軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

10 検証 2

「今回はスクロールと、経験値ブースト缶ね」

「缶が出るときは、何かのアイテムと一緒なのか?」

もうやめて!!氷竜のHPはゼロよ!!というセリフが似合いそうな、抵抗できない氷竜にクローディアは一方的なエリアルコンボを披露して戦闘は終了した。これで三回連続で虹宝箱を出して、ネルに開けてもらえば、中から再びエナジードリンク缶とスクロールが出てきた。

その戦果をもたらしたクローディアの最近のマイブームは、もしかしてエリアルコンボなのだろうかと思うくらいに、彼女は最近空中で戦うことが多い。

俺個人としてもエリアルコンボは見ていて楽しかったので、その気持ちはすっごくわかる。

「これも、私が覚えますの?」

「いや、これはいいです。前衛用の氷スキルなんで」

空中戦を得意とする相手を身動きできないように意識を刈り取り、何もさせずに勝つ。そんなエリアルコンボ技の見本とも言うべき実行例として、クローディアは綺麗に決め切った。

格ゲーとかでそれをやられたら台パン案件だろうなと思いつつ、見ていてちょっと氷竜に同情してしまったのは内緒だ。

かっこよく登場したのに、いきなりサ〇ヤ人が現れて、拳で黙らされてしまったドラ○ンボールのやられキャラみたいにされた氷竜の心情はお通夜状態に違いない。

「クローディアさんは下がってください。次の戦闘はエスメラルダさんの一斉射で片を付けますんで」

「わかりました」

一切の見せ場なし。

一方的に顔面にダメージを通されて、意識が飛んだところをフルボッコにされて終わってしまった。

これでも一応ボスなんだよと言っても説得力の無い結末を皆気にせず、手際よく次の準備に入る。

天拳を解除し弱体化したクローディアは素直に、ゴーレムたちの防御圏内に入る。

ここから彼女はヒーラーとしての役割を担う。

その代わりに、魔力をポーションとマナチャージで回復したエスメラルダ嬢が戻ってきてこれから現れる炎岩竜との戦闘準備に入る。

炎岩竜にとって氷魔法は天敵だ。

属性的相性じゃなくて、温度的な相性の問題でダメージの通りがよくなる。

なにせ、戦闘ギミックで水魔法や氷魔法を使うと表面のマグマの温度が下がって通常攻撃が通るようになるからな。

彼女を使わない理由はない。

効率よくポーションを飲む姿は、歴戦の 猛者(プレイヤー) 感を醸し出している。

ここまでの戦闘所要時間は、ボスが出現するまでの休憩時間を合算して15分。さすがにそれだけで魔力を全回復しきるのは難しい。

マナチャージとポーションを併用して、次の一斉射撃の準備をしたというわけだ。

「攻略時間的には予定通り。このままいけば招福招来の効果が切れる前に全部倒し切れるか?」

スマホどころか時計もないが、体内時計で計った感覚ではここまで瞬殺劇場を展開して、スケジュールを無事に達成できそうだ。

次の炎岩竜から牙毒竜へのインターバルを追加して待機時間が20分はかかる。

そこに戦闘時間を加味して、それでも合計30分はかからないということになる。

ペース配分的に言えば、一時間以内にこのボスラッシュダンジョンを攻略できると見込んでいるが、問題は最後の牙毒竜。

一番時間がかかると踏んでいるモンスターで、このボスラッシュダンジョンの最後の関門。

「リベルタ様」

「うん、時間か」

宝箱の中身を回収し終わり、そしてエスメラルダ嬢の魔法の準備が終わったタイミングで、魔法陣が現れる。

イングリットの声掛けで、魔法陣の方を見ればそこから熱気があふれ出てきた。

出現の仕方は鋼竜と同じ。違いがあるのはその魔法陣から熱気の正体であるマグマも一緒に溢れ出てきていること。

マグマの中を泳いできたのか、現れたのは手足がなく、蛇に背びれと尾びれを足したような見た目の竜。

鱗の表面がマグマのように赤く輝き、その鱗そのものが熱を持っていると物語っている。

そして大きく息を吸い込み、咆哮をあげようとした瞬間。

「アイスカノン!12連発ですわ!!」

先手必勝とばかりにエスメラルダ嬢の氷の砲撃が、顔面に全弾ヒット。

悲しいかな、これを開幕で浴びたらもう相手はなす術がないんだよね。

「終わったわ」

「終わりましたね」

「終わってしまいましたわ」

最初の2発でマグマの防御がはがされて、防御力が一気に下がってそこに追撃のアイスカノン10発。

全てがクリティカルダメージ扱いになり、出オチなんてひどいと言う間もなく瞬殺された。

「ボス、なのよね?」

「ボスだけど、こいつが厄介なのってマグマの中を縦横無尽に移動できるっていう点だけだからなぁ」

そのあっけなさに、ネル、イングリット、そして魔法を撃ち終わったエスメラルダ嬢が呆気に取られている。

炎岩竜。

こいつが強いのはあくまでフィールド補正というやつだ。マグマの中というプレイヤーが手出しできないエリアを移動し、それを鎧に、そして盾にし、時に武器として活用するので、そのエリアで相手にすると非常に厄介な存在ではあるのだが。

そのフィールドに頼りきりの戦闘スタイルは、この闘技場では一切役に立たない。

「虹の宝箱も出なかったわね」

「金が三つ出てるだけまだましだな」

わざわざエスメラルダ嬢の魔法一斉射で倒す必要があったかと思われるような相手かもしれないが、ブレスとか魔法とか使われると被害が出てしまうので瞬殺した方が利口なのだ。

