軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

12 成長期

精霊界に長いこといると色々と変わってくることはある。

クラス7のレベリングがもうすぐ完了するかという頃には、すでに一年以上の月日が経っていた。

そこからさらにもう一段階レベリングをすればさらに時が過ぎるのは当然だ。

それは俺が思っていたよりも時間が経過していることを指す。

ここ最近関節痛がひどいなと悩みつつ、ポーションで誤魔化しているときのことだ。

「?」

「どうしたイングリット?もしかして、どこか顔に食べ残しがついてるか?」

その変化自体は知っていたが、俺自身にも適用されているということには気づけなかった。

今日も今日とて美味しい朝ご飯を作ってくれるイングリットに感謝し、そして食器の後片付けをしていた時にイングリットにジッと見つめられ、もしかして食べ残しでもあるかと顔を触った。

「いえ、そういうわけではありませんが」

しかし、そういうわけでもなくイングリットが言葉を濁すなんて珍しいなと思いつつ、さらにどうしたのかと尋ねると。

「リベルタ様もずいぶん身長が高くなられましたね」

「え?」

俺の身長が伸びたとしみじみと言われた。

「気づいていらっしゃらなかったのですか?」

「・・・・・うん」

その指摘された事に驚いてしまい、イングリットが無表情ながらも不思議そうに首を傾げたことに俺はさらに驚き、つい頷いてしまった。

前世でも子供の頃は身長が伸びたことに一喜一憂していたが、大人になってからは身長のことを気にしたことはなかった。

この体に転生してからは、早く成長しないかなぁと願ってはいたが、最近は忙しすぎて自分のことを気にかけている暇がなかったのだ。

「ネルとアミナの身長が伸びてたのは気づいていたけど」

「ご自分のことには気づいておられなかったと?」

段々と戦いやすくなってきているなぁと思ってはいたが、それよりもモンスターとの戦闘方法や、素材収集、そしてレイニーデビルやアジダハーカとの戦いのために備えることに夢中になりすぎて、自分の身長のことなど気にかけることすらなかった。

流石にネルとアミナががどんどん成長していって、大人の女性になりつつあるのは気づいていたけど。

「そうだなぁ。あ、イングリットも綺麗になったのは気づいてたぞ?」

「っ!?」

「どうした?」

「いえ、何でもございません!」

「そうか?」

「他に何か気づいたことは?」

一瞬、イングリットの動きが止まったような気がするけど、相変わらずの無表情。うーん、わからん。

「他にかぁ。エスメラルダさんも少女から大人の女性に成長した感じでさらに綺麗になってきたなぁ。あとクローディアさんはなんだか若返ったみたいだし。いやぁ、レベルアップの恩恵ってすごいわって思ったな」

