軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1355 ジュニアの冒険:天舞宝輪

「私の名はドミノクラウン、農場六聖拳の華麗なる闘士」

と言うお嬢様。

見た目お上品だし着ている服はフリルついてるし、闘士と言うよりもどこぞの貴族令嬢だな。

「使う流派は農場 伽蔑(キャベツ) 拳。今までの連中とは一味違うわよ?」

などという表情が蠱惑的。

後ろに控えている順番待ちの子も女性で農場六聖拳、残るは女性のみか。

「キミたちの使う技は、いずれも僕の対処的なものだということはわかった。それでキミは、どうやって僕の『究極の担い手』を封じるんだ?」

「結論かを急がないで。せっかちな男は嫌われるわよ」

そうは言われてもな。

相手のやり口がもうある程度はわかってるんだし、そこに注目が行くのは仕方のないことでは。

「女は過程を楽しむものなのよ。恋愛だってそう。ただ告白するだけじゃつまらない。相手に隙になってもらうまでの過程がないと……」

うーむ、よくわからない。

女性ってみんなそうなの?

しかし女神アフロディーテのまだ新しい記憶がうずいて、恋愛関係の話には悪寒が……!?

「だからアナタも存分に過程を楽しみなさい? 敗北までの過程を……?」

ん?

なんだ?

途中でよく聞こえなくなった。

あの、もっと大きな声でクッキリハッキリ喋っていただけませんでしょうか?

「ふふ……も、聞こ……ったようね。それが……の入り……」

はあ?

なんだって!?

だからもっと大きな声で!

ヒトを褒める時は大きな声で、貶すときはもっと大きな声で!

なんで彼女、ボソボソと小声でしか喋らないんだろう?

なんかドンドン聞き取りづらくなって……?

いや……!?

なんか後ろから呼びかけられているような気がする。

気になって後ろを振り返ると、ゴティア魔王子がなんか切羽詰まった表情で口を広げている。

「……の!……ュニ……のけ……ま……!」

なんだって?

何か叫んでるのか?

口の動きからして相当声を振り絞っているのにどうして聞き取りづらい?

いや、周囲の声が小さいのじゃなくて……。

僕の耳がおかしくなっている?

聴覚が封じられつつあるんだ!?

「……!…………ッ!?………………!」

気づいた時には遅かった!

もう何も聞こえない!?

「…………。……、…………。……………………」

正面に向かい合うドミノクラウンさんとやらが自慢気な顔で何か語っている。

きっと今起きている状況のことを説明してるんだろうなあ!

でも聞こえないんだから意味がない!

そこまで思って、ふと気づいた。

彼女は僕の感覚を封じようとしている。

何故そんなことをするのか。

それは僕の『究極の担い手』の能力行使に認識が必要不可欠だからだ。

触れたもののポテンシャルを最大限以上に引き出す『究極の担い手』。

しかしそれには『触れた』という認識が必要不可欠だ。

『何に』触れて、『どのような』ポテンシャルを引き出すか。

それが頭の中で決まっていない限り『究極の担い手』は正常に機能しない。

それは先日の、ザーガさんとの戦いで実証されたことでもある。

空気の層で認識を狂わされた僕は、正常に『究極の担い手』を発動できなかった。

では感覚そのものがなくなったら。

触れたものを認識するには、感覚が絶対必要だ。

より厳密にいえば触覚が。

触れたことを感じられなければ認識できない、つまりは『究極の担い手』は発動発動しない。

今はまだ聴覚だけだが、他の感覚もだんだんヤバい気がする。

だって視界が、少しずつ暗くなってくるんだもの!

