軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

23 波乱のオークション

『古代の遺物が六千ゼニ!六千五百ゼニ!!おお!八千ゼニ!!他いませんかいませんかぁ!?』

クソ、意外としぶとい!!

古代の遺物と宣い、ぼろくて使い道がなさそうな品物の価値を知っているのか相手がなかなか引かない。

ベルを二回消費させるまでは最低金額の千ゼニから二千ゼニという倍額増額で済ませサクラを蹴落としたというのに、それからは一進一退の攻防のごとく値段は吊り上がり、今では。

『一万ゼニ!!一万二千!!』

ついに十倍の大台に入ってしまった。

こっちの資産的にはまだまだ余裕があるし、ゲーム時代の値段を考えるとまだ安いと思える。

プレートを上げてくれているイングリットにどうするかと視線で聞かれ考える。

この雰囲気的に相手は二割増で抑えている。

だったらこっちは。

『一万七千ゼニでました!一万八千!!二万三千!!二万四千!二万九千!?』

こちらは五割増しの強打だ。

グングン値段が吊り上がっていき、ネルが心配そうに俺を見て、アミナが興奮気味にステージを見つめている。

『三万ゼニ、いや、三万五千ゼニ!!』

気分はチキンレースだ。

どっちが先に引くか、それがわからない現状で闇雲に突っ込むのは本来なら得策じゃない。

はっきり言えばクズスキルしか出てこない可能性の方が高い代物にここまで大金を出す必要があるか。

ゲーム時代の古代の遺物の取引額は、一個当たり三万ゼニ、今回の剣、斧、弓、盾、兜の五点セットなら十五万ゼニは出てもおかしくはない。

すなわち。

『三万六千ゼニ!四万千ゼニ!?』

今の額ならまだ安いと思える。

そんな金銭感覚の俺を前にして、俺が引く気がないというのを理解したか。最後の最後まで対抗していた相手の手が止まり。

『四万千ゼニ!もうないか?ないのでしたら、四万千ゼニで落札です!!』

日本円にして四百十万円でボロボロの武具を購入した。

失笑に似た笑い声が会場から聞こえるが、俺からしたらむしろ安いと断言できるくらいに大満足の買い物だ。

「ずいぶんと強気なやり方ね。相手がサクラだったら釣り上げられすぎじゃない?」

「そうか?俺からしたらだいぶ安く買い叩けたと思うけどな」

FBOのゲームを知る俺の金銭感覚で言うのなら、相場の三分の一以下で買えたのだ。

十分なお買い得品だと思う。

ネルは、相手のやり方的にサクラの可能性を考慮していたかもしれない。

それも十分にあり得る話だが、終わった後に何を言っても仕方ない。

「そうなの?」

「ああ、もう三倍は覚悟していた」

「三倍!?」

「この金額で言いますと、十二万ゼニほどかと」

「それは、いくら何でも高すぎだよ」

「その十二万ゼニを払ってでも、この機会を逃したら手に入らない物が手に入る可能性が、こいつには眠っているんだよ」

驚く彼女たちに苦笑しながら、支払いの手続きをする。

ゲーム時代では自動的にお金が引き落とされて、アイテムが届くようになっている。

だけど、現実ではそんな便利機能はない。

「こちらが交換札になります。三日以内に支払われない場合は無効になりますので注意をお願いします。また、支払いを怠った回数が増えますと当施設への入場権を永久にはく奪することになりますのでそちらもご承知願います」

「わかりました。今支払いますので、イングリット」

「はい、こちらを確認願います」

この世界では落札者の部屋にこうやって係員がやってきて綺麗な装飾を施した交換札を持ってくるのだ。

その札とお金を用意して、後日商品と交換。

支払わなかったら、オークションを妨害したとみなして追放というルールになっている。

この文言も二回目だ。

払えるのか?と念押しされているようで不快になる参加者もいるだろうが、落札に熱中しすぎてついつい自身の財産よりも高い買い物をしてしまう人もいる。

そういう人を牽制する意味合いをこの文言は持っている。

最終防衛ラインとして、この交換札を受け取らず罰金を支払うことで再出品にできるという救護措置があるとは聞いているが、これは支払い拒否よりも許容回数は多いが、何回もすると結局は追放処分になる。

