作品タイトル不明
ミラフラワー
翌朝、まだうっすらと暗いうちに辺境伯邸を出た。太陽の光がまだ充分に届いていない道をゆっくりと馬車で進む。
馬車が止まり、ルカルディ様の手を借りて降りると、そこは少し小高い丘の上だった。
「こちらへ」
手を引かれ歩いた先には、足元からなだらかな斜面に沿ってミラフラワーが見渡すかぎりに咲いていた。緑の絨毯の上に模様のようにツンと白い蕾のような花が咲いている。
「ここからの眺めが1番良いんだ。もうすぐ日が昇る」
その言葉が合図かのように、私達の背後からゆっくりと太陽が昇り、足元からどんどん光が届き始める。
するとふわりと、花が起きるように、光に導かれるようにゆっくりと花が開いていった。先程まで見えていた緑は花弁に隠され、あたり一面真っ白に変わり、花についた水滴が太陽の光を反射して、まるで水面のようにキラキラと輝いていた。
「素敵……」
幻想的な風景に目を奪われていると、風に乗って木々のような香りが鼻をくすぐる。落ち着くその香りはミラフラワーの香りだろう。
辺境に似合うその香りと、目の前の景色にうっとりとしていると「あなたにプレゼントがあるんだ」と言ってルカルディ様はベルベットに包まれた箱を開けて、こちらに見えるように差し出してくれた。
その中には目の前のミラフラワーをかたどり、花の中心にはルカルディ様の瞳の色が嵌められたネックレスと、イヤリングが収まっていた。
「次は必ず私が選んだものを送ると約束しただろう?」
ローゼンフィルのカフェで約束してくれた事をルカルディ様は覚えていてくれたのだ。
「ありがとうございます……着けてみても?」
もちろん、とルカルディ様はネックレスを箱から取り出すと自らの手で私の首にネックレスをつけてくれた。
「あぁ、とても似合ってる。ミラフラワーの凛とした花はあなたに似合うと思っていたんだ」
「嬉しい、大切にします。ここに連れて来てくれたことも、ありがとうございます」
キラキラ輝くミラフラワーの真っ白な花の絨毯の上に私とルカルディ様の影が寄り添って伸びていた。
私はこの景色を一生忘れることはないだろう。