「そこまでお気づきになっていたのなら、ご自分自身にも適用される変化だと思われなかったのですか?」

「だって、女の子の成長は早いけど男の成長って遅いだろ?もう少し後になるかなぁと」

「個人差があることとは思いますが、なぜそこでリベルタ様だけ例外だと思われていたのかが不可解です」

成長期って奴だろうか、どんどん身長も伸びて体つきも女性らしくなってきているのだから、さすがに俺でも気づく。

というか、クラス6を超えたあたりから女性陣のビジュアル面に関して補正がかかり始めているのが目に見えてわかった。

ゲームではアバターは一度設定すると課金アイテムとかじゃないと変えることはできなかったし、NPCもそんな変化の兆しはなかった。

だからレベルアップでビジュアル補正がかかるなんてことは知らなかった。

FBOの設定で、高レベル者は老いにくくなるとかは知っていたけど。

「完全に自分が子供だということを忘れてた」

だからと言って、自分の成長期のことをいちいち覚えているかと言えば、そんなの覚えているわけがないだろうとツッコミを入れたくなる。

「ですが、ネル様たちのあの日のことに関しては気づいておられてましたよね?」

「・・・・・何のことやら」

「気を遣って、ダンジョンへの挑戦やアイテム収集の日取りを調整していらっしゃいましたよね」

「・・・・・」

しかし、その反面パーティーメンバーのことに関しては事細かく気には掛けていた。

男は多少放置してもいいかもしれないが、女性は色々と男よりも大変なことがある。

この世界はゲームの世界に似てはいるが、ゲームじゃないのだと何度も認識し直しているのは、そういう人間らしい成長にともなう体の変化の部分があるからだ。

レベルを上げ、常人からかけ離れた身体能力を持っているからと言って、常に絶好調というわけではない。

だれしも体調が悪くなる時がある。

女性は男性よりも定期的にそう言うことが起きるのだと、一緒に組んでいて気づかされたのはイングリットが加入してから割とすぐだ。

流石に俺にもかつて大人で社会人だった頃の記憶がある。

女性のあれこれに関する知識もある程度はある。

そして、この手の話は気づいては欲しいが触れては欲しくないというデリケートな話題であることも理解しているのでノーコメントを貫いた。

さりげなくクローディアには遠まわしで相談をしていたから、ここまで何とかなってきたと言っていい。

男リーダーの女所帯。

こういうところで気を配らないと、不満をため込まれたら後々大変なことになるのはわかっているからな。

手を抜いてはいけないところでは手を抜かないリベルタさんです。

「そこまで気づいていて、自分のことにはお気づきにならないのがリベルタ様らしいと言えばらしいのですが」

「いやぁ」

しかし、ここで悪いところが出てしまいました。

ゲーマーあるあるかもしれないが、本当に必要だと思わないところって意図的じゃなくて無意識で意識から外す。

自分の身長が伸びることは喜ばしいが、あえて意識することかと言えばそういうわけではない。

イングリットが誉めているわけではないのはわかっているが、ちょっと誤魔化すような感じで頭を搔いてしまう。

視線もそらし気味にして、イングリットの呆れたと雰囲気で語る目線と合わせないようにする。

「雷姉妹の方々によく装備の調整や衣服を頂いているのにお気付きになりませんでしたか?」

「新しいことに挑戦するのが楽しいのかなぁと」

「段々と目線が高くなっていることには?」

「ちょっとずつだから気づかなかった」

「そもそも、私とリベルタ様の身長差が埋まってきているのですが」

思い返せば気づける要素はいくらでもあったと淡々とイングリットに指摘されて、悪いことをしていないのに悪いことをしている気分になっていく。

イングリットからしたら本当になんで気づいていなかったのかと確認しているだけだろう。

忙しかった、そんなことを気にしている暇なんてなかった。

そう言ってしまえばそれでおしまいだ。

「ひとまず、姿見の前に参りましょうか」

「はい」

しかし、自分の成長をステータスだけで認識していたことは俺としても思うところがあって、イングリットに手を引かれてこの家にある姿見の前まで行く。

普段は完全に素通りして、視線も向けない家具。

寝癖とか直すときは顔が映る手ごろな鏡だけで済ませているから、体全体を見ることは思えば久しぶりかもしれない。

「本当に伸びてる」

「はい、成長されております」

そこにはイングリットの身長と並ぼうとしている俺の姿があった。

となると最近の関節の痛みは、レベリングを頑張りすぎた過労じゃなくて、成長痛だったか。

「あ!リベルタ君が姿見の前にいるなんて珍しいね」

「そうね。どうかしたの?」

ここまで大きくなってたかぁと、将来的には180センチは欲しいなと前世では叶わなかった願いが、外国人っぽい顔つきだからワンチャンいけるのではとじっくりと自分の姿を見ていると、そこにネルとアミナが通りかかった。