「かしこまりました」

なので、こうやって先払いをするのが安全だったりする。

この部屋に用意してある入札用の道具には、お金を勘定するための台もある。

金額がわかりやすいように工夫されていて、そこにイングリットが家から鞄で持ってきたお金を積み上げ、それを係員が確認する。

その一連の流れが終わると、係員の雰囲気も少し柔らかくなる。

お金を払えばお客様。

そんな雰囲気をにじませて、しっかりとさっきの入札額、四万千ゼニがあることを確認した係員。

「確かに。それでは先ほどの落札済みの交換札とこちらの支払い済みの交換札を交換いたします。これを受付で渡せば商品をお渡しできるので失くさず保管をお願いいたします」

「わかりました」

そしてより一層豪華な交換札をイングリットに渡し係員は立ち去っていく。

「イングリット、残りの予算は?」

「十万と八千ゼニほどです」

「うーん、これで火竜の角は無理だよなぁ」

「この十倍、いえ、百倍はないと難しいかと」

「そうだよな。掘り出し物はもうなさそうだし、あとは俺の竹槍と火竜の角の行方を見定めて終わりだな。よし、こんなに着飾っているんだ。どうせなら帰りに少し高めの店に入って食事にしよう」

「いいの!?」

「おう、いっつも頑張ってるしな。これくらい贅沢してもいいだろ」

「獣人でも入れるお店でどこがいいかしら?」

「それでしたら私にお任せを、良いお店を知っております」

これにて俺のオークションは終了だ。

時間的にこれから狩りに行くのは微妙な時間帯。

であれば、気になっている商品の値段がどうなるか見届けてから帰るのが良いだろう。

帰りに少しの楽しみを添えてやれば、どこの通りの店がいいとか女性陣が語りだし、お目当ての商品が出てくるまでの時間つぶしにはなる。

「リベルタは何が食べたい?」

「んー、肉?」

「えー、僕は魚がいいよ」

「私はお肉ね、イングリットさんはなにがいい?」

「私はどちらでも構いません」

「それじゃお魚ってことで!!」

「それ、アミナが食べたいだけじゃない」

ワイワイと話し合っている間も、どんどんオークションは進む。

ドレスが出たり、剣が出たり、馬が出たり、本や、壺、スクロールといろいろな物が出て一喜一憂する雰囲気を感じ取りつつ、ついにそれはやってきた。

『さぁ!!皆様お待ちかねの目玉商品でございます。こちらの槍は一見すれば地味な竹製の槍!ですがその実、あの這竜を屠ったと言われる竜殺しの槍です!!』

「竹槍って言ってるな」

「言ったわね」

「言ったね」

「言いましたね」

俺が使っていた竹槍、強化しているけど、正真正銘のクラス1の武器の竹槍だ。

最弱にふさわしい火力と不壊の耐久値をもつそれをステージに立つ司会者はさもすごい代物だと言わんばかりの煽り文句で会場を盛り上げる。

『論より証拠!この剣は鋼製の剣です。これをクラス2レベル83の私が振るえば普通の竹製の槍など一刀両断となることでしょう!ですがこの竜殺しの槍は違います!その刀身に染みた竜の血が成せる業なのか、ホラこの通り!!』

