軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

4 物資不足

方針が決まったなら早速行動に移る。

それが俺たちのいつものやり方だ。

クラリスたちの救援の話をフライハイトの幹部間に即座に共有し、そのために港町を作るという話を持っていく、そこまでは順調だった。

「すんません、リベルタ様。土と弱者の証が足りないんでさぁ」

これほどまでに大掛かりな話は俺の独断で動かすことはできない。

なので、幹部を招集しての話し合いになる。

大会議。大規模な動きをする際に各部署の長を集めて話し合う機会だ。

その場には俺を筆頭に、このフライハイトを支えている面々が集まるわけだが、当然建設部門を統括するドンもここにいる。

今回は仕事に没頭しての遅刻はせず、きちんと時間通りに会議場に来て、イングリットに担ぎ上げられて運ばれてこなかったことを冗談として話して笑いを取れている。

そんな笑いを提供したドンが、港と潜水艦の建造計画を聞いて申し訳なく無理だと首を横に振った。

「最近大規模な建設が立て続けに続いて、さすがのフライハイトでも資材に余裕がないんでさぁ。港の建設はともかくとして、立体橋を港まで伸ばすのは現在作っている冒険者の町を放棄しても難しいかと」

「あー、ついに精霊たちに協力してもらっても弱者の証の供給が足りなくなったかぁ」

この街の建設を支えているのは弱者の証を混ぜ込んだブロックゴーレムだ。

それを作るのに大量の土とゴーレムコア、そして壊れないようにブロックゴーレムに最低一個の弱者の証が必要になるが、ブロック系の建設ゲームを経験したことがある人ならばわかるだろう。

ブロックっていくらあっても足りないんだよね。

一つの建設物を作るのに数百は必要だし、大掛かりになると最低でも千単位必要になる。

普通のゲームなら同じ地面から何度も土を採取できたり、できなかったとしても時間経過でできるようになる。

しかしここは現実、ゲームとは違い掘り返した地面が勝手に元に戻るわけもなく。

使った分だけ土は当然だけど減る。

「また山を削るってのも考えましたが、水源の確保のことを考えますとこれ以上山を削るのも良くはないですぜ?」

「んー。となると、別の方法を考えないといけないよな」

今までは山を削ったり、整地されていない地面を整地した際に生まれた土を利用してきたが、ついにそれも限界に来た。

ダンジョンという異空間から土を持ってくるという発想が湧くかもしれないが、ダンジョン内の自然は基本的に持ち出すことはできない。

一応、土をドロップするモンスターもいるにはいるが、それを倒して確保できる量は微々たるもの。

今の工事スピードだと焼け石に水滴を垂らす程度の効果しかない。

幸い金はある。

「とりあえず、弱者の証に関しては外注しようか」

「外注かい?それは、ああ、なるほど」

まずは、この先も絶対に必要になるし、なんならFBOではこの世界とは比べ物にならないほど高額で売買されている弱者の証から何とかしよう。

「外注先は冒険者ギルドだ。幸い、つながりができたし高額買い取りで弱者の証採取の依頼を出せば集まるでしょ」

「いいのですか?弱者の証の価値に気づかれるかもしれませんが」

「今さらじゃない?俺たちが結構な数の弱者の証を南の大陸のありとあらゆるところから買い集めているから、なにか価値があるっていう事自体は気づいているよ」

「そうそう、前に買いに行ったら値上げされてたし。ここで、冒険者ギルドに依頼して集めてもらうのは良いタイミングだと僕も思うよ」

ゲームなら弱者の証の秘密を気にせず買い漁れるが、この世界ではそこら辺を今まで気にしないといけなかった。

しかし、フライハイトがある程度完成した今なら深く気にする必要はない。

弱者の証のアドバンテージはいずれ崩れると思っていた。

そして俺は弱者の証の対抗策も知っている。

であれば、ハーゲッツという裏組織を、率いていたヴェロッキオと団員ごと引き入れて組織が拡充したエンターテイナーを率いるジュデスやシャリアが言う通り、ここで自重なく買い漁る方向にシフトしても問題ないだろう。

