軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

5 ドロップギミック

「やっと倒し終わったぁ!!」

「疲れたわ。どれだけいたのよ」

「・・・・・」

「エスメラルダ様大丈夫ですか?」

敵を倒し終えるまでにかかった時間はおおよそ一時間。

それまでひっきりなしにモンスターたちが攻めてきていたので、ずっと迎撃していたことになる。

アミナは歓声を上げ、精霊たちの操るアングラーも踊るような仕草で喜びを表している。ネルはモンスターの数に少し疲労を感じてかため息を吐いている。

そんな二人に対して、無言で口元を覆うエスメラルダ嬢の背中を支えるイングリット。

「イングリット、エスメラルダさんを馬車の中で休ませておいて。水筒の中に水があるから気分が悪くなりそうだったら飲ませておけば大丈夫だと思う。たぶんだけどポーションの飲みすぎが原因だから」

「かしこまりました」

殲滅効率を上げるためとはいえ、魔力補充用のポーションのがぶ飲みはいかんよ。

初の遠征と言うことで気合が入っているのはわかるが、用法用量は守らないとな

「なかなかの戦利品ですね。ヘルメットボアとグレイハウンドの毛皮。スロウモンキーのこれはなんでしょう?」

「石っころに見えますけど、それ一応鉄鉱石ですよ。いくつか集めれば鉄のインゴットになります」

「道理で、重みがあるわけです」

介抱はイングリットに任せて俺たちはせっせと魔石や毛皮と謂ったドロップ品を回収していく。

モンスターによってドロップ品が異なるから回収して仕分けるのがなかなか大変だ。

「そう言えばミミックアーマーはいなかったね。なんでだろ?」

「ポップする数が多くないんだよ。ステータス的には周囲のモンスターに負けない程度の強さはあるけど数で押し切られたら倒されるからな」

「あー、だから見なかったんだ」

マダルダに生息するモンスターで今回姿を現さなかったのは二種類。

一種はアミナの言うミミックアーマー。

個体数が少ない上に、他のモンスターに数で囲まれてしまえば倒されてしまうモンスターだ。

「ミミックアーマーを狩る手順はさっきのメモリーストーンを集めて、マダルダの街の中の他のモンスターを掃討して、それでようやくスタートってわけだ。あとは、スポットトンネラーの罠に嵌っていないのを祈るくらいだな」

特にミミックアーマーは足元がおろそかで、今回出現しなかったもう一種のモンスターである、地面の下に隠れているスポットトンネラーの落とし穴に簡単に落ちて、そこで喰われるというパターンもある。

ただでさえ少ない個体数を減らされると探すのが大変になる。

「この後はどうするの?」

「ひとまずさっきみたいにダウジングでメモリーストーンを集めながらミミックアーマー探しだな」

「モンスターが出てくるスポットを探さないのですか?」

「この街全体がミミックアーマーの湧きスポットなので、すでに出ている個体を探した方が早いんですよ」

エリアの広大さに比べて、モンスターの数が少ない。

古代の武具集めのクエストで何が大変かと言えば、一番はドロップ率の低さと答えるけど、次点でミミックアーマーを探すことと答えることもできる。

「僕が歌って呼び寄せる?」

「それも手ではあるが、他のモンスターも一緒に引き寄せちゃうのが欠点なんだよな。ミミックアーマーから古代の武具をドロップさせるには少し手順が必要でな、他のモンスターが介入すると邪魔なんだよ」