ステージに司会者以外の男が登り、そして竹槍を握って掲げるとその掲げた槍めがけて司会者が用意した鋼の剣を振るった。

普通なら竹槍が切れておしまい。

だけど。

「壊れないんだよなぁ」

「ダッセの短剣も無傷で受け止めてたわよね」

「僕の木の杖も壊れなかったよね。全力で振るってたけど」

「私の竹ぼうきもです」

竹槍は見事鋼の剣を受け止めて見せて、会場はどよめいた。

『どうですかこの耐久力!!これぞ竜殺しの槍が見せる奇跡です!!』

「いや、普通に弱者の証を混ぜただけの竹槍なんだけど」

「言っても信じないわよ」

「そうだね」

「ですが、実際にリベルタ様は這竜をあの竹槍で屠っていますので竜を殺せるだけの性能があるのでは?」

「イングリットの理屈で言うなら、急所の逆鱗を突ける武器なら何でも竜殺しの武器になるぞ」

その反応はある意味で滑稽だ。

性能を知る身として、その武器には竜殺しの要素など欠片もなく。

這竜以外の竜を竹槍で殺せと言われたら全力で断ると断言できるほどの縛りプレイになるのは必至。

軽くて丈夫だけが取り柄の弱者の竹槍。

強くなるどころか、弱くなる武器なんだけどな。

『さぁ!十万ゼニからスタートです!!』

そんな武器が日本円で一千万とか笑えて来る。

『十五万!二十万!!二十五万!三十万!!』

しかも、入札額の上がり方が今日一の速さとはさらに笑えて来る。

『百万!百五十万!!二百万!!』

「たった数分で、百万超えるとか・・・・・これ出品したやつは高笑いが止まらないだろうな」

「お金って、あるところにはあるのね」

「うーん、僕の木の棒も出品すればそれくらいの値段になるかな?」

「竜を殺せればあるいは・・・・・いえ、私たちですと簡単にできてしまいますね。偽物を疑われて衛兵に捕まってしまいます。なので諦めるのが宜しいかと」

「残念」

審美眼というか鑑定眼と言えばいいのだろうか。

そこら辺が欠如すると、竹槍の性能の詳細を知れないからただの竹槍にあんな大金を投入することができるのだろう。

「武器の性能を知っていれば絶対にこんな買い物しないと思うのに、なんでみんなこんな大金を出すんだろ」

「武器の性能を知る方法は使って確かめる以外にはないと思いますので、買ってからでないとわからないのでは?」

「ん?鑑定スキルは?」

「鑑定スキル?そんなスキルがあるのですか?」

「え、ちょっと待って、鑑定スキルが本当にないのか?」

「少なくとも私は存じ上げません。ネル様アミナ様ご存じですか?」

「伝説の商人が持っていたっていうのは聞いたことがあるわ。おとぎ話みたいな話だけど」

「僕は知らないよ」

なんて間抜けなと思いつつ、普通なら武器の性能をオークションの主催側が確認するだろうという疑問を素直にこぼしたら、とんでもないことが判明した。

鑑定スキルがない。

そう言われてバカなと思ったが、冷静になって振り返ってみれば、確かにこの世界に来て鑑定スキルをつかっている人がいたか?

いや、いない。

俺は武器の性能を知っているから、鑑定スキルに頼る必要がなかった。

どれを合成して、どんな形にすればいいかという最適解を知っているからこその盲点。

「・・・・・鑑定スキルは武具やアイテムだけじゃない、モンスターのステータスやドロップ品もレベル差次第では看破することができる。商人が一定の条件を満たせば取得できるスキル。だけど、その条件を取得するには商人のジョブを得てクラス5のダンジョンに挑まないといけない」

そしてこの世界では冒険が命がけだということを思い返せば鑑定スキルが普及していないその理由にたどり着く。

「クラス5のダンジョンに挑める商人。普通に考えればいないわね。商人は物を運んで売買するのが本業なの。戦うことを生業にする商人はいないわね」

ボソリと鑑定スキルの取得条件を口にすれば、ネルがそれを取得できるほどの強者の商人は存在しないという。

だからこそ、スキルではなく知識と目視といった技術の鑑定能力が商人に求められているのか。

ジンクさんがネルと交渉をした際に宝石鑑定をやった時もスキルで即座に鑑定するのではなく、拡大鏡を使って宝石を鑑定していた。

あれはそういうわけだったのか。

「・・・・・完全に盲点だった」

スキルを使わないのではなく、持っていない。

ネルの言う伝説の商人がまさに数百年に一度のレベルの強者の商人だったのだろう。

そもそもの話、商人が戦うという発想がこの世界にはない。

ネルという存在がある意味でこの世界で初めての戦う商人なのだ。

「なら、こうなるのも納得だ」

ゲームと現実の差。

あって当たり前の物が存在しないという現実。

『四百万ゼニ!四百三十万ゼニ!!』

失速しているが、それでもなお上がり続けている竹槍の値段が鑑定スキルのない現実のあかしなんだろうな。

一体どこの誰が、この竹槍を熱心に買おうと思っているのかは知らんが、情弱ゆえの不幸だと思ってくれ。

日本円にして四億円以上。

高い勉強代にはなる。

「爆死してしまった奴にはお悔やみ申し上げるわ」

思わず合掌してしまうほど、哀れだと思ってしまう。

そしてやばいのは今出品されているのが盗品ということだ。このオークションに出品した輩はこのことを機にさらに味を占めて悪事と思っていない悪事に手を染めるのではと不安が残る。

『四百八十万ゼニないか!?四百九十万ゼニ!!』

そして二度目のベルが鳴り、そろそろ竹槍オークションも終焉を迎える雰囲気を出してきた。

『五百万!五百十万!!』

じわりじわりと、間隔が空く。

そしてついにその時は来た。

『五百四十万ゼニで落札でございます!!!』

「オッシャアアアアアアアアア!!!!!」

落札を示す鐘の音。

その直後に聞こえる雄たけび。

「なぁ、さっきの雄たけびが聞き覚えのある声のような気がするのは俺だけか?」

その声の持ち主の声を最近聞いた気がして俺はつい、ネルやアミナを見ると。

必死に笑いをこらえるネルとアミナの姿が見え。

「さて、ずいぶんと愉快な冒険者の方がいるのですね。こういう場では叫ぶなんて恥ずべきことはしないものですが」

そしてイングリットも心当たりがあるようでシレっとディスってる。

そうか、やはり聞き間違いではないか。

A級冒険者だと相当稼いでいるからこそ、ここまで粘れたんだろう。

だからあえて言うぞ。

「アレス、ドンマイ」

その言葉をつい漏らしてしまうのであった。