軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1062 結ばれる手

魔王子ゴティア、第四関門に立つ。

いや、ボクのことだけど。

第一第二関門もアレな演出ではあったが、第三関門もまたさらにアレだった。

オークボ城第三関門と言えば人工生命ホムンクルスが立ちはだかる関門だったが、キッズ部門ではそのホムンクルスがよだれ掛けをして、ガラガラを手に迫ってくるんだ。

アレを目にした時は割と恐怖だった。

子ども向けにファンシーでまとめると却ってわけがわからなくなるという好例だったのかもしれない。

その恐怖空間も何とか乗り越えてやってきた第四関門。

ここまで来ても脱落者はほとんどいなかった。

それはそうだ。

ここまでのアスレチック、挑戦者を落とす意図など微塵も窺えなかった。

それで脱落者を出せ、というのもむしろ無茶な相談だ。

もちろんボクがライヴァル認定した聖者の息子ジュニアくんも、順調に第四関門にコマを進めていた。

「ジュニアさん! さっきホムンクルスの中から幸運の赤ホムンクルスを見つけたってマジっすか!?」

「ジュニアさんパネェっす!!」

相変わらず取り巻きらしい子らから持てはやされている。

何なんだ。

常連参加者たちだけでグループ作っちゃってさ!

新参のボクらが肩身狭いって考えないの!?

なんだか思ったような展開にならずにイライラしてきた!

この次の第四関門は、もっとマシになるんだろうな!?

「よく来たのんー、哀れなる子羊よー」

ええ!?

その声は!?

聞き覚えのある声にボクは思わず戦慄した。

やはり、第四関門で待ち受けている人影には思いきり見覚えがあった。

「マリネ!? 何故お前が!?」

我が異母妹。

父上と第二魔王妃グラシャラとの間に生まれた魔王女マリネではないか!?

「お兄さまならここまで辿りつけると信じていましたのんー」

「うっさい白々しい!」

王女ながらも高い才覚を持ち合わせ、魔王となれる望みも充分あると言われる異母妹。

ボクはもうお前を無害な王女とは見なしていない! 魔王の座を争う競争相手だ!!

そんなお前と、こんなところでカチ合うなんて!

一体何のつもりだ!?

「この関門は、ウチの考えたアトラクションなんですのんー。聖者さんに『やってみないか?』と言われて、期待に応えたいと思ったんですのんー」

な、なんだってー!?

マリネのヤツ、聖者からそんなにも信頼を寄せられているのか!?

ボクの知らない間に?

やっぱりボク大きく溝空けられてない?

「そんなウチが考案したアトラクションがこれですのんー」

と示したところには、何の変哲もない床が。

碁盤目状に正方形が敷き詰められている。

それくらいしか特徴が見て取れない。

「なんだー? これじゃあここまでのアトラクションの方が全然派手だぜー」

そう言ってキッズ出場者の一人が、無造作に碁盤目状の床を踏む。

……待て!

迂闊に踏み出してはダメだ!

ボクが一目置く異母妹が設計したアトラクション、ヤバくないわけがないんだ!

「え? うわはぁあああああああああああッッ!?」

ほら言わんこっちゃない!

迂闊に踏み出したキッズ出場者の一人が床を履んだ途端、碁盤目状の一つがふっと消え、その下に奈落の穴が広がった。

キッズ出場者は咄嗟の反応もできずに奈落の穴に吸い込まれて落下し、消えていった。

「うわああああああッッ!? ここに来て犠牲者が!?」

「墜落した出場者は通例通りに転移魔法で安全スペースに運ばれてますん。問題ないのんー」

なるほどわかったぞ、このアトラクションの意図が。

この碁盤目状の床、正しく踏むべき部分と不正解の部分があると見た。

間違った碁盤目状の床を履むと、あのように落とし穴になって失格となってしまう。

どの床を履んで、どの床を履んではいけないか。

きっとヒントがあるはずだ。

ふははははははどうだ異母妹よ!

お前が用意した難関は、この長子が見事分析したぞ!!

あとは、床を見分けるヒントさえわかれば……!

「そんではヒントを発表しますのんー」

えッ!? 教えてくれるの!?

てっきりそこまでこっちで推理しないとと思っていたんですが!?

「この床の正解不正解を見分けるヒントは……フィボナッチ数列ですのんー」

ひぇッ!?

ひぼな……? 何それ!?

「兄者、習ってないんですのんー? ウチ、最近習ったから使ってみたくなったのんー。覚えたてのものを使いたがる年頃なんなー」

何だとッ!?

兄であるボクすら学んでいない内容を、妹が修めているというのか!?

極めて重大な情報を得た気がするが!?

いや今はこのアトラクションをクリアすることに集中しなければ……!?

よく見ると床の碁盤目には、ランダムに数字が描かれている。

恐らくはマリネの言うフィボナッチ数列? なるものから正しい数字を割り出して、その床を履んでいけば、奈落に落ちることなくゴールへたどり着けるという仕組みなのだろう。

しかしそのフィボナッチ数列とかをまったく習っていないボクとしては、どれがどうフィボナッチなのかまったく判別つかない!

「制限時間あるのんー、これから三分ごとに後ろの床が抜けていくのんー」

なにー!?

クソッ、追いつめられて冷静な判断がつかなくなる……!

ちくしょー! こうなったらヤマカンで突入してやるー!!

ボクは魔王子だ!

運命に守られし王族ならテキトーに進んでも辿りつけるはず!

見るがいい! これが魔王子の底力だぁー!!

やっぱりダメだぁーッ!?

碁盤が消えてならくへと落ちていくボクッ!

しかし、落ちていこうとするボクの手を誰かがガチッと掴んだ!

誰だ!?

ジュニアくん!?

「ゴティアくん、助けるー」

どうして……!?

ボクとキミはライバル同士であるのに……!?

「ゴティアくん、ともだちー」

……そうか……!

ライバルなどと張り合ってるのはボクだけで、ジュニアくんは広い心でボクのことを思いやってくれたのか……!?

小さい、なんて小さいんだボクは……!?

「でも、ジュニアくんはどうやってボクを引き上げたんだ? キミにはなんとかいう数列がわかったのかわかったのか?」

「ううん、わかんないー」

じゃあどうやって?

「ういてるー」

うあああッ!?

ジュニアくん、胡坐をかいた体勢から空中浮遊している!?

『落ちるのがダメなら浮遊すればいいじゃない』とばかりに!?

何て逆転の発想なんだ!?

「ぜろ、いち、いち、にい、さん、ご、はち、じゅうさん、にじゅういちー」

え? 何!?

こうしてボクは改めて農場の聖者の息子……ジュニアくんの凄さと心の広さを思い知ることおなったのであった……!?

さらに異母妹マリネが……。

「兄上、きっちりクリアできて凄いのんー。やっぱりさすがはパパの跡取り息子なんなー」

ああ、あの……!

はい……!