じっくりと姿見を見る俺を不思議そうに見る二人に向き合う。

「いや、身長伸びたなぁと」

「今更?」

「え?もしかしてリベルタ君気づいていなかった?」

何をいまさらと呆れるネルは、今日はダンジョンに入らないということで私服姿だ。

この精霊界にいる間の私服は雷三姉妹のお手製の服を着ている。

俺の前世の日本のファッション知識をどんどん吸収している雷三姉妹の服は、色々と作業を頼んでいるはずなのにどんどん新作が生み出されていく。

毎月ファッションショーでもやるのかと言いたくなるほどの服の量。

その中の一着を選んで着ているネルは、ここ最近はなんというかスポーツ少女みたいな恰好が多い。

前までは村娘みたいな恰好だったのに、最近は動きやすいという機能性を備えつつ見た目も気にしているのか、前世のTVのワイドショーとかで旅行に行く有名人とかタレントが、動きやすさとスタイリッシュさを兼ね備えたファッションスタイルを空港で披露しているみたいな恰好をしている。

幼さが抜け、少女から女性へと羽化し始めている二人。

ネルは俺たち三人の中で今のところ一番身長が高い。

このままいけばすらっとしたモデルのような体型になるかもしれないと期待させるような成長っぷり。

段々と女性らしい体つきになりつつ、それでいてまだ若干幼さを残している。

対してアミナは、身長は伸びているがネルほどではない。

前までは二人に身長差などなかったが、ここに来てネルの方が少しずつだがより身長が伸びている。

ネルが綺麗系に成長しているのであれば、アミナは可愛い系に成長していると言えば良いだろうか。

雷三姉妹のファッションセンスは本当にどこに向かっているのか、

俺があいまいな記憶を掘り起こして語ったファッション雑誌の中身から日本のファッションをサルベージした結果。

アミナにはホルターネックのガーリースタイルが爆誕した。

アミナの腕の翼の関係上、袖の長い服を着ることはできないが、それ以外の部分で可愛らしさと実用性を追求した服装。

フリルのような装飾は少なめだが、要点はしっかりと押さえた可愛らしい服。

本当にあの雷三姉妹の服へのこだわりはすごいよ。

二人とも成長期に入ってどんどんと女性らしくなっているからか、その成長に合わせた新しい服を作るのが楽しいと、そういえば前に言っていたな。

「恥ずかしながら、イングリットに言われて今気づいた」

「ええ!?」

「なんで、気づかないのよ!」

「いやぁ、忙しくてそこら辺を気にしないで過ごしていた結果ですなぁ」

体が成長すれば動かし方も変わるのだが、そこら辺の誤差はほとんど感覚で微調整して対応してしまうから違和感もなかったし。

「本当なのイングリットさん?」

「はい。先ほどご指摘した際に判明いたしました」

照れ隠しで再び頭を掻きながら苦笑すると、信じられないとアミナがイングリットに確認している。

「これくらいだったわよね、リベルタ」

「そんなくらいだっけ?」

「はい、それくらいでした」

「だいぶ違うわよ」

そして、ネルの記憶にある成長前の俺を手で表してくれて、イングリットに確認すると間違っていないとお墨付きをもらった。

約20センチってところか。

「私としては、身長が伸びてしまって少し残念だと思ってしまいましたわ」

「あ、エスメラルダさん」

「聞こえてた?」

「ええ、遠くまではっきりと」

皆が皆、俺が身長が伸びていたことを気づいていないことに驚き、反応しているからどんどん人が集まってくる。

「クローディア様も声が聞こえてきたんですか?」

「元々、エスメラルダさんと話をしていただけですよ」

最終的に姿見の前に、全員集合となった。

それぞれの容姿が、精霊界で過ごしている間に変わった。

それは悪い方向ではなく、良い方向に。

皆が皆、しっかりと成長した結果がこれだと断言できる。

「何の話をしてたの?」

「もうすぐクラス7のレベリングも終わりますわ。そうなりましたらレイニーデビルとの戦いも始まりますのでその事に関しまして少し話しておりましたの」

そしてもうそろそろこの精霊界でのレベリングも限界が来る。

それすなわち、レイニーデビルとの決戦がもう間もなく始まると言うことだ。