軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

3 救援の仕方

「なるほど、厄介ですな」

「そうだろ?ここで無視しても問題の先送りだ。絶対にこっちにも問題が波及する」

呼び出したバミューダにトルマンディが来た理由と状況を説明すると、彼は眉間に皺をよせ、困り顔を披露した。

「リベルタ様は西の大陸の騒乱がこの大陸にまで影響を及ぼすと?」

「最悪はそうなると考える」

「それは人為的な侵略ですか?」

「最初はそうだね。だけど、それに続くのは自然災害のようなモンスターによる侵略だよ」

腹芸上等、騙される方が悪く、騙した方が正義のような政界を経験しているバミューダだからこそ、こんな会話ができる。

この点においては、まだジンクさんのところで備蓄の量を確認しに行って、ここに戻っていないエスメラルダよりも一日の長がある。

イングリットが静かに背後に控え、黙っているのはこの話がただの確認ではないから。

「ふむ、なるほど。救援は表の名目というわけですか。本命はそのモンスターと解釈してもよろしいですか?」

「間違ってはいないね」

「正解と少しずれていると?」

「モンスターも本命だ」

「なるほど、二兎追う物は一兎を得ずとはいいますが、リベルタ様なら一網打尽にできそうですな」

面白いとクツクツと笑う様は、悪役の幹部っぽいのがバミューダだ。

そんな風体であっても、政治能力は折り紙付き。

なので手綱さばきさえ間違わなければ有能なのだ。

「とりあえず、クラリスたちの救援は絶対だ。問題は表から行くか裏から行くかだ」

俺の意図を察し、そして現状のフライハイトの状況を踏まえ、それでどういう動きを取るかを判断し、選択肢を与えてくる。

その選択肢から必ずしも選ぶ必要はないが、有用な選択肢を用意することが多い。

頼りすぎるといつの間にか骨抜きにされてしまうから、本当に取り扱いが難しい男だよ。

だけど、こうやってダーティーな話がしやすい人物なのもまた事実。

「そうですな。私が考えられる限り、どちらにもメリットデメリットが存在しますな」

「俺もそう思う、ひとまず俺が考えるメリットとデメリットを話すから聞いてもらえるか?」

暗躍や策略という部分では一番話しやすい男と、救援をお題目にした今回のミッションの行動指針を決める。

「まず表側、外交ルートを使って大義名分を得ての救援だ。メリットはその大義名分が通れば堂々と西の大陸を闊歩しクラリスたちと接触して救援物資を送り届けることができる。まぁ、表向きは邪魔しないだろうけど色々と裏からの妨害は覚悟する必要がある・・・・・あと、一番の難関は外交ルートが英雄繋がりしかないから普通に一から外交ルートを構築しないと、越権行為になって戦争まっしぐらな点かなぁ」

「現実的に実行するなら、年単位の時間が必要になりますな。一からの外交ルートの開拓、信頼の確保、さて、その間ノーランド殿たちが持つか」

「持たないだろうなぁ」

正義感溢れるような真っ当な男であれば、こんなことを言ったらどうにかしましょうと熱意と根性でやろうとしてこじれる未来が待っていただろう。

しかし、リアリストであるバミューダは現実的に考えた答えを返す。

「ということで、救援物資を届けるとしたらこっそりと接触して裏から届けるのが妥当だ」

「はい、私もそう思います」

正しいことをやっているなら堂々としろというのは正論ではあるが、正論を正義じゃないと断じる輩が相手では意味がない。

苦笑して、バミューダに話せば最初の話が前座であると言わんばかりにあっさりと頷く。

「そのためのトルマンディ殿かと。彼がノーランド殿との通行証代わりでしょう」

「だよな。国から出るのも一苦労だろうし、彼一人しか送り出されなかったわけないだろうし」

「念のため、契約による尋問を行いますか?後ろめたいことが無ければ率先して身の潔白を証明すると思いますが」

「んー、それに関しては俺が聞くよ。下手に代理人が聞くより、俺が聞いた方が体面的にはいいだろうし」

「かしこまりました」

表から堂々といければこれ以上にないくらいに楽だけど、それをやるには向こうの元老院が邪魔すぎる。

理由を付けて断るならまだ優しい、おそらくだけど戦争をしたいのかと脅しをかけてくるだろうな。

受けて立つと言うのが、一番楽だ。

ただそれだと、皆殺しルートみたいに血の海を大量生産しないといけないからやらないだけだ。

弱点どころか、こっちで確保している情報を精査して、さらに相手のやっていることを教えれば精霊そのものを味方につけることができる。

そうなればあとはお察しくださいと言わんばかりの戦局が完成する。

「なら、物資の輸送ルートだけど」

「精霊回廊は使えないのですか?あの通路でしたら、誰にも露見せず秘密裏に運ぶことができると思うのですが?」

「そう思うでしょ?一応精霊回廊にも欠点はあるんだよ」

それは最終手段として、ひとまずは真面目な方向で対処しよう。

「欠点ですか?」

「まず第一に物理的に他の大陸に届かないんだ。他の大陸に行くにはまずは精霊界を経由する必要がある。精霊王にお願いすれば問題は解決するけど、どのみち物理的に他の大陸と同じ距離を進まないといけないから馬車が何台も必要だ。そこはゴーレムでどうにかできるからいいけど、その大量のゴーレムを内包した状態の精霊回廊を常時維持しないといけない」

