軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

4 新スタイル

アングラーが増えている理由、それは財力に物を言わせたからだ。

さすがの変人エンジニアたちも目の前に金貨の山を積まれたら意欲的に働いてくれましたよ。

そしてアミナが精霊と契約している理由。

ライブの後で熱烈なファンである精霊たちと交流という名の遊びをして、フィーリング的に相性が良いと思った小精霊たちと契約したからだ。

多脚型ゴーレムが、大きな盾と金棒を装備して現れるのは迫力があり、そこに精霊たちが入り込むとゴーレムに意志が宿り動き出す。

「みんな守ってね!!」

防衛戦力が足りないのなら、防衛戦力を増やせばいいというシンプルな発想を可能にするのが多忙型アイドルビルド。

『『『オーーーーー!!』』』

本来は小精霊たちにはそこまでの強さはない。

だけど、ゴーレムという外殻を纏うことによって戦闘能力をカバーすることができる。小精霊たちにとっては巨大ロボットを操縦するような楽しさがある。

ごついゴーレムが妙に可愛らしく動くのはコミカルに映るが、それはそれで愛嬌としておこう。

馬車の上でアミナがマイクスタンド型の杖を構える。

歌を歌えば広範囲のモンスターがここに引き寄せられる。

だけど、さすがに街の外のモンスターを引き寄せるほどの効果はない。

演奏はない。

だけど、アカペラであっても美しいアミナの歌が響き渡り。

いつも通り俺たちが強化されるのだが、それに加えてゴーレムの中にいるアミナと相性の良い契約精霊たちが、俺たち以上に強化されることによってゴーレムも強化される。

精霊使いの強いところは、精霊という存在が生物であると同時に魔力的存在であるという点だ。

彼らは武器や機械などに憑依することで自身の属性をその対象に付与し、操ることも強化することもできる性質を持つ。

実体があり、飲食ができ、ライブを楽しんだり雄たけびを上げるほど感情の起伏もある。

その性質上扱いづらいという面から精霊使いはFBOでの人気が薄かった。

だけど、弱いとは口が裂けても言えない存在だ。

ゴーレムが馬車を囲む。

美しく、同時に戦意を高揚する歌を歌うアミナを守護するように、やる気に満ちたゴーレムたちは迫りくるモンスターたちと向き合い。

目を光らせ。

ビームを発射した。

そう、目からビームを発射したのだ。

正確に言えば魔力を変換し、光線にした魔法攻撃のような物だ。

属性はそれぞれ風、水、光と分かれるが、威力は中々。

さすがにクラス4のモンスターたちの大集団を一掃するには威力が足りないが、それでもあのFBO屈指のマッドエンジニアたちの選り抜きのパーツを組み上げたゴーレムだ。

先頭のモンスター集団を灰に変えるくらいの威力はある。

「これは私も負けてられませんわね!」

その光景に触発されエスメラルダ嬢のやる気も上がる。

モンスターとの距離がある分、遠距離範囲攻撃で先制できるのは当然だ。

ヘイトを一身に惹きつけるアミナにモンスターたちの意識が集中する最中、意識外からの遠距離攻撃を避けられるモンスターは少ない。

「新しい私のスキルをお見せしますわ!!」

再育成にあたって、エスメラルダ嬢にはエーデルガルド公爵家の宝物庫にあるスキルスクロールをふんだんに使わせてもらった。

さすがに歴史ある公爵家、スキルショップにないスキルスクロールを抱え込んでいたわ。

エスメラルダ嬢のレベルはまだクラス3のレベル1。

