作品タイトル不明
1063 閉幕と表彰
俺です。
今年のオークボ城も無事閉幕いたしました。
今回は空前ベビーラッシュから初めての催しということで、パパさんたちによる我が子誕生の喜び、そして大役を果たした妻への感謝を表すために、より白熱した試合内容だったと思う。
ん?
奥さんたちからの主張?
感謝を表すなら育児とか家事をもっと協力してほしい?
そう言ってくれるなよ!
そっちも日頃からしてるじゃん!!
男はそういうのカッコつけたくなるんだよ!!
……ということで何が言いたいかというと、例年以上に盛り上がったなあオークボ城、ということだ。
しかも、最終イベントとして行われたキッズの部での盛り上がりが中でも凄まじかった。
その理由としては、まず魔王子であるゴティアくんの初出場。
さすがに次代の魔族支配者が公の舞台に立つとなったら注目を集める。
並びにウチのジュニアがいい感じにゴティアくんと張り合って、よりエキサイティングにしてくれたことも盛り上がりの要因だった。
クライマックスでは、ミスして奈落の底に落ちかけたゴティアくんをジュニアが手を伸ばして救出し、友情で結ばれるシーンも感動的であった。
最終的にジュニアは、順序を履んだ地点を渡っていかなければならないルールのところを空中浮遊で進んだとのことで失格。
いつぞやの年にゴールデンバットのヤツめがコウモリ変身して空飛んでクリアしようとしたことから厳しい罰則が追加されたのだ。
お陰でジュニアは、長年保持し続けてきた連年クリア記録を途絶えさせることになった。
しかしジュニアに悔いはなかった。
友人を助けるという、記録よりも遥かに大事なことを成し遂げることができたんだから。
ゴティアくんはジュニアの助けを得てめでたく、初出場にしてオークボ城初制覇を成し遂げることができた。
そしてそのクリアは、友人の助けあってこそだとヒーローインタビューで語っておられた。
彼らがこの催しで得られたものはきっと、これからの人生にもっとも価値あるものになるだろう。
それこそが……友情!!
はい。
ただそうしてジュニアとゴティアくんにばかり注目が集まることで午前中、あんなにも懸命に走ったパパさんたちの頑張りはかすんでしまったがな。
ウチのジュニアなんて狡いんだぞ!?
途中失格になったのに何故か最後のインタビューに参加して、『今日の競技を生まれたばかりの弟たちに捧げる』とか宣言しちゃったんだから!
『なんて立派なお兄ちゃんたちなんだろう』と客席にいた全員が感涙に咽び泣くほどだったんだから。
午前はお父さんたちがあんなに懸命に走り回ったのに。同じ目的で。
なのにお父さんの頑張りには目もむけられず、幼い子どもらにばかり注目が集まるのも気持ちはわかるというか……!
ウチの子を……ウチの子にもっと注目してあげて!
自慢の息子をもっと褒めてやってー!!
最後は親バカに落ち着いた。
それと今回のオークボ城。注目を集めたのはそれだけではない。
もう一つの目玉と言えばやはり勇者モモコの暴走であろう。
その日飛び入り参加の午後の部で大暴れしていた美女。
見た目も麗しいだけあって、そんな女性が大活躍するのは観客の目を大きく引いた。
ただ途中から趣旨が変わってきて連続セメントマッチになってしまったのには閉口してしまったが。
さすがに従来の展開を無視したんだから失格にすべきではないのか、という意見は出たが、アロワナさんリテセウスくん魔王さんと運営側が受けて立ってしまったことも問題だったため、運営側の落ち度も相殺して失格なしということになった。
さらには勇者モモコがしっかりオークボ城を制覇したのか? というのも議論になった。
何故かって、魔王さんを打倒したことで一応彼女は今年のオークボ城に設定された五関門をすべてクリアしたモモコさん。
通常だとそれによってオークボ城を制覇した扱いになるのだが、そこで問題が生じた。
なんとレタスレートが乱入、ボキボキにへし折ってその場から連れ去ってしまったのだ。
これはどういう判定になるのだろうか?
