軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

22 元素の魔王

FBOっていうゲームの魔王の扱いについては本当によくわからなくなる時がある。

ジョブ一覧を作った某攻略サイトを見れば、その異質さが一目でわかる。

剣士、魔法使い、戦士、僧侶、聖女に勇者とまぁ、ここら辺はわかる。

王道でなおかつ他のゲームでもよく見るジョブだ。

他にも鍛冶師に細工師、料理人など生産職の部類もまだわかる。

ここら辺も生産職をしているのならよく見るジョブだ。

だけど、魔王はなかなか他のゲームでお目にかかるジョブではない。

魔王と言えば他のゲームでは悪の親玉、ラスボス的ポジションの地位を確立しているけど、FBOの基となるこの世界においては魔王は魔法を使うジョブの頂点的な位置づけになっている。

実際にこの世界には知性をもっていて世界を侵略するようなポジションの人外は邪神くらいしかいない。

この世界のモンスターは全て人語を解さず、人を見れば本能的に襲い掛かり、使役するには特殊なスキルがないといけないという、人と良好な関係を作るのは難しい存在としてしかいない。

その親玉は全部ボスという括りでまとめられているから、魔王という単語をジョブ名としてしかこの世界の住人は知らないのかもしれない。

「魔王の取得前提条件は四つあります。一つ魔術を最高位の魔神術にあげること」

「上がってますわ!!」

「二つ、攻撃用防御用問わずアクティブ魔法スキルを四つ以上持っていること」

「もっていますわ!!」

「三つ、所持している魔法系統のスキルクラスの合計値が四十を超えていること」

「持っているスキルは全て限界までレベルアップしておりますわ!!」

「四つ、魔力のステータス値が合計で三百を超えていること」

「超えていますわ!!」

そもそもが魔王のジョブを獲得するために要求されるステータスが高すぎる上に、スキル要求値も高すぎる。

『エスメラルダ・エーデルガルド クラス3/レベル1

称号 探究者

基礎ステータス

体力80 魔力324

BP 0

EXBP 0

スキル7/スキルスロット9

魔神術 クラス10/レベル100

杖術 クラス10/レベル100

ライトニングレイン クラス10/レベル100

ブリザードウェーブ クラス10/レベル100

ショックボルト クラス10/レベル100

アイスウォール クラス10/レベル100

マジックストック クラス8/レベル33』

それ専用に組まない限り、取れても賢者までで止まる。

エスメラルダ嬢の場合は魔法職を取ることが決まっていたからこそ、あらかじめスキル構成も魔法系統専門で組んでいる。

ステータスはネルの逆バージョンの魔力特化型。

杖は魔法スキルを補助する効果を乗せやすい装備で、それを増幅する意味合いを持って杖術を取得。

アイスウォールは氷の壁を作り出す、魔法と物理の両面で防御できる使い勝手のいい防御スキル。

ショックボルトは威力はそこそこ、射程距離は短いが、近距離及び中距離戦で速射と連射が利く雷系統の魔法攻撃スキルだ。

さらに称号である探究者は魔法スキルの魔力消費量を抑えてくれる。

消費低下量は現状五パーセントだけど、この小さな消費量低下が侮れない。

「以上四つの前提条件を満たしつつ、自分よりも格上のダンジョンを攻略する。これで魔王のジョブ獲得条件は達成できます」

「クローディア様と同じようにソロ限定というわけではありませんわよね?」

「そこが注意点かつおもしろいところで、仲間は四人まで許可されているんですよ」

そんな魔王への道のりを進むエスメラルダ嬢のジョブ獲得条件での注意点で、ダンジョンを攻略する際にはパーティーは4人編成以下が義務付けられている。

魔王様にはおなじみの配下、四天王にちなんだパーティー編成だろうか。

クローディアがソロで攻略しているのはある意味で都合がいいと言える。

ただ、うちのパーティー唯一のヒーラーが抜けているのは注意が必要だ。

