軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1353 ジュニアの冒険:ダイコン埋伏の計

僕ジュニア。

現在、秘密組織ウェーゴの幹部、農場六聖拳との抗争の真っただ中にあり。

複雑。

幹部名がややこしいんだよ。

ウェーゴ四天王とかに収まらなかったもんか? しかし四天王だと魔王軍と被るものなあ。

上手くいかないものだ。

とにかくそのウェーゴ幹部、農場六聖拳が一人のザーガくんと対峙中。

しかしそこにゴティア魔王子が割って入って、またややこしいことになっている。

「たしかにオレは、最初からウェーゴに参加していたわけではない。ごく真面目な、面白みのない、そして退屈なただの魔王軍仕官だった」

それがどうして、秘密組織とのスリリングな二重生活へと入っていくのか。

ザーガくんは語り出す。

「そもそもオレは、元から入りたくて魔王軍に入ったんじゃない。親から強烈に勧められたからだ。ほぼ命令と変わりない口調でな」

「……お前の家は、四天王の一角、貪聖剣を継承する家系、その分家筋にあたるとか。調査書に乗っていたな」

「そうだ、分家といってもそこまで本家に近いわけでもない。それこそ幹から分かれた枝葉程度にもならないその他大勢の家系だ。でもオレの両親は、カスぐらいの繋がりでも四天王家系に連なっていることを鼻にかけていつも威張り散らしていた」

家系も古くなると、そういう澱というか淀みが積もっていくものなのか。

ザーガさんの愚痴めいた語りは続く。

「そんな両親は、何故かオレへの期待が過剰だった。『お前は希望の星だ』『必ず四天王になれ』とな。オレの将来は、両親によってガチガチに決められ、魔王軍へ入るのも、まるで既定路線のようだった。オレ自身の意思はまったく関係なかった」

「それは……!?」

言葉に詰まるゴティア王子。

「とは言ってもオレは親に従っていた。他にやりたいことでもあれば真っ向から親に噛みついて反発したんだろうが、そうでもなかったからただ言われるままに、親の敷いたレールを、何も考えずに進み続けてきた。自分の人生だというのにな……」

フッと自嘲的な笑みを漏らすザーガくん。

「自分のものなのに、どこか他人のものののようだった、それまでのオレの人生はな。しかしそれが変わった、エヌ様の出会いによって!!」

出てきたエヌ様。

ウェーゴの頭目らしい御方。

「あの方はこう言われた……!」

――『人の心を大事にしない世界を作って何になるんだ!?』

――『その傲慢は人を家畜にすることだ! 人間を道具にして! それは人間が人間に一番やってはいけないことなんだ!』

――『そんな大人! オレが修正してやる!』

「その言葉の熱さに、冷めきっていたオレの心が震えた。オレはこの人と一緒に、新しい世界を切り拓いていきたいと思った。だからウェーゴに入ったんだ! 本当ならその時魔王軍からも脱退してよかったんだがな、今の立場がエヌ様のお役に立てるかもと思って保留しておいたのさ」

「わかる! わかるぞザーガ!」

後ろにいる、他の六聖拳も同調したように唸り上げる。

「私も言われたぞ!『戦場ではしゃぐから、はしゃいじゃうから、そういう風になっちゃうんでしょ!』と!」

「そうだ、我々皆エヌ様の言葉に感銘を受けた! そして世界が明るく広がったんだ!」

「エヌ様の作り出す新たな世界を、お手伝いすることこそ我らの至福!!」

彼らの、エヌ様とやらへの絶大な信頼こそ恐るべし。

共鳴反応が慌ただしくて……怖い。

「ここまでヒトを虜にするエヌ様とやらのカリスマ性……統治者としては恐ろしい限りだ」

ゴティア魔王子の恐れる気持ちもわかるというもの。

「ならば聞こう、そのエヌ様とやらが作り出す新しい世界とはなんだ? それは、今ある魔国を滅ぼして作り出されるものなのか?」

現支配者としてはそこが重要なところだよね。

「魔国など眼中にはない。エヌ様が作り出そうとしている世界は、我々のように日々を空しく生きている者たちが、全力で生きることのできる世界だ!」

「それは、我が魔国では不可能なのか!? 魔王軍としてはできないのか!?」

ゴティア魔王子の呼びかけにザーガくん、熟考し……。

「う~~ん、ちょっと……?」

「ガガーン!?」

忌憚ない回答に、重傷を受けるゴティア王子だった。

「エヌ様という希望を知った今、エヌ様以外に忠誠を捧げることはできない。オレが魔王軍で働いていたのはあくまで給料分だけだ」

「ちゃんとボーナスまで出していたのに!」

忠誠心勝負で知らぬ間に負けていたゴティア魔王子はプライドを傷つけられた。

「さあ、我が心境はわかってくれたかな? わかったところでジュニア王子、その命もらい受ける!」

わかったはいいけど、そこで何で僕の打倒に繋がるのかがわからない。

キミらの野望達成に僕が邪魔なのか?