「常にあるわけじゃないのですか?」

「ないよ、精霊回廊は精霊たちが持つ内包した世界。常にそこにあるけど、伸ばすにはその分だけの労力がいる。大きくすれば大きくするほど力を使う」

魔力の回復と消費が釣り合わないと、精霊回廊を作る精霊に大きな負担がかかる。

できなくはないが、やるとしたら上位精霊が大勢必要になる。

それもアミナが声を掛ければ普通に集まってきそうだけど。

「ようは疲れるってわけ。それだけなら、頼めばやってくれそうだけど。正直、今の西の大陸はその精霊が一番信用できない状態なんだよ」

しかし、そこまでの労力をかけて精霊に協力してもらうのは俺は正直反対だ。

「信用できない、ですか?」

信用という言葉が出てきたことにバミューダは怪訝な顔をする。

「このフライハイトにいる精霊は信用しているよ?もちろん精霊界にいる精霊も信用している。問題は西の大陸で契約している精霊だ」

「なるほど、敵にも精霊はいることを忘れておりましたな」

しかし、とある点を指摘すると納得と言わんばかりに頷く。

精霊は本質的に無邪気だ、邪悪な存在に使役はされない。

されど、抜け道はあるとバミューダは考えた。

実際にその予想は合っている。

「禁呪をつかって無理矢理使役することができるからな。その被害がこっちに及ばないとは限らない。正直、クラリスの仲間の中に元老院の術師がいないとも限らないし」

俺が一番懸念しているのは味方の精霊を奪われること。

禁呪を封じるには、ストーリーを進めて大ボスを倒す必要がある。

大元の力さえ封じてしまえば、禁呪は使えなくなる。

だが、それまではどんな精霊であろうとも条件を整えると使役できてしまう。

「裏切り、いえ、この場合は強制的な敵対行為を取られるのが問題というわけですか。となれば、精霊による物資輸送は現実的ではありませんな」

「細心の注意を払っても、1人でも精霊が攫われたらこっちは獅子身中の虫を飼うことになるからな。なら、そのリスクは避けるべきだ」

「賢明かと。取る必要のないリスクは避けるべきですな」

そのスキルを知っているから、精霊回廊による輸送は無しだ。

「なら、妥当なのは海路による輸送です。船の用意と港を確保する必要は有りますが・・・・・リベルタ様ならそれほど時間をかけずに用意できる知恵をお持ちでしょう?」

「あるよ、むしろそれを主軸に進めるつもりだったし」

なので堅実に海路による輸送を行うことになる。

「だけど、警戒船もいるからそれを潜りぬける方法もまた必要だな」

「深夜であっても、向こうには精霊がいますからな。新月の夜の侵入でも気づかれそうです」

「なら、精霊たちが近づかない場所を通ればいいさ」

実際に、FBOでもスニーキングミッションって感じで西の大陸に潜入することがある。

その一つの案で、こんな手段がある。

「深海を通るよ」

「・・・・・なるほど、そこでしたら人は近づけませんし。海中にいるモンスターのおかげで精霊も近づけませんな」

「あれ?無理って言わないんだ」

「リベルタ様は難題は申し付けられても、無理な話は持ち出しませんから」

深海、そう潜水艦を作って警戒網を掻い潜る。

それも船首に揚陸艇を搭載した強襲潜水艦だ。

海の中はモンスターだらけ、一般常識でそこは通らないと考える。

だけど、常識にとらわれていてはFBOプレイヤーは務まらない。

表情筋を総動員してできるだけ無表情を維持しようとしているバミューダに苦笑を送りつつ。

納得してくれているならいいやと話を進める。

「まずは素材を集めないとな。後は船乗りの育成と、物資の確保とクラリスとの連絡手段の確保が必要か」

指折りで必要な物を数えていくと、おおよそどれくらいでできるかが判明する。

「うん、あとは港と潜水艦を作ればいいから、おおよそ四カ月あれば十分だな」

「何度もリベルタ様の発想を聞いて、私の常識もおかしくなりましたな。普通に考えれば船を作るのにも年単位の時間が必要なのですよ?港も新設するとなれば道路も必要になり、数年いえ、国家プロジェクトでも十年は必要になる規模です」

「それが俺だ。ドンとパーシーたちには無理させるけど、その間にステラとアステルを鍛え上げて、邪神教会も片付けて、天使様の依頼も片付けるか」

スケジュールをざっくりと頭の中で決めてしまえばあとは行動するのみ。

バミューダから呆れた目線で、外交ルートを確保した方が早いと言われそうな規模の工事をたった四カ月で完遂し、その間に他のクエストも済ませようとすることに溜息を吐かれた。

「では、そのように調整します。関係各所には私の方から通達しますがよろしいですか?」

「頼む。全体会議で改めて説明するからその時に詳細を話すって言っておいて」

「わかりました。では、その会議の方も日程調整をしておきます」

バミューダの性格上俺の発言に問題があれば、理詰めで淡々と反論してくるがそれがでなかった。

諦めるのなら見限るのがバミューダクオリティ。

まだ働いてくれるのなら、問題ない。

さてさて、忙しくなってきたな。

「じゃぁ、俺はその間にステラたちの教育プランを考えるわ。時短でできるだけ実力を付けないとな!!」

「・・・・・手加減をしてくださいね」

「おう!」

バミューダの口から手加減なんて言葉を聞く日がくるとはなと思いつつ、やるべきことに取り掛かるのであった。