軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1195 オオカミvsコウモリ(次世代)

エライものを見た俺です。

これは酷い。

テュポンが作った、マジモードの侵入者排斥用ダンジョン。

子どもが作った絶対クリアさせる気のないマ○オメーカーのステージみたいだった。

「ああ、それでも全然優しいだろ? 何せ即死効果くらっても死なずに済んでるんだからよ」

それは俺も気になっていた。

テュポンのダンジョン中には、モンスターの攻撃だったり即死と謳われたトラップだったりで、簡単に人の命を奪いそうだったが、現状死者は一人も出ていない。

ただダンジョンから叩き出されるだけだ。

恐らくテュポンの配慮で安全装置のようなものが働いたのだろう。

そうでなくばズカズカ踏み込んできた冒険者たち今頃一人も生きていなかっただろう。

これに懲りたらイキり倒したりしないでほしいものだ。

「ぐわっははははははは! 思い知ったかニンゲンども、このプロトガイザードラゴンたるテュポン様のダンジョンクリエイトを!」

邪悪な顔で高笑いするテュポン。

こうしてみるとドラゴンってやっぱり存在自体が災厄だな。

「この土地で頑張っている開拓者どもをバカにして、あまつさえ邪魔してくるなど不届き千番! だからおれ様が罰してやった! これに懲りたら二度とこの土地に踏み入るんじゃねー!」

と思ったら守護神みたいなことを言い出す。

邪悪なのか正義なのかよくわからん。

「クソッ……まだです……!」

そう言って冒険者集団の中から一人踏み出す。

その子は。他のいかつい冒険者とは異なり異彩を放っていて、見た目も麗しい女の子だった。

しかも耳の形が普通とはことなり、大きく伸びて頭から飛び出しているような様相。

あれは獣人?

ウサギ獣人とかか?

「いいえ、彼女はコウモリの獣人です」

と俺の脇から指摘の声。

「彼女の名はムルシェラ。S級冒険者ゴールデンバットの直弟子で、彼女自身も新たにS級冒険者に選ばれるほどの実力者です」

「そう、お前と違ってな」

ムルシェラなる獣人の女性と、我が陣営にいた若者との視線がバチバチぶつかる。

その若者の名はコーリーくん。

ここ開拓地に赴いてきた開拓者(人族側)のリーダー役を務めて、日々作業に精を出しているホープだ。

オオカミ獣人獣人であるが、その因子は薄く頭部の両辺から垂れる耳が犬っぽいだけ。

しかし実力は本物で、先日厳しい試験結果の下に新しいS級冒険者に抜擢されたほどだ。

この開拓地にやってきたのも人族側の開拓団の代表……リーダー的役割を背負ってのことだ。

実力者であることは明白。

「お前のような元・S級冒険者ではない。ボクはあれからギルドから認可を受けて正式なS級冒険者となった。お前と違ってな!」

「……オレも正式なS級冒険者だけれど?」

「どこがだ!? このような辺境に飛ばされてまともな冒険者活動もしていない! おかげでお前はS級をはく奪されて、何らかの罰則でここへ送られたと、今や冒険者業界でもっぱらの噂だ!」

「はく奪なんかされてないけれど……!?」

コーリーくんは若いけど実力たしかで成長性も充分にある。

彼をこちらへよこしてくれたのはギルドマスターであるシルバーウルフさんの有難い配慮と思っていたのだが……!

コーリーくん自身が本土からそういう目で見られていたとは。

たしかにこんな辺境の地に出向させられたら左遷意外とは思わないよなあ。

あらぬ噂の的になり、いつの間にかS級はく奪などというデマまで横行したと?

「とにかくオレは、今でも紛れもないS級冒険者だ。ウソを根拠に相手を貶めるのは誹謗中傷だぞ」

「だったら、さっさと中央に戻って自分の存在を知らしめるんだな! このままではお前はどんどん忘れ去られて、本当にS級の称号をはく奪されかねないぞ!」

この娘、こんな遠くまで何しに来たんだと思ったが、やけにコーリーくんに絡んでくる?

一体何が目的なのやら?

「そんなことを言うために来たのか? キミだってS級冒険者になって実績作りが大変な時期だろうに……」

「そ、そのためにも、お前を呼び戻す必要があると思ったんだ! 成果を出すために競い合うライバルは必要不可欠だからな!」

……こ、このノリ……。

まさか……?