生憎と検証用の虹の宝箱が出なかったので、ここもサクッと開けてしまう。

スクロールは出ず、素材系統のアイテムがずらりと出る。

「この素材を使うと、冬山とか行くときに便利な装備ができるんだよなぁ」

「今はいらないわよね」

「倉庫の中に放り込んでおくか」

性能は悪くない。悪くはないんだが使いどころが難しい素材故に倉庫に放置が確定してしまった。

ひとまずはマジックバッグの中に放り込んで、次の戦いに備える。

「さて、本番と行こうか」

そしてボスラッシュで残すのは一体のみ。

牙毒竜。

ヒュドラダンジョンのボスであり、戦闘スタイル的にアジダハーカに最も近い竜種であると言っていい。

「イングリット、頼む」

「かしこまりました。僭越ながら、先鋒を務めさせていただきます」

そんなドラゴンに戦いを挑むというのに、彼女の装備は普段使っている箒ではなく。

「雷竜の素材で作ったモップ・・・・・お父様がご覧になったら顎が外れるくらいに驚きそうですわね」

モップだ。

イングリットのスキルと相性のいい、第二の武器。

槍術のパッシブスキルを獲得し、サブウェポンとして活用する武装だ。

エスメラルダ嬢の言うとおり、すべてのパーツを雷竜の素材で作った特注品。

柄は雷竜の骨で、モップの先端は鱗と逆鱗の組み合わせ。そして掃除する部分は雷竜のたてがみと貴族が見たら貴重で高価な素材で何やっているんだと憤死しそうな一品だ。

「だって、デバフ振りまくモンスターだとこれがベストなんですよ」

「実際に見てみないと誰も信用しないわよ」

一見ふざけているような武装だが、これがいたって大真面目な竜特効武器なんだよ。

「皆さま、お話はそろそろ終わりにしてください。敵が来ます」

イングリットの構えたモップに、緊張感が霧散しかけている途中でインターバルは終了のようだ。

最後のボスの登場は、地面ではなく空中に壁面を出現させるように魔法陣が展開され、そこから瘴気が漏れ出すように紫色の空気がこぼれてくる。

「エアクリーン、展開します」

その瘴気自体がすでに毒。

何もせずに身に浴びていたら毒に侵され、大変なことになっていた。

イングリットのエアクリーンで瘴気は防がれ、綺麗な円で紫の空気が割かれる光景は異様の一言。

「うわ」

そしてその瘴気を纏う本体が現れた時に、ネルがドン引きだと言わんばかりの声をあげる。

露出する感覚器官は全て毒によって退化し、ヤツメウナギのような口を持った首を五本うねらせて登場する姿は見る人が見れば鳥肌が立っただろう。

鱗という概念が無くなり、皮膚の表面から紫色の液体を常に垂れ流している。

毒の汗腺と言えばいいだろう。

全長30メートル、全高10メートル弱。

四肢はなく、ナメクジのような胴体とその後方に伸びる長い触手のような尾。

「参ります」

牙毒竜が魔法陣から姿を現したと同時に、イングリットが駆け出し。

「俺たちも行くぞ!!」

その背を追って俺たちも続く。

「アミナの注目はこいつには効かない!!ヘイトはこっちに向くから気を付けろ!!」

牙毒竜の倒し方は、イングリットを軸とした超近接戦だ。

まずはイングリットを牙毒竜のすぐそばに配置し、エアクリーンで覆う。