アミナの歌はモンスターの集団を殲滅するときは便利だけど、特定のモンスターを引き寄せる目的には向いていない。

なので今回は別の方法でどうにかするしかない。

すなわち。

「できればミミックアーマーだけの戦闘が理想だな」

地道にモンスターを探すしかないということだ。

「アミナはここで精霊たちと馬車の護衛を頼めるか?」

「まかせて!」

「イングリットとエスメラルダさんは馬車を起点とした拠点設営を頼む。俺とネル、それとクローディアさんでミミックアーマーを探しながらメモリーストーンを取りに行く」

ゴーレムを召喚したのなら、ここに拠点を設営した方が良いだろう。

どっちにしろ三日はここに滞在する予定だ。

モンスターの集団を一度掃討すれば、遺跡の外から侵入してくるモンスターが溜まるまで、しばらくの間は襲撃を回避できる。

軍用の馬車ということで、野営用の設備は充実している。

「かしこまりました」

「まかされました・・・・・わ」

その設営をイングリットとエスメラルダ嬢に任せ。

太陽の位置を確認するために空を見上げる。

「日没までは三時間くらいかね」

日没までの時間はそこまであるわけではないが、メモリーストーンを数個確保し、ミミックアーマーを二体くらい見つけられれば御の字か。

「とりあえずメモリーストーンのスポットまで移動しよう」

「わかったわ」

「わかりました」

ネルとクローディアを引き連れその場から離れる。

マダルダは何度も歩いたことがあるから、ゲームとは細部で違って多少わからないところがあっても迷う心配はない。

「三つ出たわ!!」

「やっぱり、ネルにダウジングを任せて正解だったか」

「彼女の幸運はいったいどこからきているのでしょうね」

「珍しいですか?」

「珍しいを通り越して奇跡だと思いますね」

一回やり方を見せただけで、ネルは手順を覚えあっさりと一か所のスポットから出る最大数を引き当てている。

その光景を見て、たまに出会う幸運であれば理解も納得もできるが、通常がこれだと世界中を旅したことのあるクローディアをもってしても見たことがないようだ。

まぁ、FBOをプレイし続けた俺でも見たことのない驚異の幸運だから無理もないと思う。

「神の祝福でも受けているのではないかと思いますが・・・・・」

「ステータスにはそんな表記がないんですよねぇ」

「そこが不思議ですね。祝福がある者はその祝福の証となるスキルが与えられるのですが」

これがギフテッドと呼ばれる初期からユニークスキルを持っているキャラであるのなら理解できるが、ネルにそんなスキルはなかった

「ネル、一つ聞いていいか?」

「なに?」

「ネルって昔から運が良かったのか?くじ引きとかで一等を毎回引いていたとか」

「お祭りのくじ引きよね?やったことないのよね。お父さんが止めて、食べ物のほうが多かったわ」

「ジンクさんが?」

「ええ、お店の人がかわいそうだから止めておくようにって」

「「……」」

もしかしてジンクさんはネルの幸運に関して何か知っている?