天守閣にまで辿りつくことがとりあえずのオークボ城の趣旨であろう。
モモコさんは最後の関門をクリアした。
しかしながら天守閣に到達することなくレタスレートに連れていかれた。
この状況を例えて言うならクッ○を倒しながらピー○姫を救出せずに帰ってしまったスーパー○リオみたいなものだ。
それでクリアしたものと認められるのか否か。
この件を鑑みて、モモコさんをクリア扱いすべきか失格とみなすか。
俺とオークボとゾス・サイラと先生とクロノス神とで喧々諤々の議論が行われたが結論は出ない。
判断は暗礁に乗り上げたかという時に……。
「いいじゃない、クリアしたことにさせてあげれば」
と口を挟んだのは妻プラティであった。
生まれたばかりの三男ショウタロウを抱きあやしながら。
「今年のオークボ城は、ショウタロウたちの生誕を祝うためのものなんでしょう。そんなめでたい催しにケチをつけたくないわ。ドーンと景気よくクリアさせてあげなさいよ」
という鶴の一声でモモコさんのオークボ城全制覇が認められた。
今年は本当にママさんたちのために催された大会だ。
おかげさまでモモコさんは優勝者の一人として表彰台に上がることとなった。
* * *
「天守閣到達おめでとうございます! 今の御気分はいかがでしょう?」
「別に変わりないわ! だってオークボ城なんてクリアできて当然なんですからね!!」
インタビューを受けてそんな高飛車な答えが返ってくる。
どうもこういうところ挑発的なところが端々垣間見えるのだった。
そんなモモコさんに観客席からの視線が集中。
そんな状況なら慣れない人だと緊張で喋ることもできないだろうに、少しも物怖じしない慣れた様子でインタビューを受けている。
「でも、100%実力で優勝可能ではあったけれども、実際優勝できたのは観客の皆さんのお陰よ! 応援ありがとう! 声援ありがとう!」
しかし、節々で思い出したようにファンサービス。
この危うげな世渡りの上手さはどこで学んだものなんだろうか?
まあいい、こちらは運営としてつつがなく進行していこう。
では次に、オークボ城制覇を成し遂げた出場者様に、戦利品をプレゼント!
これはイベント発足当初からの恒例で、商品があるからこそ血眼になって競技に挑戦するっていう一面もある。
オークボ城の成績優秀者へ贈られる賞品は、農場で生産された一級クオリティの品物ばかり。
その中からモモコさんにはこちらをプレゼントしたいと思います。
シルク製の女性下着、一年分!!
「セクハラ!」
いいえ違う! 違うんです!!
たしかに絵面だけ見たら、大衆の監視下で一抱えほどのパンツやブラジャーを女性にプレゼントするって、セクハラでしかない。
キショくて震える光景だ。
しかしながら、これがセクハラでは断じてない事情があるということもご理解いただきたい。
何かというと、ここオークボ城でもっとも人気の賞品が女性用下着だからだ!!
その理由は肌触りがいいから!
ここ異世界では、織物の技術力がまだまだ進歩しておらず、布といっても麻のような繊維粗目のものが主流といった状態。
当然、女性や赤ちゃんといった肌の柔らかい人には随分不快だろうし、怪我や病気にも繋がりかねない。
それに対して我が農場ではかなり昔からシルクの生産に成功し、それらを素材にした下着類もたくさん製造されてきた。
オークボ城の初期から、その下着を賞品の一つとして提示してきたが現在に至るまで常に不動の一番人気。
最近は魔族の商会を通して多く流通しているはずなんだけど、それでもなお人気は衰えない。
なので今年も目玉賞品として、女性用下着を大量に用意させていただきました!!
旦那さんが奮闘してゲットした下着をプレゼントしたら奥さんも喜ぶだろうしね!
という字面だけ見せても変態味が増すのはいかがなものなのでしょうか!?
そして女性自身にも大変喜んでいただけると思うこの戦利品!!
いかがでしょうか!?
「やったぁああああああッッ!! これ魔国経由じゃないとは言ってこない高級品じゃない!! これで毎日を快適に過ごせるわぁああああああ!!」
よかった、気に入っていただけたようで!
こうしてオークボ城の締めくくり、景品授与もつつがなく終了した。