軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

6 ランダムボックスリターン

「スキルが手に入るのは良いけど、このアイテム嵩張るのが問題だよな」

「そうね、私たちが持っているマジックバッグじゃあっという間に満杯よ」

あれから他のモンスターを掃討しつつ、ミミックアーマーを探してその都度メモリーストーンを使用し古代の武具を手に入れるために戦い続けた。

さすがのネルも、百発百中というわけにはいかず何度も古代の武具のドロップを逃しているが、本来であれば百体倒して一つ出ればいい方と言われるくらいの低確率ドロップ品。

なんと謂うか、面倒な手間がかかっているんだからドロップ率を上げろよと言ったら、もともとない物がドロップするんだからいいだろうと言い返されそうな、それほど理不尽な低確率の筈なんだが、そんな古代武具獲得に挑んで死屍累々のFBOプレイヤーたちの悔し涙を無視できるのがネルという狐少女だ。

「本当だったら、一個出ればいい方なのに三人がかりで抱える羽目になるとは」

「次は背負子を用意した方が良いかもしれませんね」

そこら辺に落ちていた木の棒をつかって、つるし並べた古代の武具を運ぶのは夢ではなく現実。

ドロップ確率を超越したのはどういう原理かはわからないが、少なくともこっちにとっては都合がいいハプニングだ。

「ネルがアイテムボックスを覚えれば、もっと運びやすくなりますよ」

三人が揃って同じような大荷物を抱えている時点で、以前のオークションで大枚はたいて買った古代の武具と比べてもかなり多い。

「あ、見えたわ」

「日が暮れる前に戻れてよかったです」

「みんなお帰り!!」

そんなお土産を持って、ゴーレムに周囲を警戒された馬車野営地に戻ってきた。

その野営地の入り口付近で、精霊たちと戯れていたアミナが手を振って出迎えてくれる。

「いっぱいだ!!」

「ああ、大漁も大漁。正直ここまで出ると明日でるか心配になるわ」

持って帰ってきた大量の古代の武具を見て目を輝かせるアミナと、その背後で不思議そうに古ぼけた武具を見る精霊たち。

『『『????』』』

こんなものを一体どうするのだという目で見る小さな精霊。

風、水、光とそれぞれ、緑色、水色、白色と色分けされている。

見た目は幼児と言って差し支えない子供たちの姿でいるが、空中に浮いている時点で人の子でないことを証明している。

「これはね、古代の武具って言ってね。今の僕たちに必要な物が入っている物なんだ」

『でも、壊れちゃう?』

『これじゃ戦えないよ?』

『アミナ怪我しちゃう』

その精霊たちがアミナの心配をしている。

これはかなり好感を持たれている証拠だ。

精霊と契約しても、早々に相手のことを気遣ってくれることはない。

好感度メーターがあるのなら、中立から始められれば御の字、中立より下からスタートがデフォだ。

この前のライブよりも前、それこそあのトプファ神殿のライブ後の最初の交友会のときから一緒にお菓子を食べたり、歌を歌ったりと交流を深めていたからこそ、こんなボロボロの武具でアミナが戦うかもしれないと心配し。

『アミナ怪我しちゃダメ』

『私たちが戦う』

『この大きなので戦う!!』

率先して協力を申し出てくる。

丁寧に丁寧に接しても中々できないことをアミナが楽しそうにやってのけていることに俺は、FBOで精霊使いを目指していた奴らの苦労を思い出して、彼らにちょっとだけ同情してしまった。