やろうと思えば今のエスメラルダ嬢の装備とスキルでも格上のダンジョンをソロ攻略することも可能だ。

しかしそれには綿密に計算された魔法運用のマネジメントと臨機応変に対応できる判断力が求められるので、そこはおいおいということで今回は使える枠は目一杯に使う。

「なので、俺とネル、アミナ、イングリットが全力でサポートします」

「皆さん、ご協力感謝いたしますわ」

「私もみんなに手伝ってもらってたし、エスメラルダさんのジョブを獲得するのを手伝うのは当然ね」

「僕の時はもっとたくさんの人が手伝ってくれてたし」

「私は言わずもがなです」

精霊王の前でライブをまだしていない俺たちが、この泡沫のダンジョンを使える回数は三回。

一回はクローディアのダンジョンで使ってしまったから、残りは二回。

クローディアのことだから一度で攻略してくれると思っているので、残りの二回でエスメラルダ嬢に魔王のジョブと元素の二つ名まで手に入れたい。

魔法使いは基本的に属性に縛られる。

一応俺のマジックエッジのような無属性の魔法スキルも存在するけど、あれはあれで相手の魔力耐性が高かったりすると、致命的なほどダメージが目減りする。

俺の心臓打ちや首狩りのように防御力無視攻撃を基軸にするのならまだいいけど、普通に使うとなると相手のステータス次第ではマメ鉄砲レベルのダメージ判定になり使えない魔法スキルになってしまう。

「それで、リベルタ。これから挑むダンジョンはどのようなダンジョンですの?」

「物理特化の脳筋モンスターが跋扈する、魔力防御が紙装甲なダンジョンです」

だけど、ここで元素の二つ名を得ると、すべての属性に等倍ダメージを与えることができる、この二つ名でしか得られない元素魔法というのを覚えることができる。

え?等倍じゃあまり意味がなくない?と思うかもしれないけど、この元素魔法の相手の耐性を無視してすべて等倍のダメージを与えるというスキルは冷静に考えるとかなりやばい。

なにせこの魔法、全属性に耐性をもっているレイニーデビル相手ですら、その耐性を無視して等倍ダメージの魔法スキルダメージを与えるんだよ。

とにかく魔法に耐性ありますっていうモンスター相手でも、純粋な魔力ステータス値の差による防御力以外で威力が減衰しないんだよ。

そして大概の魔法使いってステータスを魔力寄りのステータスにしているから、そうそう魔力ステータスで負けることなんてないんだよね。

となるとどうなるか、元素魔法を取得するだけでどんな敵にも一定のダメージを与えられるようになるんだよ。

そして元素の魔王だけが覚えることができるユニーク魔法。

『オリジンコメット』

これがかなりヤバイ。

広範囲に彗星を落とすという、消費魔力もやばいが威力も耐性無視の等倍ダメージと言うことで半端ない。パッシブスキルで強化していると広範囲殲滅魔法に早変わりする攻撃魔法だ。

「相手はサイクロプス。物理に特化したモンスターですよ」

それを手に入れるために相手にするのは一つ目の巨人。

強さはクラス5、周囲の取り巻きにクラス4のモンスターであるトロールを引き連れている。

このモンスターのステータスは体力九対魔力一の驚異の脳筋ステータス。

物理で倒すのはかなり苦労するモンスターだが、裏を返すと魔力に属した攻撃だとかなり弱い。

属性は地属性で地属性に耐性があるのだが、それもあってないような物。

あまりにも魔力耐性が低すぎて、属性相性も何もない。

「ネルとイングリットは戦う時には注意してくれ。相手の攻撃手段はトロールはこん棒、サイクロプスは金棒を使うからそれに準じたスキル構成になっている」

物理特化のステータスにスキル構成。

せっせと花冠を作りつつ、サイクロプスとトロールの注意点を上げていく。

「トロールは鈍足だけど、HPが高くて防御力も高い。力もあるから基本的に二人は足止めに専念してくれ。相手の知能はそこまで高くないから行動パターンは叩く、振り払う、叫ぶの三パターン。武器を失うと手での攻撃が来るから基本的には武器は手放させないで。武器を持っているとその武器でしか攻撃しないから」