「クローディアの心配も理解できる。だが、ここは変革期だと俺は思う。こっちから情報をオープンにするつもりはないが、ある程度調べられるのは仕方ないと割り切る」

「あなたがそういうのでしたら、私からこれ以上いうことはありません」

「ありがとう。まぁ、万が一弱者の証の秘密を暴かれても、対抗策までは思いつかないだろうから問題ないよ」

「・・・・・末恐ろしいとはあなたのことを指すのでしょうね」

「誉め言葉として受け取っておくよ」

これによって、精霊たちだけではなくこの大陸中に広がっている冒険者を労働力として使うことができる。

「ということでジュデス、冒険者ギルドへの依頼をよろしく。一個の買い取りを50ゼニにすればかなりの数が集まると思うから。資金の方はジンクさんよろしく」

「予算はどれくらいにするんだい?さすがに上限なしとはいかないよ?」

「月に500万ゼニまでにしようか。それくらいなら商売の方で補填できるし」

「そうだね、それくらいなら問題ないよ」

「ドン、精霊と冒険者のほうで数を用意するけどこれで足りそう?」

「弱者の証に関しては問題ないと思うぜ。ただ、やはり土の方が足りねぇですぜ?やっぱり、山の方を削りますかい?」

弱者の証をドロップするモチは子供でも倒せるほど弱いモンスターだ。

なので、新人冒険者が稼げるクエストにもなる。

まぁ、荒稼ぎするためにベテランたちが挙って狩場を占有しそうな気もするが、そこは冒険者ギルドにどうにかしてもらおう。

あとは、学園の方の訓練でモチダンジョンを周回してもらって数を稼いでもらおう。

「いや、そっちの方は都市計画のインフラ構築の方針を変更しよう。立体橋を止めて地下線路に切り替える」

「地下ですかい?」

「ああ、地下にトンネルを掘ってそこに路線を引く。壁と天井そして地面を弱者の証で補強すればモンスターが寄り付くことなく、そして盗賊たちに線路を盗まれる心配もない。さらにトンネルで掘削した土は他の工事にも使える」