僕が正義の味方だからか?

……僕、正義の味方だったのか?

「一度勝ったからと言って、いい気になるなよ! 我ら農場聖拳にはそれぞれ、お前の力を破る秘策が備わっているのだからな!」

そうだった!

ザーガくんは魔王軍での戦いで、空気の層を作る戦法によって僕の認識を狂わせ『究極の担い手』を封じてきた。

アレは非常に巧妙で、僕もけっこう追い詰められた。

謎を解くことで何とか破ることができたけれど、まさかザーガくんは、他にも『究極の担い手』の攻略法を?

「ふっふっふ……、お前を散々に苦しめた空気層を、今再び食らえ!」

「前と一緒やないかーいッ!!」

「そうだったーッ!?」

一撃のもとに吹っ飛ばされるザーガくん。

謎は、解かれれば力を失うものなんだよ!!

「ああッ、ザーガがやられたッ!?」

「農場六聖拳が早くも二人ッ!?……さすがゴティア王子、侮れない……!?」

「エヌ様が危険因子と認められるだけある……!?」

だからなんで僕のことを危険視しているんだエヌ様は?

本人連れてきて話をさせろ!

「しかし! お前ごときがエヌ様とお目通りなどできん! この農場六聖拳が一人農場 大魂(ダイコン) 拳のイエローテイルがお前を倒す!」

次に現れた農場六聖拳の人は、非常にいいガタイを持ったお兄さんだった。

……あの人、人魚族だな。

陸人化薬で変身していても、人魚の母を持つ僕にはわかる。

いや待て。

ってことはウェーゴには魔族人族だけでなく、人魚族のメンバーまでいるのか!?

三大種族コンプリートではないか!?

「ほう……、一目見て我が正体を見抜いたのはエヌ様以来だな。だからこそ許さんぞ、私とエヌ様の限りない思い出に割り込んでくるとは!!」

ええええええええええええッ!?

それはさすがに八つ当たりでは!?

「我が農場大魂拳の恐ろしさを思い知れ! 陸人化薬解除!!」

ええッ!?

いきなり目の前で薬を解除し、人魚の姿に戻った!?

何を考えているんだ!?

こんな内陸じゃ、人魚になってもビチビチすることしかできないじゃないか!?

「ふっくくくく……、その表情わかるぞ? 私が乱心したとでも思っているんだろうな?」

はい、そうです。

ご乱心! ご乱心んんんんんんんッッ!!

「しかし私はいたって正気! 見せてやろう、陸で100%発揮される人魚族の技と力、それが農場大魂拳だ!!」

人魚族の六聖拳イエローテイルさんは、手にした銛を地表に突き立てる。

それをグルグル高速回転させると、より深く地面をえぐり突き刺さり、どんどん地中へと深く潜っていく。

ついにはその体ごと……!?

全身、地面の中に入ってしまったぁ!?

なんだあれ、まるでドリルか!?

だとしても人体そのまま土中に入ってしまうことなんてある!?

ともかく地下に潜んでしまった次の相手!?

これでどうしろと言うんだ!?

これじゃあ相手が何処かもわからないし、厚い土に阻まれては手出しのしようがないじゃないか!

……はッ?

手出し?

そうか、これが彼の、『究極の担い手』攻略法だ!?

『ふっふっふっふ! 気づいたか!?』

どこからともなく声が響く。

いや、どこからかはわかる。地中からだ。

地を鳴らして響く声。

あのイエローテイルさんが、地面越しに喋っている!?

『そう、お前の「究極の担い手」は相手に触れなければ効果がない。そこまではリルレイやザーガと同じ発想だが、私はお前との間により大きな断絶を用意した! 厚い土という、絶対的な防壁をな!!』

た、たしかに土に阻まれては相手に触れることもできない。

相手が土中にいる限り、こっちからは手出しできないじゃないか。

『農場神拳破れたり!「究極の担い手」破れたり! 私はこのために功夫を重ね、地中を泳ぐ人魚となったのだ!!』