花冠はさっきよりの少し大きめ、黄土色の花をメインに茎が太い花を織り込み、これでサイクロプスのダンジョンを生み出すための花冠はできる。

「って、どうしたアミナ。俺の手元をじっと見て」

「……リベルタ君、もしかして花冠作るの好きなの?こんなに早く作れるってことはいっぱい作ってたってことだよね?」

その作業工程の速さから俺が花冠が好きだと勘違いされた。

「好きか嫌いかで言うなら、好きだよ。ただ、これは作りまくっているから手早く作れるだけ。好きな理由もこの花冠のおかげでダンジョンが作れるからだし」

芸術性とか、花冠作りが好きだからという理由で手早く作れるのではなく。

ここ泡沫のダンジョンで色々と効率的に素材を集めるためには、花冠を作る速さを求める必要があったから自然と早くなっただけの話。

「そうなの?」

「そうなの!」

けっして花冠作りが趣味なわけではない。

「それにしては、綺麗に作りますわね」

「きれいに作った方が狙ったダンジョンが安定して出るので」

「細かいバランスもとれてるわよね」

「それも同じ理由」

「ですが、先ほど作った花冠とデザインが異なりますね」

「同じのばかり作ってたら飽きるから、十種類くらいのデザインをローテーションしてるな」

それが女性の目から見ても綺麗に作られていて、おまけにデザインも良くて、さらに種類が豊富だからと言って俺の趣味というわけではない。

必要だから覚えただけの技術だ。

「……趣味じゃないからな?」

「まぁ、リベルタだからできてもおかしくはないわ」

「確かに」

「リベルタ様ですから」

「刺繍とかもできそうですわ」

「今作ってるアミナたちの衣装にふんだんに使ってますが?」

「「「「・・・・・」」」」

だって、FBOのアイテムって良質なアイテムの方が性能がいいんだよ。

シンプルなデザインの衣服とかも悪くはないんだけど、細かいところにこだわった衣服の方が性能が上になる。

無課金装備みたいなものでも強い物は作れるけど、そういうシンプルな装備ほど素材にこだわらないといけないんだよ。

だからその過程で刺繍も覚えた。

一回ネタで、とんでもない刺繍アートを使った服を作ったことがあるけど、完成させるのに一か月以上かかったからな。

二度とやりたくはない。

できるとは思っていたけど、本当にできるんだという視線を女性陣から浴びている間に花冠は完成して、そしてさっきと同じように泡に手を伸ばしてサイクロプスの姿を象どる。

「はいはい、この話は後でね。ダンジョン作るからみんな準備して!」

「「はーい」」

「いつでもよろしくてよ」

「かしこまりました」

自分でも多芸だとは思うよ。

ここでさらに人形も作れると言ったらどういうリアクションが返ってくるだろうか?機会があればやってみるかなどと思いつつダンジョンを作り出す。

「ジョブ獲得のためには六割以上はエスメラルダさんの攻撃で敵を倒さないといけない。なんなら確実を期すなら九割はエスメラルダさんの攻撃で倒さないといけないから俺たちはサポートに徹する。簡単に倒すことができるとはいえ、相手のタフさは折り紙付き、集中して攻略するぞ!」

意識を戦闘モードに切り替えて、皆を鼓舞する。

背負っていた鎌槍を手にし一番槍だとダンジョンに入り込む。

そして踏み込んだ先に広がるのは大きな渓谷。

川と谷、そして森と見通しの悪いフィールドが俺たちの前に立ちはだかる。

されど、モンスターを見つけるのは簡単だ。

ここはサイクロプスのダンジョン。

敵は全て大型のモンスター。

ドスンドスンとあちらこちらから大きな足音が響き、そしてさっそくぬっと醜い容貌の巨人が一体現れるのであった。