軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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ゲームもそうだが、何事もやり続けると自然と疲れというのはたまっていく。

レベリングに検証、そのどちらもやり続けて時間はあっという間に過ぎていった。

一日や一週間ではなく、一カ月、二カ月と時間は過ぎ。

そして毎日忙しなく過ごし、昨日は風呂に入ったらすぐに寝てしまった記憶が残っているある晩のこと。

だからこそ、これは夢だとすぐにわかった。

ぼんやりとしているはずなのに、明瞭だと認識している光景。

検証とクラス7のレベリングを繰り返す日々で、疲れがたまっていたのか。

それともなんとなく思い出そうとして見ているのか。

夏の太陽が照りつける生い茂った木々の丘。

そこから見える田んぼ。

田舎と言わずしてなんというのかと思うくらいには自然豊かな光景だ。

だが、もし仮にこの光景が前世の俺の記憶を思い出している夢だとするのであれば、この場所は俺にとって決して平和とは言い難い場所だ。

なにせ、夢の中の俺は忙しなくあたりを見回しているからだ。

誰かに追われているのか、あるいは誰かを探しているのか。

前者後者で言うのであれば前者の状態だったはず。

木々の隙間、生い茂った草、丘の下といろいろな方向に目を向け周囲を警戒していますというのが丸わかりな視線の動き方。

ああ、懐かしい、こんなことをしてたなぁと冷静に思い返すと、児童虐待と言っても過言ではないことをされていた過去の自分の行動に、この後の出来事を思い出すと。

いきなりガクンと視界が下がった。

痛みはない。だけど何かで叩かれたという記憶だけが思い出される。

『カカカカカ!隙だらけじゃ!!』

そして聞こえていないのに、聞こえたように感じる記憶の中の快活な笑い声としゃがれた声。

ああ、懐かしい。

こっちに転生して云々以前に、もう一生聞くことはないだろう声。

『痛ぇな!!クソ爺!』

そんな声に反抗する幼い、今の俺とは違う声。

涙目になっているのか、視界がぼやける。

笑い声の方を見れば、腰に手を当てて笑う初老の男性がいた。

実年齢を考えればだいぶ若く見え、背筋もピンとしていれば、筋肉もしっかりとついている。

それだけなら元気なおじいさんと言うことで済むが。

現代において絶対にしないであろう恰好、忍び装束を着ているという点だけでもその異質さを醸し出している。

片手にギリースーツも持っているというのもさらにおかしさに拍車をかけている。

『クソ爺とはなに事じゃ!!!師匠と呼べと言っておるだろう!!』

『かくれんぼに本気になる爺さんなんてクソ爺で十分だ!!』

なんでそんな恰好をしているかと言えば、爺さん曰く祖先をさかのぼれば由緒正しき忍者の家系だったらしい。

家系図をさかのぼれば猿飛の一族に繋がるとか繋がらないとか。

そんな忍びの家系の最後が爺さんとのことで、確かこの時はかくれんぼで勝ったらゲーム機を買ってくれるという爺さんの口車に乗って挑んで、ぼろ負けしているときだったな。

『年金暮らしのじじいから金を巻き上げる孫になら本気を出しても文句はでんわい!!なんじゃ、あのバカげた値段のゲームは!!わしの飯を半年間三食もやしにするつもりか!!』

