作品タイトル不明
1064 聖者発見
はい、今年もオークボ城無事終了しましたー。
撤収撤収!
でもまだ気を抜かないでね帰るまでがオークボ城ですよー。
お帰りの観客さんたちが怪我などしないよう、帰宅誘導にも細心の注意を払ってねー。
資材の回収もお願いしますよー。
土地を貸してくださっておる領主ダルキッシュさんの迷惑にならないように。
来た時よりも美しくを順守してねー。
ヴィールにレタスレート、今年の出店の売り上げはどうなった?
今年もレタスレートの勝ち!?
おめでとう!!
ヴィールのゴンこつラーメンも年々クオリティは上がっているはずなのに惜敗が続くな。
それだけレタスレートの方も日々弛まず豆の品質向上&版図拡大に全力を注いでいるということだ。
切磋琢磨が著しいことよ。
さて、俺自身も速やかに撤収しようかな。
夜は家族サービスに徹しなければ。
ジュニアやノリトをお風呂に入れてあげて、プラティにも楽をさせてやらないとな。
「……待ちなさい!!」
と思って帰り支度していたらなんか呼び止められた。
ん? 誰かな?
と思い振り返ると、そこには興味知ったばかりの顔が……?
「キミは勇者モモコさん? 何用ですか?」
キミにはオークボ城全制覇の賞品も贈呈し、全プログラムは完了したはずだが?
この上さらに何かご不満があるとでも?
「不満は特にないわ……! イベントも楽しかったし賞品もとってもいいものだった! レタスレート王女様にこき使われたのはムカついたけど思った以上にバイト代支払ってくれたしトータル的には満足だわ!」
それはよかった。
レタスレートも随分人の使い方を勉強したようだな。
最大限まで働かせつつ不満を出さないように調節できる。売り上げ競争でヴィールに先んじることができたのもこの辺りの人使いの上手さだろう。
しかしさすれば、なおさらどうして呼び止められたんだい俺は?
もう用は何もないだろう?
キミも早々にはけて打ち上げにでも興じてはどうかな?
レタスレートも大売り上げを叩き出したんだし、お祝いに派手に飲み食いさせてくれるだろう?
「もちろん! あの王女様、王都の一級店に予約入れてるのよ! 打ち上げ会場にね! 私もあんなお店で飲み食いできるなんて夢みたいだから、お店の在庫がなくなるほど平らげるつもりよ!!」
あんまりやりすぎると次から呼ばれなくなるぞ……!
しかしレタスレートのヤツ、そんなところで打ち上げできるぐらいに儲けてたんだな?
豆の売り上げで?
アイツもはや王女様だった頃より金持ってるんじゃないのか?
「でも、その前にどうしても確かめておきたいことがあるの! 私が勇者になって、果たさねばならないとずっと心に秘めてきたことを!!」
何を秘めてきたというんだね?
勇者としてなら、果たすべき最大の使命は魔王を倒すこと。
人間国が滅びて勇者の務めを失った今日、魔王さんと手合わせしたことで、心のけじめはついたんじゃないの?
「もちろん魔王との戦いは私の中で一つの区切りになったわ! 戦ってくれてありがとうと思うぐらいよ! でも私の中にはもう一つ、勇者として果たさねばならない役割があるのよ!!」
その役割とは?
そして何故それを俺に言う?
「……聖者の農場を見つけ出すことよ!!」
……。
へぇー。
聖者の農場か、どこにあるんだろうか? どうすれば行けるの?
誰か教えてほしい。
「かつてまだ王制の人間国があった頃、私は王様から命令を受けたの。『聖者を探し出せ』と。ドラゴンを従える聖者が味方につけば、戦争にもすぐさま勝てると思ってね」
へー。
そんなこと考えてたんだ人間国の王様って。
って当時の話ね。
……いや。
現実逃避はもうよそうか。
「聖者を探し求める途中に人間国は滅びて、私も自分が生きていくのに精一杯になって捜索どころじゃなくなったけれど。それでもいつも心には聖者を求める情熱があったわ。世の噂では、聖者が住む聖者の農場という場所があると聞いて、私の捜索目標はそちらに変わった!」
なるほど……。
それは、ご苦労様です。
そんな風に農場を探している人がいるなんて思いもしませんでした。
「そんな私だからこそ気づけたことがあるのよ! このオークボ城の端々に、聖者の影が見え隠れするとね!」
何ですってーッ!?
