軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

6 違和感

「よ!お待たせ」

ジュデスとのやり取りがあって遅刻するかと思ったが、そんなことはなく電車に乗って移動したら、主人公たちとの待ち合わせには普通に間に合った。

今は交通機関として使っている人の方が少ないから、運行ダイヤなんて物はないから自由に魔導列車が使える。

走った方が早い?それはわかるけど、作った身としてはある物を使わないのもなんかおかしいだろう。

商店街の人たちや精霊たちも使ってくれているようだけど、やっぱり使用頻度は高くない。

せいぜいが地方のローカル路線程度。

下手したら限界集落の一日二本ペースの路線の使用頻度になる時もある。

対して貨物列車としての使用頻度は山手線レベルとまではいかないが、それなりの頻度で使われているから需要はあるんだよな。

そんなことを思いながら、日本にいたころのような軽いあいさつで、待ち合わせ場所である第一城壁の城門にある待合室に行くと、横一列に立って並んで待っていた面々が頭を下げる。

顔立ちが似ている兄妹は勢いよく、温和な見た目な少女はゆっくりと丁寧に、金髪の勝気な少女はしぶしぶと。

何とも心の中が現れている構図だなと思いつつ。

「「今日はよろしくお願いします!!」」

「うん、元気があってよろしい!」

冒険者は体育会系な人が多いのか?と思うくらい元気溌剌に挨拶してくる兄妹、アステルとステラに笑いかける。

「ひとまず、移動しようか。イングリット、移動しながら彼らに今日の予定を伝えてもらえる?」

「かしこまりました」

そしてさっそくだけど移動を始める。

最近は余計にだけど、やることが多すぎて割と時間がカツカツなんだよね。

ジュデスに睡眠不足を心配されるわけだ。

「それでは皆様、本日の予定をお伝えします」

俺が先頭を歩くわけではない。

言わずもがな、御庭番衆が最低でも3人は護衛につき2人が前を歩き、1人が最後尾を歩くような配置になる。

そんな集団のなかでイングリットの凛とした声が響く。

「まずは神殿に赴き、契約を行ってもらいます。契約内容に関しましては事前に内容をお送りしました通りとなります。ご確認はなさっていると思いますが、契約前に神官の方から再度説明がございます」

魔導列車に乗り込み、そのまま移動。

魔道列車に驚いたり、駅の設備や、ドンたち作業員の身体スペックに驚いたりとコロコロと表情を変える面々に満足しつつ、俺は景色の変わる魔導列車の外を見る。

この路線を使うのは神殿関係者が多い。

フライハイトに作られた大神殿。

神山にある本殿よりも豪華なのではと言われているが、その原因がこの大神殿に納められている神像の数だ。

「「「「えっ!」」」」

神の欠片を内包する神像を普通のあばら家に収めるなんて言語道断。

それ相応の格が求められる。

そして神像の数が数なら当然その神像を安置する神殿の規模も大きくなるし、その豪華さも際立つ。

イングリットの説明の途中に漏れる声。

その原因は、俺が設計を担当し、ドンたちが自身の持てる技術を総結集して作った、ある意味で現状のフライハイトで唯一の観光地と言っても良い大神殿だ。

白亜の城ならぬ、白亜の大神殿。

すべてが純白に染め上げられているわけではない、されど白く美しいと形容されることが正しいと思わせる景観。

白と、優しい青色、そして所々に配色される黒や灰色といった落ち着いた雰囲気をイメージして作られた巨大な神殿を見て、ステラたちは唖然としている。

大神殿前にある駅から直接降りると、その景観を正面から見ることができる。

距離感を計算してちょうどいい場所に駅を設けてあるから、降りた場所からは見事なシンメトリーを作り出して神秘的な雰囲気をより一層醸し出している大神殿を見ることができる。