いや、それだったら俺に何か言うと思うし。

何かあると思いつつも何であるかはわからない。

「んー、帰ったらジンクさんのお店に行くか。次回のライブのグッズの発注もしないといけないし」

知らないままというのはなんだか気持ち悪いので、ネルの実家には暇を見つけて行くとして。

「ねぇねぇ、リベルタあれ」

「あ、ミミックアーマーだな」

遠目にゆっくりと動く鎧を発見。

手には錆びた剣を抜き身で持っている状態だ。

「良し、見つけたのならいい機会だ。ここで一つミミックアーマーのドロップギミックを説明するぞ」

「はーい!」

「わかりました」

ミミックアーマーは普通に倒すとドロップ品が魔石だけになるという特殊なモンスターだ。

ではどうすれば、古代の武具を落とすようになるか。

メモリーストーンを使えばと説明したが、ハニワの時のようにスリングショットにセットしてぶつければいいというわけではない。

「ギミックと言ってもそう難しい物じゃないぞ。まずはこっちに引き寄せるために手ごろな石を持ちます」

「うん」

「それを投げつけて!!」

まずは遠くにいるミミックアーマーを引き寄せて戦闘を始める。

適当に拾った石をオーバースローで投げつけ、ミミックアーマーの頭を狙う。

「敵をこっちに引き寄せる!」

「それは何故ですか?」

「向こうまで走って追いかけるのが面倒だからというわけじゃなく、向こうがこっちに向かってきている間に準備ができるからですよ」

投げた石は猛スピードでまっすぐにミミックアーマーにめがけて飛んでいく。

今の俺の肩ならメジャーリーグでも通用するような剛速球を投げられるかもしれないな。

寸分たがわず、狙い通りの場所に飛んでいきカコーンと良い音が響いた。

後頭部に受けた攻撃を認識したミミックアーマーはこっちに振り向き、ガシャガシャと鎧の音を響かせながら駆け寄ってくる。

「つぎにメモリーストーンを用意します」

「はい」

接敵まで三十秒ほどだろうか。

その間にさっきネルが発掘してくれたメモリーストーンを一つ掴み。

「そして、魔力を込め呪文を唱えます」

「「呪文?」」

「そう、呪文」

掌の上に乗せて、じっくりと見る。

正当な手順でNPCに関わっていれば、誰でも手に入れることができる呪文。

ギミックとしては割とベタなものかもしれないが、中二病を発症し沈静化した人からしたら少々恥ずかしい行為だ

「過去の記憶は今ここに模倣と交わり顕現する」

自然に生まれるにはメモリーストーンという存在は異質だ。

記憶が物質化するという現象がまずおかしい。

その異質さを表すかのように、僅か一文の呪文を紡ぐだけでメモリーストーンの物質化がほどけ光の粒になる。

「射程距離が僅か三メートルしかないけど、触れることができれば十分なんだよね」

その光の粒は、ミミックアーマーの方に流れていきその体にしみ込んでいく。

「これは」

「錆が落ちていく?」

「正確には過去を取り戻していると言った方が良いかな」

光は錆だらけのミミックアーマーの鎧を新品同様にしてみせる。

「過去を取り戻す?」

「ミミックアーマーがそもそも何故鎧姿なのかってことの理由にもなるんだけど、説明すると長くなるから目の前のやつを倒してからでいいか?」

「そうですね、様子から見るに少し強くなっているようですので」

さしずめ、ミミックアーマー(真)と言ったところか。

これでようやく古代の武具をドロップするようになる。

「俺とクローディアさんでネルのサポート。とどめの一撃は頼むぞネル」

「わかったわ」

こういう変化がなぜ起こるか。

マダルダ関連のクエストを進めると、ゲームのストーリーパートでミミックアーマーの話が出てくる。

そのNPCは研究者であり、滅んだ過去の都に現れるモンスターを研究している。

そのキャラ曰く、最初は亡霊だと思われていたミミックアーマーであるが、奴らは残留思念に引き寄せられその思念を模倣して自身の形を形成するモンスターだということ。

それを検証した研究資料を見せられ、そしてミミックアーマーの模倣するその残留思念は古代のマダルダで生きていた人たちのモノだと言われている。

アンデッドと違うのは、ミミックアーマーというモンスターが古代マダルダ人の残留思念を吸収してその記憶を模倣していると謂うこと。

なので死者の魂はあくまでデータ扱い。

古代の記憶というデータを模倣して姿かたちを取っているモンスター、それがミミックアーマーという存在だ。

「錆が落ちた分、動きは良くなるが。スキルを見せなければどうってことはない!!」

襲い掛かってきた際に装備しているのはオーソドックスな剣。

錆が落ち、そして鋭くなった動きに合わせて槍で牽制し、剣と槍の打ち合いに持ち込む。

ミミックアーマーの模倣スキルは一度でも見たスキルをコピーするので通常攻撃だけならスキルを模倣される心配はない。

テクニックで勝れば、普通に押し込めるし。

「崩拳!」

不意打ちで攻撃を叩き込み、体勢を崩し。

「首狩り」

さらに足首を刈って動きを鈍らし。

「十ゼニ分のゴールドスマッシュ!!」

防御力を削った状態で、ネルの攻撃を脳天から打ち込めば多少ステータスをあげた程度のミミックアーマーでは持つはずもなく。

一刀両断され、そのまま黒い灰となる。

「お」

「出ましたね」

「やった!」

そして黒い灰の中から煤けた胸当てが現れる。

全身金属製の鎧であったはずなのに、現れたのは古びた皮の胸当て。

装備と違うというツッコミはこの際置いておいて。

こうして初めての古代の武具をドロップさせた。

そしてラストアタックはネル。

これは期待に胸が膨らみますな。