軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1354 ジュニアの冒険:モンハンの敵

ぬおおおおおおおおッ!?

地中からの攻撃!?

土中を泳ぐ人魚イエローテイルさんの猛攻に僕はタジタジだ。

元々水中に住む人魚は、水中でこそ真なる力を発揮する。

パワーもスピードも水中の方が段違いだし、水流を利用した固有の技だって使える。

それは陸人化薬で地上に適応したとしても。

人魚族は地上より水中の方が圧倒的に強いし速い。

だからこそ土中を水中に変えたイエローテイルさんは、地上戦で人魚族の最速をはじき出すことができる。

水面ならぬ土面から突き出してくる銛の刺突は、こっちの死角から出てくる上に凄まじく速いからよけるので精一杯だ。

掴みでもすれば『究極の担い手』を発動させて相手を無力化できるのに。

向こうもそれがわかっているのだろう、かわされたら即座に土中に潜ってけっして捕まえさせない。

浮かんだと思ったらもう潜っている。

これじゃあどうしようもない!

「なんという技だ。まさか地上で全力を発揮できる人魚が現れるとは……!?」

ゴティア魔王子も目の前で繰り広げられる絶技に全身震えていた。

土中に潜り、泳ぐ人魚……。

……あッ、だから農場大魂拳なのかッ!?

『その通り! 土中にてすくすくと育つダイコンのように! 我は雌伏を重ねて勝利を掴む! たとえ岩で蓋されようとも断ち割って!』

ふざけるなよ!

土中に穴掘りまくっていいことがあると思っているのか!?

穴だらけになったら地盤も弱まって、上にある建物も畑も崩れてしまいかねないんだぞ!

地盤を大事に! 土台をしっかり!

『安心しろ、私の技は大地を傷つけることはない。「王冠の魔女」を母に持つお前なら知っているだろう、人魚族が持つもう一つの最強無敵の武器を』

!?

母さんの?

それはまさか……魔法薬?

『そうだ、私の銛は、先端から貯蔵された魔法薬を常に垂れ流している。土に触れると溶かして液状にする効果を持った魔法薬だ。その効果は永遠ではない、時間が過ぎれば効き目はなくなり、元の土へ戻る、まったく元通りにな』

そんな魔法薬があるのか!?

しらなかった……昨今の研究が進んでいるのか?

『「聖遁の魔女」バトラクスの新作だ! これによって私は環境に優しい地を征く人魚となった! 当たり前だ、エヌ様の腹心である私が自然を傷つけるものか!』

そう言いながらも怒涛の地中攻撃が止まらない!

土に遮断されて、直前まで攻撃の軌道が読めないのも問題だ、こんなの……!?

かわし続けるのも限度がある!?

パシッ!

よし掴んだ!

ついに反撃の大チャンス、ここから『究極の担い手』で……!?

……違う、これは銛に見せかけた直方手裏剣……飛び道具か!?

つまりこれを掴んでも『究極の担い手』は意味をなさない……!?

うわッ!?

飛び道具に気づいた瞬間ジャンプして助かった!

途中から飛び出た銛が僕の身体をかすめていった!

今のはフェイント。

こんな搦め手まで使ってくるなんて!?

『今ので倒せんとはな。お前が能力頼みの努力知らずでないということはよくわかった。だから私もけっして油断しない!』

手強いこの人!

このままじゃジリ貧で押し切られてしまう!

何か策はないのか……!?

僕とヤツとの間を阻む、土という障害。

今までは空気が障害だった。僕は不死山で空気の扱い方を覚えて直接触れられないリルレイさんを倒すことに成功した。

だから今回も、僕らの間を阻む土のポテンシャルを『究極の担い手』で操作すれば勝てる?

でもどうポテンシャルを操作すれば土で敵を倒せる?

『究極の担い手』はけっして万能なんかじゃない。

地面を割って土中のイエローテイルさんを引きずり出すことなんかできないし、地面を熱してイエローテイルさんをあぶり出すこともできない。

別にそんなポテンシャルもないからだ。

普段は父さんが土のポテンシャルを上げて種もないところから芽吹かせてるけれど、さすがにそれはこの戦いでは役立ちそうにない。

……いや、待てよ?

この方法なら……!

「よし!」

どうせ手をこまねいていてもジリ貧だ。

だったら僕の……僕自身の潜在能力に賭ける。

僕は、エルフの森で陶芸を学び、その元となる土との触れ合い方を学んだ。

そんな僕だからできるはずだ。

土のポテンシャルを極限以上まで引き出すこと。

「行くぞ! うおりゃあああああああああああああああッッ!!」

木が生えた。

僕たちが戦っていたウェーゴアジトの広場に。

見上げるほどの大樹が。

「な、なにが!?」

「いきなり木が……どういうことだ……!?」

突発的な出来事にゴティア魔王子も、まだ戦っていない六聖拳の人たちも驚愕している。

僕もしんどかった。

いくら『究極の担い手』を全開にしても、樹齢数百年クラスの大木を瞬時に成長させるなんて並大抵じゃない。

エルフの森で陶芸を学び、土により親しめたからできた芸当だ。

しかし体力精力は消耗した。

疲れた……!

「し、しかしこんなことをして何になる!? 大木が立とうと土中のイエローテイルには何の影響も……!」

『ぐ、ぐるしい……!』

地中から響く声。

「まさか……、この声はイエローテイル!?」

木が土中に影響を及ぼさない?

そんなわけがない。

それは目に見える範囲でしか物事を理解できていない証だ。

木は根を張るものだ。

土中に。

深く無数に、人が驚くほどの広範囲に、太き根を張る。

土から水と養分を吸い上げるために。

それは強固で、洪水や土砂崩れを防ぐほどだという。

そんな木の根が瞬間的に、縦横無尽に土中を走ったことになる。

イエローテイルさんが潜む土中に。

『ぐお……助けて……動けない……!』

やはり予想通り……いや狙い通りにイエローテイルさんは根に絡めとられて動けなくなっていたか。

いわば土中の網漁。

イエローテイルさんは木の根という網に絡み囚われた哀れな魚だ。

さあ、降参宣言してもらおうか?

今はまだ魔法薬による効果で、土が液状化してるんだろう?

でも時間が経てば薬は効果切れ、土は元に戻る。

そうなれば本格的な生き埋めだぞ!

『わかった……! 私の負けだ、だから助けて……!?』

いいだろう、では彼を土中から……。

……どうやって引き出せばいい?

しまった!

攻略することにばかり意識が向いて、倒したあとどうするか考えていなかったッ!

うわーヤバいどうしよう!?

土は掘れても、根を掻き分けるのは滅茶苦茶面倒だし手間がかかるぞ!

モタモタしていると生き埋め死してしまうぅうううううッ!!

* * *

何とかなった。

ゴティア王子と、ウェーゴ側の人々が協力し、根を切り分けて救出に成功。

木には悪いことをしたが、元々『究極の担い手』で無理やり伸ばした木なので。

でもウェーゴのメンバーさんたちから『こりゃまた立派な木だなぁー!』『いい材木になるべぇーッ!』と喜ばれていた。

木は、スタッフが美味しく建材にしました。

ともかく戦いには勝った。

農場六聖拳、三人目撃破だ。

残るは二人。

一人は欠席。

「ぬぅうううう、どいつもこいつも情けないわね……!」

と進み出るのは、今度は女性?

「こうなれば私がすべてを終わらせるしかないようね。この農場六聖拳が一人、

農場 伽蔑(キャベツ) 拳のドミノクラウンが!」