「ボクはただ、尊敬するゴールデンバット様のやり方にあやかろうと思っているだけだ! あの御方はシルバーウルフをライバルとして競争心を燃やし、結果数多くの戦果を勝ち取ってS級冒険者の頂点に輝いた! 大きな成長に、大きな障害は必須! だからこそ私も同じように強力なライバルと争い、自身の成長を高めようという深遠な狙いがあってだな……!」

「はあ……」

「他の現役S級冒険者では世代も実力も違うし、ライバルとしては息が合わない! その点お前とは歳も近ければS級冒険者になったタイミングも同じ! それに前世代で宿命のライバルとして多くの逸話を残したゴールデンバット様とシルバーウルフの後継者となれば、なおさらボクたちのライバル関係性は濃厚! ボクがこれからもS級冒険者として飛躍するためには、お前という障害が必要なんだ!!」

これは……ツンデレ!?

間違いない!

今の名がセリフのどこに『勘違いしないでよね!』を挿入しても意味が通る!!

新たなS級冒険者の中にこんな逸材が隠れていたとは……!

冒険者業界の未来は明るいぞ!!

「……いや、そんなこと言われてもオレ、戻るつもりないし……!」

「どうしてだ!? お前だって嫌々この土地に来たんだろう? 何もない辺境で、成果を上げる機会もなく、むなしく時間を過ごすつもりなのか!?」

ムルシェラだっけ? 女の子冒険者の必死に説得にも動じず、淡々と自説を述べるコーリーくん。

「そもそもオレは嫌々ここに来たわけじゃない。シルバーウルフさんから要請されたんだ。この土地にはオレをより高めてくれるものがあるってね」

「そんなバカな! こんな辺境の地に!」

「実際赴任してみて、その言葉は本当だとわかったよ。この土地での生活は、毎日オレに多大な成長をもたらしてくれる」

コーリーくんがいてくれて本当に助かったと思えることは、類まれなるリーダーシップだ。

彼はS級冒険者として若いながらも人々の注目を集め、多くの人々に呼びかけ、意思をまとめて先頭に立って走る。

その指導力、統率力は目を見張るものであって、若いのに凄いの一言。

オオカミは群れを作る動物であるせいか、オオカミ獣人である彼もそれらの力がより優れていると言えた。

ギルドマスターまで上り詰めたシルバーウルフさんを彷彿とさせる活躍だった。

「そ、そんなもの冒険者には何の関係もない! 冒険者は所詮アウトロー、一個人の実力で渡り歩いていくものだ!」

「それも事実だ。でもオレのこの土地での成長は、指導力や統率力だけじゃない」

「なんだと?」

「そのために、一つ実践してみようじゃないか」

コーリーくんはそう言って足を進める。

ダンジョンの入口へ向かって。

「おッ、おい待てイヌミミニンゲン! ダンジョンはまだモードチェンジしてないから激ムズ侵入者排除仕様のまま……!」

ここまでのやり取りですっかり空気になってしまっていたテュポンが慌てて止める。

「大丈夫です、このままオレにも挑戦させてください。本国の現役冒険者たちは手も足も出なかった、テュポン様本気のダンジョンを……」

コーリーくんは躊躇もなくダンジョンの中に入った。

ダンジョン内部は、姿の見えない音もたてしないモンスターがはびこっていて、それら見えざる驚異の前に冒険者たちはなすすべなく全滅してしまった。

「全滅じゃないですよ」

というのはムルシェラさん。

「おう、このコーモリ女はクリアしていたぞ、モンスターの位置を正確に把握してな」

とテュポンもダンジョン主として、ムルシェラさんのステージ突破を証明してくれた。

「ボクたちコウモリのジ獣人は、みずからが発した超音波が反射して返ってくるのを聞き取り、障害物の有無を知ることができます。見えないモンスターの存在もそうして察知して、回避することができました」

俺に対しては敬語になるんだな……。

「うーむ、消せる音はあくまでモンスター自身が発した音に限定されてたか。今後の課題だな……」

さらにテュポンがより鬼畜難易度なダンジョンを実現させようと研究に余念がなかった。

「ああ、でもこの女の快進撃はそこまでで、次の床も壁も天井も全部即時トラップ付き、漂う空気も吸ったら即死亡のオールトラップハウスであっさりリタイヤしたがな」

「なッ! それはしょうがないじゃないですか! あんなどこもかしこもトラップだらけの空間で何ができると!?」

ムルシェラさんも突破できなかったテュポンの本気ダンジョンは、やはり無理ゲーの権化なのだろうか。

そんな鬼畜ヘルモードに挑むコーリーくんの活躍は?