「なるほど!その手がありましたな!!」

「路線設計図と、必要な資材見積もりを頼む。それを軸に行動指針を決める。パーシーさんもドンに協力して設計図を作ってくれませんか?」

「わかったよ」

土に関しても方向修正することで、問題を解決する。

地下鉄を作り、それによって保安面の懸念と土不足を解消する。

ドンたちドワーフなら、地下作業に関しては問題なく行えるはず。

あとでシールドマシンゴーレムの作り方を教えて作業効率を上げてもらわないと。

もの作りに関してはドンとパーシーさんに任せている。

俺があれもこれもと指示を出すと2人に自主性が無くなり、やる気も落ちてしまうからね。

「エスメラルダは、アミナとネルを連れて精霊界に行って精霊王と謁見して来て。今回の工事は少し急がないといけないからいつもより多く精霊たちの力を借りたい」

「ええ、任せてください」

「リベルタ君。ライブする?」

「した方が良いな。闇さんに楽器と舞台の準備をしてもらってフライハイトで定期公演するか」

「わかった!」

素材不足を解消するためにダメ押しで、精霊たちのやる気を上げておく。

「新曲の方も準備しておくから、そっちの練習もよろしく」

「新曲!わかった!!楽しみだなぁ」

本当にアミナがいてくれて助かるよ。

精霊たちの力添えが無かったら、間違いなくこのフライハイトはここまで発展しなかった。

今日もきっと大勢の精霊たちがモチダンジョンを周回してくれているだろうな。

「あとは・・・・・ジンクさん。精霊を招いての慰労を名目にしたお祭りを計画してください。人手に関しては、学生とあとは女性陣の方に助力を頼んでください。問題は?」

「ないね」

その力添えに感謝して、精霊たちへのお礼も兼ねてこの街で初めての祭りを実行しようと提案すれば、ジンクさんも問題ないと頷いてくれる。

ライブと祭りで精霊たちを労われば、その分だけ彼らは頑張ってくれる。

ギブアンドテイクの気持ちは忘れちゃいけないよね。

労働には対価を、やる気搾取は絶対ダメ。

「さてと、とりあえず港町の方はこれでいいとして、他に何か足りない物はある?」

「リベルタ、ちょっと聞いていい?」

「ネル?いいよ」

そんな考えで、ドンの話はひとまず解決。

他にも何か問題はないかと聞いてみれば、そっと小さく挙手するネルの姿が見えた。

今話している話題は、物資不足に関して。

最近ジンクさんと一緒に働いて、いろいろな部署に顔を出しているのは知っている。

その経験で何か気づいたことでもあったか。

「えっと、西の大陸に救援に行くのよね?救援物資リストを見てて思ったんだけど、水って足りているのかしら?南の大陸と違って西の大陸だと水は貴重だって前に調べて知っているんだけど」

街作りの方ではなく、救援物資の方で疑問を抱いていたのか。

この大会議の主題は、救援に関してだ。

内容的には問題なく、そしていい着眼点とも言える。

水、特に飲料水となると確保が難しく、運搬もしにくい物資だ。

しかし、必要物資としての優先度は最上位に位置する。

「普通に考えればノーランド殿が治める街であれば、その心配はないように思えます。なにせ、西の大陸の街には世界樹があります。世界樹の力があれば水源の確保は容易。ネル殿の心配はわかりますが、配慮する必要があるとは私は思いません」

西の大陸の大半、約八割は砂漠という過酷な環境だ。

残った二割、その中でも世界樹と呼ばれる特殊な樹木型モンスターが生息する地域が住民の生活基盤となっている。

そこは巨大なオアシス地帯であり、水源には困ることはまずない。

その観点から、バミューダは救援物資としては不要だと言い切る。

「しかし、救援物資を運ぶ部隊にとっては必要かもしれません。万が一向こうで水を補給できないということも有り得ます。リベルタ様、ネル殿の言う通り、向こうに行くにあたりその点の対応が必要かと」

しかし、別視点では必要だともいう。

バミューダは手元に用意した救援物資を再度読み直し、相手に渡す分ではなく自分たちに必要な物で見落とす可能性があることを懸念した。

「私たちの行動は南の大陸を基準としております。このフライハイトにいる人員は優秀であることは間違いありませんが、砂漠での行軍経験は乏しい。現地で水を確保することを前提とした行軍経験はこの大陸でありますが、西の大陸の砂漠ではそれではいささか危険なことになるかと」

常識は環境が変わることで根本から容易に覆る。

それを的確に指摘したバミューダの言葉に、ゲンジロウやシャリア、そしてジュデスといった現場の人間が確かにと頷く。

「パーシーさん、水を確保するための魔道具は作れますか?」

そしてそれは俺も同じ気持ちだ。

ゲームでは、忘れたと思えば取りに帰ることができた。

オープンワールドのファストトラベルは当たり前だから、必要な物を必要なタイミングで確保することができる。

しかし、現実となると、救援物資の輸送をしている状態でそれをやることはできない。

「海水などの不純物を含んだ水を、飲料水にする魔道具はすぐに作れるね。だけど魔力で水を生み出す魔道具となると少し難しいかな」

浄化するのは簡単だけど、無から有を作るのは大変ということか。

「最近色々と家庭用の魔道具を作っていて水回りの魔道具に使う素材も不足しているから、そっちの素材の確保も必要になるね」

にこやかに注文を増やすパーシーさんに、前途多難だと思うのであった。