そんな爺さんは不審者ではなくれっきとした俺の祖父だ。

俺の前世の家族関係は少し、いや、世間から見ればかなり特殊な物だっただろうな。

『最新のゲームは最近高いんだよ!!なんか十年後にはゲームの世界に入れるようになるとかネットで言ってたから、そのせいじゃね?』

今夢の中で孫と言い合っている祖父は母方の祖父で、自称忍者の家系の末裔。

そんなことを豪語する爺さんと一緒に住んでいる時点でかなり変だろう。

しかも、その忍者の修行を当時の俺はなんだかおもしろそうという理由でやっていた。

おかげで同級生では負けなしの運動能力を身に着けていたなぁ。

しかし成長期と相成って身体能力が上がっていると言っても、所詮小学生の俺じゃ、長年山で修業しましたと言わんばかりの爺様には敵わなかった。

そんな力関係であっても、子供というのは無謀な物でお小遣いではいったい何年かかるのかわからないようなゲーム機を当時は強請ってしまっていたようだ。

爺さんは約束はしっかりと守る性格、ゆえに子供相手とは言えどガチに勝ちに行ったというわけだ。

大人げないということなかれ。大人になった今ならわかるが子供が欲しいとねだるには大人の財布にダメージの大きい代物過ぎたと、夢を見つつ反省する。

『はぁ、なんでそんな物を欲しがるかの。普通に外で遊べばいいではないか』

『現実じゃ魔法とか使えないじゃん。ゲームの中ならそういうの出来るし、面白いし』

『魔法は使えんが、忍術なら使えるぞ?ほれ、前に口から火を吹いてやったじゃろ?』

ただ、このころの俺は自然の山河に囲まれすぎた生活に飽き飽きしていて、ゲームという最先端の遊びに夢中だったのだ。

遊べる場所は自然豊かな空間だけ。友達が持っているゲームがうらやましくて仕方ない年頃というやつだ。

『いや、それやったらばあちゃんに怒られたじゃん』

『まぁ、そうじゃな。じゃぁ、水の上を走る修行はどうじゃ?』

『いやだよ。この時期の川ってめっちゃ冷たいじゃん』

我が祖父ながら、よくそんなわがままな子供の相手を真剣にやってくれたよな。

肉が食べたいと言えば、スーパーで買うのではなく猪を狩ってくる。

甘いものが食べたいと言えば、一緒に水あめを食べる。

なんというか距離感が近い祖父だったよな。

水の上を走る修行かぁ、懐かしい。

あれは流れの緩い川の上を水蜘蛛とかいう道具を使って走ってた。

上手くできれば結構いいところまで走れるけど、だいたい途中で転ぶ。

爺さんは普通に走りきって見せるから、身体能力じゃなくて技術的な年季の違いがあったんだろうな。

『って、いうか爺さん金ないなら俺が前に言った動画配信やろうよ。絶対爺さんの動画バズるって』

『忍者が世間様に顔を晒してどうするんじゃ。忍者は忍ぶ者と書くんじゃぞ?』

『知ってるよ。でも、忍んだ結果がこんな田舎の生活じゃん』

『都会が偉いって誰が決めたんじゃ。田舎には田舎の良さって言うのがあるんじゃよ』

結局かくれんぼは俺の負け、この時の賭けは確か。

『さぁってと、話を逸らそうとしている孫にはそろそろ約束を守ってもらわんとな』

『うげ、忘れてなかった』

『生憎と呆けるにはまだ早いでな。ほれ、手裏剣の練習行くぞ』

『はーい。あ、やるなら棒手裏剣がいい。あれ刺さるとカッコイイし』

『ほー、ならそれにするか』

俺が勝ったらゲーム機を買ってもらう。爺さんが勝ったら忍者の修行をやる。

別に爺さんは俺を忍者に仕立て上げようとしているわけではないだろう。

これをやれ、あれをやれと言われた記憶もなければ、後を継いでくれと頼まれた記憶もない。

ただ、こうやって俺が何か強請るときは、だいたい負けたら忍者の修行を一緒にしようと誘ってくる。

こんなことをやっても役に立たないかもしれない。

だけどいまならなんとなくわかる。

爺さんは俺に少しでもいいから爺さんの経験を引き継いでほしかったんだろうなぁ。

『なんで爺さんみたいにまっすぐ刺さらないんだ?』

『ほれ、手首のスナップと指を放すタイミングを合わせるんじゃよ。そうすればこうやって』

『なんで一本投げる動作で三本同時に刺さるんだよ』

『年季の違いじゃ!!』

熱心に、遊びの延長線上で俺を楽しませるつもりで色々なことを教えてくれた。