ジョブを獲得していないからクラス4相手の戦闘は危険かつ能力的に足りないと思われるかも知れないが、ここでの戦闘はスキル熟練度を上げるにはうってつけなのだ。

敵の数が多いし、何より常時大量のモンスターをアミナが連続的に引き寄せてくれる。

何と言っても他の冒険者が寄り付かないというのが一番いい。

「ブリザードウェーブ!!!」

エスメラルダ嬢が放った魔法は炎属性ではなく氷属性。

攻撃力自体はそこまで高い魔法ではないが、猛吹雪を作り出し周囲の気温を短時間とはいえ氷点下数十度まで下げるという広範囲魔法。

一面だけとはいえ、モンスターたちの体に霜が立ち、吐息が白くなり凍えるように身震いをして動きを止めるモンスターが現れる。

モンスター集団の動きが鈍り、こっちに迫る速度が遅くなる。

「続けていきますわよ!!ライトニングレイン!!」

そこに間髪入れずに雷の雨を降らせる。

稲光で視界が一瞬で真っ白になるほどの濃密な雷の雨。

その範囲にいるモンスターはもれなく雷を浴びることとなり、黒い灰が雷の中で舞うのが見える。

通常は詠唱と呼ばれるスキル発動時間が必要なため、範囲魔法の連続使用なんて不可能なことなのだ。

だけど、俺がエスメラルダ嬢に提案したスキルビルドであればそれができる。

「ふぅ、かなり数が減りましたわね。ですが、次の準備に入りますので少々お時間を頂きますわ」

「了解。反対側はゴーレムとクローディアに任せて、ネル、イングリット。俺たちはこっち側に出るぞ!」

「任せて!!」

「かしこまりました!」

エスメラルダ嬢はレベルをリセットして、すべての力を失った。

代わりに俺が作り上げたスキル構成は、氷結雷撃魔法使いという中二病をくすぐるようなビルドだ。

現状スキルが足りていないから完全な状態ではないが、ブリザードウェーブとライトニングレインを手に入れられたのは大きい。

特にブリザードウェーブは氷結雷撃魔法使いというビルドではかなり重要なスキルだ。

このビルドの特徴は、相手の属性耐性を下げて尚且つ、弱点属性でダメージを倍加するということに重点を置いたスキル構成になっている。

氷と雷は対属性。

互いにダメージを倍加するという性質を持ち合わせる二つの属性だが、エスメラルダ嬢の場合は相手を凍らせて、相手が一時的に擬似的な氷属性になった所を雷属性で仕留めるというスタイルだ。

まだまだ改善点が多く、ステータスとスキルの不足が目立つ状態ではあるが、その火力は格上のモンスターたちを一掃できるほどの威力を持つ。

ネックなのはスキル発動までの攻撃スパンの長さと、物理的戦闘力の低さ。

魔法使いビルドはスキル構成上、魔力を多大に消費するスタイルになる。

そうなるとステータス対比は、体力ステータスと魔力ステータスの割合が1対4とネルの逆になる。

正直ソロでレベリングするには不向き、かつ魔力を消費しすぎると途端に戦闘能力が落ちてしまうのが魔法使いの性だ。

接近戦もある程度こなせるようにはするが、現状はそこまで万能にはなれない。

だからこそ、まさかのあのスキルが公爵家の宝物庫にあったのは嬉しい誤算だった。

〝マジックストック〟

これは発動した魔法スキルをストックできるスキルだ。

スキルレベルによって、ストックできる時間とストックできる魔法の数に制限がかかる上に、魔法を通常使用するのに比べてストックした魔法を保持するための追加魔力を多めに要求されるデメリットはあるが、それでも事前に魔法を用意できるというのは強い。