「「「「・・・・・」」」」

「この様子を見ると、フライハイトの観光地として一番有力なのってやはり大神殿だよな」

「はい、これを見た後に宿屋街に併設した飲食店街に引き込むのが鉄板ルートになるでしょう」

「ジンクさんたちと後はバミューダ、神殿の方にも利益ってあった方が良いかな。クローディアにも確認しておかないと」

魔導列車の中で驚き、駅前で正面から大神殿を見てさらに唖然となるステラたちが正気に復帰するまで数分かかった。

そして神殿に入ってからも問題で。

「「「「・・・・・」」」」

ずらりと並ぶ神像の数々を見てまた唖然となる。

「ようこそおいでくださった」

「マーレン司教、今日は世話になるね」

「はい、儀式の方は準備ができております」

そんな彼らを横目に、出迎えてくれたのはこの大神殿の仮の責任者になったマーレン司教。

神殿側の内部でも色々と話し合いがあって、神像が一番多いここを本部にすべきだとか、大司教を派遣すべきだとか議論があったようだ。

諸々の手続きや話し合いがまだ終わってないから、仮の責任者だ。

年齢は五十代であるが、老いを一切感じさせない武闘派らしい体で、背骨に芯でも入っているのかと言わんばかりにきっちりと背筋が伸びている。

たまに鍛錬で御庭番衆と手合わせして、互角に打ち合える段階でその実力は確かだ。

俺も何度か手合わせしているが、ステータスは低いがそれを技術でカバーしている。

プレイヤースキルが高い方の人物だ。

性格はいたって温厚、しかしいざ戦うとなると抜き身の真剣のような鋭さの闘気を持つ御仁でもある。

「では、こちらに」

「ああ」

そんな御仁に案内されて、左右に神像が立ち並ぶ中央通路を進む。

「こんなに神像があるなんて、リベルタさん、ここにはどれくらいの数の神像が納められているんですか?」

中央通路は長く、その間沈黙を貫けるほど好奇心を抑えることはできないステラが沈黙を破る。

「87体だな」

「はちじゅ!?え、そんなに!?」

質問は当然だけど、この神像の多さについてだ。

ステラも王国の神殿で神像を見たことはあっただろうが、その数は多くても十かそこらだろう。

二桁後半の神像の数はさすがに圧巻だったようだ。

「俺の知っている神様の神像もあった」

「知名度の高い神様は一通りいる感じね」

左右に並ぶ神々の姿を見て、ステラとアステルはその特徴と足元にあるプレートを見てどの神様かを把握している。

「・・・・・光の女神様の神像がいないじゃない」

「大地の女神様もですね」

ジュリとライナは特定の神様を探しているみたいだが、いない様子。

まぁ、天界の全部の神様がいるわけではないから当然と言えば当然なのだが。

その姿がまるで俺のあらさがしをしているように見えてちょっと微妙な気分になる。

そんな状況で、儀式の間に到着した。

「では、順次契約をさせていただきます。先ずはその前に、契約の内容をあらためて説明します」

作りは神山の神殿の様式に合わせた。

そっちの方が神官たちもやりやすいだろうという配慮と、下手に様式を変えて神殿関係者の反感を買わないようにしたというのもある。

「一つ、この契約内容は例外なく秘匿すること」

そして契約の段取りは俺が主導するのではなく、神殿側にお願いした。

ジンクさんやジュデス、ゲンジロウの時は最初から仲間になることが確定していたから俺が主導で行ったが、今回はちょっと事情が違う。

外部の組織の人間を育てるという事実、それに対して冒険者ギルドと仲良くするというポーズに見せつつ、神殿を巻き込むことで冒険者ギルド側のやらかしを抑制することを狙っている。

もし仮にこの契約を悪用しようものなら、神殿が黙っていないということだ。

「二つ、契約者リベルタは契約者ステラ、アステル、ライナ、ジュリ、以上四名の実力をクラス7まで育てることとする。この際に契約者リベルタはリベルタが持つ知識を惜しみなく使う」