たとえば?
「今日私が仕合った世界の王たちよ! まず最初に戦った人魚王さんは、あの人の使う盾が聖者の作ったものだと言っていた! さらにその次に戦った人間大統領の剣も聖者のお手製だと言うじゃない!!」
ああ、はい。
「さらには魔王が食べて元気百倍になっていた納豆! あれも聖者の農場から産地直送だと言っていたわ! それらはつまり、実質この世界を支配する三人の王様と、聖者は何らかの繋がりがあるということ! しかも直接的な!」
なるほど。
まるで探偵のような理屈の詰め方ですな。
登場人物の何気ない一言を抜け目なく拾って、点を線で結び全体像を映し出す。
○ームズもかくやという推理力の展開で真実をあぶりだしてくるモモコさん。
もちろんこのオークボ城は聖者との繋がりがあるどころの話じゃなく、聖者の農場がチームを組んで主催している肝いり行事。
その事実は別に隠し立てしているわけではなく、だからこそ魔王さんやアロワナさんのように普通に口を滑らせる人もいる。
オークボ城ももう何年も開催していて、その辺の裏事情を知る人も多く、『オークボ城を主催しているのは聖者だ』ともっぱらの噂となっている。
俺はその噂を聞くた修正しているがな。
だってオークボ城を始めたのはオークたちで、今でも運営がオークたちが主体になって行っているから。
しかし、そうはいってもやはり聖者のネームバリューは高いようで、どれだけ気を付けても聖者の名前が先行してしまう。
出店コーナーには『聖者まんじゅう』まで売ってるぐらいだ。
誰が主体になって製造したこれ?
というわけで、別に鋭い推理力を展開させるまでもなくオークボ城に聖者が関わっていることは容易に想像できることなのだが……。
「だからわかったわ! このオークボ城に聖者が関わっていると! いいえ、それどころかイベントに聖者が出場していることもあり得る!!」
うッ。
そこに気づくとは、さすが名探偵モモコさん。
まさか……。
こんな話を俺に伝えに来たのも、本当に聖者が誰かすでにわかっている上で、あえてそのことを指摘せず回り持った言い方で……。
……犯人を追い詰めていくタイプの探偵!?
「そう、私にはわかっているのよ。私が追い求めてきた農場の聖者は……!」
ドドドドドドドドドド……!
会場のボルテージが否が応にも上がっていく?
「……そう、あの子ね!?」
と言ってモモコさんが指さしたのはウチのジュニアだった。
ジュニアは現状、母プラティに連れられ弟たちと帰りの準備を進めていた。
「あの子の競技での活躍ぶりは見させてもらったわ! 小鳥たちと戯れ、災厄が自分たちの方から逸れてゆき、空中を浮遊することもできる! まさしくそれは聖者の所業!!」
はい、そうかもしれませんが……!?
モモコさん、どうやらキッズの部のジュニアの活躍? を見て彼が聖者だと確信を持ったようだ。
たしかに、まあ……俺などよりもジュニアの方がずっと聖者っぽく見えますがな。
我が子のことだけに、彼が褒められると照れますぜ。
いやいやいやいや……。
でもでもジュニアは見ての通り、まだ年齢一桁にも満たない小児ですぜ?
そんな子どもが、十年ぐらい前からドラゴンを操って戦争を止めるとかできないと思うんですが?
「大丈夫よ! 聖者というからには見た目の若さだって自由自在! 子どものように見えて実は年齢何百歳だって設定もあり得るじゃない!?」
設定言うな!
……たしかにそういうショタ爺キャラは古今色んな作品に登場するけれどもさ!
さすがにウチのジュニアはそんなショタ爺ではない……よな?
見た目よりもずっと老けた存在とかそういうことないよな!?
不安になってきた……!
くっそう、この唐変木な推理のせいで我が子が信じられなくなってくてるじゃねえか!?
こうなったら彼女には意地でも真実を教えたくない!