特に相手を凍らせて弱点を作り、雷で倒すというシンプルな討伐の流れができる。これはエスメラルダ嬢の新スタイルに刺さる。

常に二種類の魔法をストックしているだけで、モンスターが消え去るのだから火力としては十二分の働きをする。

戦果は見ての通り。

エスメラルダ嬢のおかげでモンスターの数が減った方面はアミナのゴーレムの守りとクローディアがいれば問題なくなった。

左右を石造りの街並みの遺跡に挟まれた道路という場所に立っていた所為で戦闘を二方面に限定でき、反対側のモンスターを叩きやすくなったと謂うことだ。

「吹き飛びなさい!!」

片方を気にしなくていいという環境は正面の戦闘に集中できるということ。

迷いない初撃はネル。先頭にいたヘルメットボアを真正面から吹き飛ばし、ボウリングの球みたいに転がして後方から突進してくる同じモンスターの群れを弾き飛ばす。

「失礼します」

ヘルメットボアが転がり、進行方向に障害物ができたことによって邪魔だと思い飛び越えてきたグレイハウンドの目の前にイングリットが立ちはだかり。

箒から銀閃が走り、腹が斬り裂かれる。

居合切りというスキルは、納刀状態からでしか発動しない少し縛りのあるスキル。

その分スキル威力は高めに設定されている。

そしてちょっとネタに走るのだけど、このスキルは鞘から剣を抜き放って切りつけるという動作を挟めば、そのあとの行動は割と自由が利く。

となればわかるだろう。

居合切りから、流れるように左手に保持した鞘である箒が走り、同じく飛び越えてきた後続のグレイハウンドの横っ面を叩き体勢を崩す。

そう、イングリットの居合切りは二段構え。

うん、FBOで色々な漫画やアニメの技を再現した甲斐があるという物だ。

隙を生じさせないように連続技は基本。

そこから考えれば、バトル漫画に登場する利便性の高い技を再現するのはオタクゲーマーあるあるだ。

自由度が高いFBOならなおのことだ。

無念と言わざるを得ないのは、スキルを使って疑似的に再現できた技は多々あるが、さすがにこれは無理だという技も中にはあったこと。

個人的には腕組んでアイテムボックスからアイテム射出とかやってみたかった。

さすがに収納するだけのスキルに攻撃性能を求めるのは間違っていたか。

そんな雑念を抱きつつも、アミナに気を取られ、ネルとイングリットから奇襲を受けて動揺しているモンスターの最前線からさらに奥にスニーキングスキルで潜り込み、俺は後方で石を投げつけようとしているスロウモンキーの群れを狩る。

こいつとバレットクックは遠距離から攻撃してくるから事故防止のためにいの一番で狙うのが定石。

しかもこいつら群れで動くから余計に面倒だし、さらにここの乱戦で経験値を得てクラスアップするとスロウモンキーはカタパルトコングになって、バレットクックはショットクックに進化する。

前者は投擲攻撃の威力を上げ、後者は範囲攻撃をと面倒な進化形態になるから撃破優先順位は高めになる。

ただ俺個人では全滅させるのに時間がかかってしまう。

なので。

「準備できましたわ!!退避を!!」

エスメラルダ嬢の掛け声と同時に俺たちはいっせいに後退を始める。

足止めしていた俺たちが下がったことによって、モンスターたちが前進し始める。

ただ、多種のモンスターがいるだけあってその足並みはバラバラ。突進力のあるヘルメットボアが最初に来てその後ろにグレイハウンドが続き、スロウモンキーとバレットクックはほかのモンスターを攻撃しながらゆっくりと進んでくる。

なのでゴーレムたちのビームが先頭集団のヘルメットボアを薙ぎ払えば後方の集団を足止めすることができ。

「ブリザードウェーブ!!」

再び吹雪を浴びせ凍らせることができ。

「ライトニングレイン!!」

連続でとどめの範囲攻撃魔法を叩きつけることもできる。

「いやぁ、やっぱり殲滅には魔法が一番だな」

その圧巻の殲滅力は、俺みたいな単体火力に特化したビルドでは出せない凄さだ。

やはりパーティーに一人は魔法使いが必要だよな。

「エスメラルダさん!魔力の余裕は?」

「残り六割といったところですわ!」

「うーん、さすが範囲魔法。その威力と燃費の悪さは比例するかぁ」

ただ考えなしに打っていたら、魔力寄りのステータスであってもあっという間にガス欠してしまう。

しかも、ブリザードウェーブもライトニングレインも威力と範囲を大きくしたタイプの火力上位に入るスキルだ。

それ相応に燃費が悪くなる。

連射するには、魔力回復系のパッシブスキルやアイテムを駆使しないといけない。

固定砲台にならないように、自衛能力を持つことを考えて立ち回りを覚えることも重要になる。

すなわち、どういうことになるかと言えば、最終形態を意識しつつ成長を続けないといけないので、エスメラルダ嬢の苦難ルートが確定しましたと謂うことだ。

「ご安心を!!これだけの量のモンスターを一掃出来ているのでかなり熟練度が上がっておりますわ!!ここはポーションを飲んで一気に終わらせましょう!!」

気合十分なのは良いけど、その風呂上がり牛乳スタイルはお嬢様的にいいのだろうか?