まったゴタゴタでもあるし管轄権も魔国にあるだろう。

迫られて秘密組織の方々はタジタジであるが。

「ぐぅ……どうする?」

「どうするもこうするも、我らの不始末で公権力の介入を受けたとあってはエヌ様になんと申し開きすればいいか……!」

「ジュニアにちょっかいをかけただけで、こんな事態にまで発展しようとは……!」

既に敗北を喫した六聖拳の面々にはもうふてぶてしさはなく、追い込まれた戸惑いと不安で満面となっていた。

もはやここから盛り返す手立てはあるまい。

「……いや、まだだ!」

あった。

「ここエヌ様のユートピアを、我らの落ち度で踏み荒らされるなど、それだけはあってはならない! こうなっては最後の手段……これだけは避けたかったが、奥の手に縋るより他ない!」

「なにぃ!?」

「まさか……あの御方に!?」

周囲の六聖拳の面々が俄かにざわめく。

「そうだ、我ら六聖拳、最後の将にお出ましいただく!!」

おおー。

そういえば六聖拳、六聖拳と言いながら目の前には五人しかいない。

『あと一人はどこに行った?』というやりとりは、さっきもやったばかりだ。

いるのか、最後の六人目?

いるならもったいぶらずに最初から雁首揃えてほしいものだが。

「やかましい! こちらの事情も把握していないくせに!」

「我ら最後の将は、人並み外れて多忙なのだ! 我らのような子どもと違ってな!」

自分で子どもと認めた?

「今も世界中を飛び回っているあの御方を、こちらの都合でお呼び立てするのは大変心苦しいことながら、エヌ様の聖域を踏み荒らされることには代えられん!」

「これも我らの不甲斐なさの致すところ! 恥を忍んで最後の将に助けを乞う!」

「ヘルプミー! カムバァーック!!」

騒ぎ出す彼ら。

その騒ぎっぷりが異様すぎて僕だけでなくゴティア魔王子もドン引き。

その隙を突いて……というものか、六聖拳のメンバーの一人が懐から、おもむろに何かを取り出し耳元に当てる。

なんだアレ?

そしておもむろに喋り出す。

誰に?

「……もしもし、最後の将のケータイでよろしいでしょうか? いつもお世話になっておりますリルレイです。……は? そんなフザけた呼び方するな? フザけてなんていません! これは我ら魂の絆でですね……!」

う~んついに頭ヤバくなったか?

虚空に向かって会話している彼を見てそう思わざるを得なかった。

「いやジュニア殿、あの様子はどう見ても、あの耳に当てている小さい板のようなものが何らかの通信魔道具と見るべきでは?」

やっぱり?

いや僕もそうじゃないかと思っていたんですよ本当ですよ?

「……はい、はい! 突然の呼び出しに応じてくださり本当にありがとうございます! お待ちしております!……はい? お土産ですか? そういうのはいいので、なるはやでお願いします!!」

話が通ったらしく、通信魔道具を耳から離してピッとスイッチを切る。

そして表情に自信を取り戻して……。

「ふわーっはっはっは! これで貴様らの命運は決まったぞ! もうすぐ我らが最後の将が駆けつけ、お前たちをボコボコのケチョンケチョンにしてくれることだろう!!」

そうか……。

だったら、その最後の将とやらが到着する前に、ここにいる皆にとどめ差して逃げるか。

「ちょっと待って! 待って!」

「それは性急すぎひん!? 余裕のないプレイ嫌われますよ!」

「この土地でとれた新鮮な野菜はいかがですか!?」

相手側からの執拗な時間稼ぎを受けて、待つこと三十分。

「おおー、このニンジンの、生でも食べられる瑞々しさ!」

「そうでしょう!? こっちの特製アボガドディップと併せてみてはいかがでしょう!?」

などとマッタリしていると、上空からなんかバラバラと騒音が……?

なんだ!?

せっかく長閑な農園の雰囲気が台無しだろうが!?

「あのヘリは……!?」

「最後の将だ! 最後の将のご登場だ!!」

減り?

よく見ると、空に浮かぶ何やら理解の範疇を超える物体が?

なんだアレ?

見たことないぞあんなの!?

金属製の箱のようなものの上部分に、グルグル回転するものがくっついている!?

目にも捉えられない速さで回転しているようだが、その力で浮いているのか!?

「はーっはっはっは! 最後の将の御到着だ! あのヘリに登場されている方こそ我ら農場六聖拳の六人目にして最後の将! その実力は我らごとき若輩とは隔絶している! 大人と子ども! ゾウとアリ! 上弦と下弦ほどの圧倒的差よ!」

あの……野菜スティックのお代わりは?

アボガドのディップ試したい……!

「時間稼ぎが済んだ以上、もう付き合ってやるいわれもないわ! 指でも齧っていろ!」

そんな酷い……!

そうこうしているうちにヘリ? とやらは地表に降り立った。

着地の際に凄い風が吹いてくるのがビックリだった。

一体何の魔道具だ?

空飛ぶ魔道具なんだろうが、そういうモノが開発運用されているなんて話をついぞ聞いたことがない。

しかもどうやら内部に人が乗っている模様。

扉を開けて……中から人が出てくる。

それは……!

「あらー、ジュニアじゃないの大きくなったわねー! 豆乳飲んでる?」

レタスレートおばさん!?

ぐはぁッ!?

おごッ!? ぶでッ!? ぎらはッ!?

「ん? 誰がオバサンですって?」

すみませんレタスレートおねえさん!?

お姉さんです! ハイ!

心得違いでした! 誠に申し訳ありません!!

「けっこうけっこう、アンタのそういう素直なところ昔から好きよ」

光栄であります!

はー、やっば。

しばらく会ってなかったせいで扱い方を失念していた。

なんでこんなにおばさん呼ばわりされることへの拒否反応が著しいのか?

微妙なお年頃なんだろうな。

しかし……どうしてまたここにレタスレートおば……ッッ。

……おねえさんが?

「ははは! 恐れおののいたであろう! この御方こそが農場六聖拳最後の将にして最強の刺客! 農場魔迷拳のレタスレート様だ!!」

はッ?

レタスレートおねえさんが、敵?