体の一部はスキルの効果範囲から出てしまうが、それでもこいつが放出する毒が周囲に散布されることがほぼ無くなる。

目も耳も鼻も、外の情報を感じ取る感覚が毒によってなくなったこいつが敵を感じ取る方法は鋭敏な触覚だ。

空気の振動、外気の熱、触れた感覚、その全てを事細かく感じ取り俺たちの位置を正確に把握してくる。

アミナの歌の良し悪しなどわかるはずもないから、惹きつけることもできないというか、ヘイトを引き付ける系のスキルが一切効かないんだよこいつ。

ヘイト管理が難しくて、事故を起こしやすいモンスターとして有名な牙毒竜。

そんなモンスターの対応策、いや、天敵と言える存在が。

「清掃、開始します」

メイド服姿で雷竜のモップなんてとんでもない物を振り回すイングリットだ。

エアクリーンを発動させ、モップを振るい牙毒竜の表面をふき取る。

普通ならだからなに?となるような一閃だが、イングリットが拭き取った個所だけではなく、モップじゃ拭きとれないような広範囲で毒が拭き取られた。

清掃スキルは発動させるとその効果範囲内の汚れを清掃行為で綺麗にするスキル。

もちろんスキルレベルが上がれば上がるほど汚れは落ちやすくなるし、物理的に無理な広範囲で汚れを落としてくれるようになる。

その効果でモップの先端には汚れをふき取ったと言わんばかりに紫色の物体が付着している。

「クリーン」

その先端に対して、洗浄を施す魔法を発動させる。

クリーンという魔法スキルは発動させると効果範囲内の汚れを消す効果を持っている。モップを一々バケツで洗浄なんてことができないからそれの代用だ。

毒という汚れを落とし切り、そして仕上げに浄化と消毒も施したらこれでもう一度ふき取る準備ができる。

攻撃というよりは、掃除という行為ゆえにヘイトも溜まりにくい。

ゆえに天敵。

「毒が無ければ!!」

「ええい!!」

自分の防御、そして攻撃の根幹を封じ込めるような存在がいて、さらに毒を気にせず全力で攻撃してくる上に、瘴気を広げることも叶わない。

となると、毒という特殊攻撃を仕掛けられない以上物理でヤツメウナギのような口を使い噛みついてくるほかない。

「首狩り!」

ハルバードと鎌槍の攻撃で、俺とネルにヘイトを向けて五つの首で攻撃を仕掛けてくる。

その間もせっせとイングリットは牙毒竜の体を丸洗いしていく。

口の中はさすがに洗浄できないから噛みつかれたら終わりなのだが、毒という特殊攻撃が無ければ残された攻撃手段である首の数が多くても問題ない。

むしろ躱し際に反撃して一つの首を切り落とすなんてこともできる。

こいつの血液にも毒があるが、それもイングリットが瞬く間に掃除していく。

清掃スキルはリキャスト時間がほぼゼロ、その上魔力消費もかなり少ないという生活のお助けスキル。

だが、鍛え上げるとこういう毒系統の敵の特効キャラに早変わり。

「断空戦斧!!」

俺とネルの攻撃にさらされている段階で、向けるべきヘイトを見誤った牙毒竜は本来仕留めるべき敵を見つけることなく、その命を散らして逝った。

「さぁてと、あとはこれとレベリングを繰り返すだけかぁ」

そして苦労が始まるのであった。