だんだん暗くなって見えづらくなってくる。

恐らく嗅覚や味覚にも影響が出始めているはずだ。まだ自覚できていないけれど。

そして『究極の担い手』にとってもっとも重要な触覚も。

能力を封じるなら触覚だけ潰せばいいだろうに、五感すべてを潰してくるとは念入りな。

このままじゃ僕は何も聞こえず何も見えず、何の匂いも感じずに何の味もしないまま、何も感じないまま一撃ズドン。

恐ろしい技だ。

一体どういう原理で感覚を潰してくるんだろうと思いつつも、聴覚がないから説明も聞けない。

「ほほほほほほ!『究極の担い手』もこうなっては形無しねえ! もう充分に無明の絶望は味わえたでしょう!? なぶる趣味もないからさっさと片づけてやるわ!」

ドミノクラウンさんは勝利を確信したのか高笑いだ。

え? なんでその声が聞こえるのかだって?

それはもちろん、感覚遮断を解除したからだ。

そしてすかさず、ジュニア掌底!

「あきゃあああああああああッッ!?」

吹き飛ばされるドミノクラウンさん。

正確には、掌底から発生した風圧で吹き飛ばしたのだが。

女性相手を直接殴りつけるわけにもいかないからな。

母さんからも言われたものだ。

『歯向かう者は男だろうと女だろうと全力で叩き潰しなさい!』と。

……あれ?

「ど、どうして!? 感覚は封じられたはずなのに!?」

すっ飛ばされてゴロゴロ転んで、体中土埃まみれになったドミノクラウンさんが言う。

アナタ、僕の能力をちゃんとわかっていますよね?

触れたもののポテンシャルを極限以上に引き出す。

それは自分自身の感覚能力にだって作用する。

自分の感覚に『究極の担い手』を作用させて性能上昇、感覚遮断を強制解除したんだ!

その方法も、完璧に感覚がなくなってからじゃ無理だったがな。

本当に恐ろしいやり口だ。

惜しむらくは、感覚を奪っていく過程に時間がかかって、僕に悟られてしまったことだな。

やはり過程なんか悠長に味わってないで爆速で結果に行きつくべきだったな。

……か?

「きぃいいいいッ! 悔しい、だったら今度は気づく暇も与えず全感覚を潰してあげるわ!」

残念ながら同じ手は通じないぞ。

お陰で僕もその手に警戒するようになった。少しでも兆候があればすぐさま対応して感覚を復活させる!

キミたちとの戦いを通じて僕も成長したんだ。

「ドミノクラウンも情けないねえ。ついには私の出番かい?」

そう言って進み出たのは、最後の六聖拳。

五人目だけども。

この場に集合していたのが五人なのでしょうがない。

五人目も、四人目のドミノクラウンさん同様若い女性だった。

肌の色から魔族と推察される。

「クックックック、私の『究極の担い手』攻略法は、他の連中とは切り口を変えてあるよ。今までにない斬新な方法、アンタに読み切れるかねえ?」

さすがに四度も攻略されれば、攻略法も大体予測がついてくる。

しかし彼女は、これまでのパターンとはまた違う方法で、僕の『究極の担い手』を攻略してくるというのか?

一体どうやって……!?

「では見るがいい、変身!!」

変身だって!?

魔法によるものか? 一体何に変身を……!?

と思って変わった彼女を眺めると……?

僕?

僕が目の前にもう一人いる?

僕が僕を見詰めていました?

なんで? 二人いる? ウソ!?

「はーっはっはっは! 驚いたかい!? 相手を完全に真似る変身魔法! 今、私はまさにアンタそのものさね!」

いや、僕の顔でその口調しないで……!?

「私はアンタ、アンタは私! 正確な認識が必要となる『究極の担い手』、自他を判別できなくなる今の状態では使えまい! 農場神拳破れたり!」

風圧掌底!

「ぎゃいぃいいいいいいいいいいッッ!?」

いやいや。

どんなに自分そっくりが現れたところで、自分と他人の判別はつくよ。

着眼点はいいかもしれないが、詰めが甘い。

これで五人目も撃破。

農場六聖拳はこれにて全滅、戦いにも決着……か?