この世界での神殿の影響力は凄まじい。いかに世界規模の組織である冒険者ギルドであっても、神殿を敵に回したら致命的なことになるからな。

「三つ、契約者ステラ、アステル、ライナ、ジュリの四名は契約者リベルタによって施された訓練内容を他者に伝達することを禁ずる。また訓練内容とは、レベル上げの知識、スキル獲得の方法を指すものとする」

神殿側も、冒険者ギルドを敵に回すことは歓迎できないが、そのリスクを背負っても仲介を買って出てくれた。

神山での俺の活躍が役に立ったということと、フライハイトがこれほどの数の神像を抱える大神殿を保有しているということが、そもそも神殿側と深いつながりを作れているきっかけになっている。

「四つ、契約者ステラ、アステル、ジュリ、ライナはこの契約を締結後、契約者リベルタ及び所属する組織に害を与える行為を行ってはならない。ただし、危害を与えられた際に防衛することは認められる」

それがあるからこそ、今回の育成にも乗り出せたと言える。

「以上4つの契約内容で間違いないかご確認ください」

そんなことを考えつつ、何度も確認した契約内容を聞き終える。

「俺は問題ない」

真っ先に俺がうなずき、他四人に確認を取ると彼女たちも一斉に頷く。

「ええ、問題ないわ」

「俺もない」

「・・・・・いいわ」

「はい、大丈夫です」

互いに合意を得た。であればあとは契約するだけ。

普通であれば合意をしていれば契約を行うことに対してはなんら問題はない。

そう問題ないはずなんだ。

「・・・・・契約ができません」

いざ契約となり、そして儀式を実行した結果、マーレン司教が眉間に皺を寄せることになった。

「ライナ、あなた」

「ちゃんと合意しようと思ってるわよ!!」

契約は順番にやることになり、ステラ、アステル、ジュリ、ライナの順で行われることになった。

最初の三人はなんら問題なく契約ができた。

問題なし、その通りだと言わんばかりに順調に三人との契約は進み、いよいよ最後にライナと契約を結ぶという段階になってそれは起きた。

ステラが頭を抱え、半眼になって睨むのはこの契約がすでに三度目の挑戦だからだ。

始めの一回目の失敗はまだ良かった、何かの気の迷いということもあるし、緊張しているという線もあった。

だから、ひとまず十分ほどの休憩を取り、その間お茶を飲んだりして落ち着こうとした。

だが、二度目の契約でも成功しなかった。

ここで何かがおかしいとステラの目と、アステルの目が疑惑に変わり始めた。

それにライナが焦り、なんでと混乱し始めている。

アワアワと慌てて、何かの間違いだと叫び、落ち着きを取り戻すのにさらに30分ほど時間をかけることになった。

大丈夫、大丈夫と自分自身に言い聞かせる姿は本気の姿に見えたし、何が何でも契約してやると言う気合も本気に見えた。

しかし、マーレン司教の言葉がすべてを物語っている。

「あー、さすがに契約なしじゃ鍛えることはできないんだけど?」

三度目の正直でだめだと、さすがの俺も庇えない。

半泣きになって、なんで、なんでよと叫ぶ姿は正直痛ましい。

そんなライナの姿から目を逸らすようにステラに問いを投げかけると、彼女も彼女で難しい顔をしている。

当然か、仲間から契約ができない人物が現れたのだ。

契約できないということは、いずれかの契約内容に本能的にあるいは意図的に不服だと思っているということ。

あの四つの内容の内どれに反しているかはわからない。

「少しだけ、時間を貰えませんか?五分でいいので。それで契約できなかったらライナは外します」

「・・・・・わかった」

これ以上の時間は浪費できない。

後の予定も詰まっている。

ショックを受けるライナを引き連れて、ステラは儀式の間の壁際まで移動した。

本当にこれでだめなら、こちらとしてはどうしようもない。

さてどうするのかと眺める。

暴力や恐喝により無理矢理契約させることはまずできない。

心の底から納得し、受け入れない限り契約が成り立たないから、正直五分で何ができるのかと思っているが、ステラが何かをライナに囁くように耳元で呟く姿を見せたのち、一気にライナの顔が赤くなるのが見えるのであった。