歩き方、隠れ方、手裏剣の投げ方に、さすがにパルクールみたいな動きを教えてきたときは二人でばあちゃんに怒られてたなぁ。

爺さんとの記憶。

それが夢に出てくるのは久しぶりだ。

大人になればなるほど見なくなっていた夢だが、なんだかんだ言って思い出せるものだな。

カラカラと快活に笑う爺さんの笑い声。

それを聞きながら、だんだんと消えていく光景。

ああ、夢から覚めるのかと思っていると爺さんがピタッと止まって俺の方を見たような気がした。

その顔はまるで帰るのか?と聞いてくるような顔だ。

俺は頷くと、そっかと寂しげに爺さんは笑った。

『また来いよ』

そう口にした爺さんに返事をしたときに。

「・・・・・ずいぶんと懐かしい夢を見たような気がするなぁ」

ぱちりと目を覚まし、田舎のじいさんの家とは雰囲気の違う木製の天井が見えた。

ゆっくりとベッドから体を起こし、窓の方を見ればちょうど日の光が差し込むタイミングだった。

起きるのにはちょうどいいと思いつつベッドから立ち上がって背を伸ばす。

そして気づいたら体が夢の中で見た棒手裏剣を投げる仕草をしている。

「んー、久しぶりにやってみるかぁ」

なんとなく懐かしくなって、朝食まで時間もあることもあってか動きやすい格好に着替えて外に出る。

クローディアは鍛錬場の方にいったのか、姿が見えない。

「的は、適当な奴でいいか」

庭先にある広場に人影がいないのを確認して、取り出したのは掌くらいの長さの鉄棒。

刺さったら危険だとわかるくらいには先端がとがっていて、それを刺すための木の杭を地面に立てる。

棒手裏剣なんて代物がなんでここにあるのかと聞かれれば、この精霊界を出た後のことを考えて色々と作っていた過程で生まれた産物だと言っておこう。

対人戦用で用意していた代物だけに、モンスター戦ではなかなか使わない代物。

故に倉庫の中で埃をかぶって眠っていた物をあさって持ってきた。

「まずは、軽めにっと」

そしてそれを夢に倣い、そして記憶と体を連動させた動きを思い出しながら投げてみれば。

「うーん、意外と覚えているな」

ストッと綺麗に棒手裏剣が刺さった。久しぶりにやってみたにしては及第点の命中だと思う。

「問題はここから先かぁ」

もしやるとしたら連続投擲や、同時投擲という技も使えないとダメだ。

指先の感覚がどこまで錆びついているか確認する。

爺さんの動きを脳裏から呼び起こし、深呼吸を一回。

そしてそのまま一呼吸で投げだすのは六本の棒手裏剣。

「うーん、少しずれたか」

ステータスの補正と、投擲術のスキル効果が重なったか。

想像以上の威力と速度を叩きだし、杭に深々と突き刺さっている。

しかし、思い出補正なのか、それともついさっきまで見ていた夢が鮮烈すぎたからか。

「強くなっても、爺さんを超えられたって思えないのはなんでかねぇ」

爺さんならもっとスムーズに、そして正確に的を射抜いていたと思ってしまう。

三本を連続で投げて、四投目で三本同時に投げてみたが、それがわずかにずれてしまったようだ。

棒手裏剣が刺さった杭に近づき、その成果を見てしみじみと思っていると今度は、年季が違うのよ年季がと笑う爺さんの顔が思い浮かび、つい笑ってしまう。

「それじゃぁ、まぁ、まずは年季を超えることから始めますかね」

目標がある方がやりがいはある。

幸いにして今日はレベリングがお休みの日だ。

ここ最近はレベリングやら、素材集めやらのスケジュールや方法についてばかり考えている。

たまにくらいなら余計なことをしてもいいだろう。

一回投げるたびに、体の動きを修正。

大振りに投げているのを自然な所作に隠し、そして不意を打てるような動きを指にしみ込ませ、棒手裏剣の取り出しかた、そして投げるまでの所作、そして連続につなげる所作、さらにはとこだわりを探せば探すほど夢中になっていくのがわかる。

なんて言えばいいのだろうか、そう、昔のレトロゲームを掘り出してやってみたら時間が過ぎてしまうかのような夢中になる気持ち。

ただひたすら棒手裏剣を投げる所作を確認しているだけだというのに、なんでだろう口元がにやける程に楽しいと思い。

朝食ができたとネルが呼びに来るまで、その動きをひたすら磨くのであった。