アイドルになったキャラビルドの面々はこの部分で苦労していたよな。

野営地はいつも通りのモチダンジョン。

そこに馬ごと馬車を入れて、入り口をゴーレムで見張れば安全性は十二分。

中に水場もあるので馬の世話もできてしまうというからやはりモチダンジョンは便利だ。

モンスターを警戒しないで済む分しっかりと休むことができる。

「大丈夫だよ!そうだ!どうせならなんでこんなことをしているか一緒に見ようか」

『使わない?』

『大丈夫?』

『なにを見る?』

その野営地を守ってくれている精霊たちを安心させるためか、これからランダムボックスの開封作業をしようとアミナが提案してくる。

確かに今のままだと嵩張るから、さっさとスキルスクロールに変えるのは良いことだ。

精霊たちに見せて沼に嵌らないか心配だが、俺たちが一喜一憂するのを見せるのもいいかもしれない。

「それならここじゃなくて中でやろうか。イングリットは夕食の準備をしているのか?」

『『『ごはん!?』』』

しかし、その興味も食欲には負けて、イングリットが食事の準備をしているか聞くと一瞬でそっちの方に食いついた。

「うん、エスメラルダさんが手伝うって」

「……エスメラルダさんって料理できたか?」

「さぁ?」

貴族のご令嬢が料理をする。

それを聞いて、一瞬脳裏に浮かんだのは黒ずんだ何かがテーブルに並べられる光景だった。

ギャグマンガではありふれた光景ではあるが、現実でそれを体験するのは勘弁願いたい。

首をかしげるアミナはその光景を想像できないようで、近くにいたミーちゃんと呼んでいた水色の精霊を後ろから抱きしめている。

それをうらやましそうに、残ったフーちゃんとピーちゃんもすり寄っていくのは可愛らしくて大変絵になる。

だが、そんな光景に癒されている暇はない。

今の癒しよりも、今日の夕飯だ。

「ちょっと、様子を見てくる」

少し駆け足で、古代の武具をダンジョンの中に入れるついでに夕食の準備の様子を見に行く。

ダンジョンの入り口を入れば、そこには馬車が停まっており、その隣にテントが設営されている。

馬も馬車から解放され、飼い葉と水を与えられ食事中。

そして、馬車から少し離れた場所に竈を作り料理している二人の姿が見えた。

「そちらはこのように均等に切ります」

「こ、こうですの?」

「はい、それで問題ございません」

メイドに料理を教わるお嬢様。

貴族の教育では習わない内容であるがゆえに苦労しているようだが、俺が想像しているようなギャグ展開にはならなそうだ。

「リベルタ様、おかえりなさいませ」

「ただいま」

「あ、おかえりなさい、リベルタ。もう少しお待ちになっていて。今、私が美味しい料理をふるまって見せますので!!」

「よそ見をしないでください。指を切ってしまいますので」

「はい」

真剣に料理をしている最中に、イングリットが俺が帰ってきたのに気付きメイドらしい所作で出迎えてくれる。

その動きに気づいて、エスメラルダ嬢も俺を出迎えようとするが、手元にはまだ切っている最中の食材があって、片手に持つ包丁もあってか少し危なっかしい。

「申し訳ございません。夕食の準備にはもうしばらくかかります」

「ああ、大丈夫。今回の収穫物を確認しておくから準備が出来たら教えて」

「かしこまりました」

この調子なら料理ができるまでまだ時間の猶予もありそうだ。イングリットがしっかりと監督してくれているし料理の基本からしっかりと学ぼうとしているエスメラルダ嬢の姿から夕食の心配もなさそう。

こういう時って貴族出身のお嬢様は料理をしない、あるいは誰かに任せるのが当たり前だと思っている物だと思っていたが、イングリットも貴族出身だし、エスメラルダ嬢は公爵令嬢・・・・・二人とも料理に関しては忌避感がない様子。

改めて考えるとFBOでも珍しい部類の貴族だよな。

他にも色々と貴族のネームドキャラはいたが、こうやって野営をしているときに料理を作ってくれるようなキャラはほとんどいなかった。

たまに戦うことが正義という雰囲気を出すワイルド系の貴族のキャラが焚き火で焼いたバーベキューっぽい料理を出してくれたことはあったが、こうやって一から料理を作るのは珍しいを通り越してほぼいない。

そこに好悪という感情もなく、そしてとやかく言うのではなく、俺としてはただただ珍しいと思うだけだ。

こういう貴族も実はいたんだなぁと、ゲームとは違う現実とのギャップを感じつつ、入口の方を見るとダンジョンの中にネルとクローディア、そしてアミナが精霊を引き連れて入ってくるのが見えた。

「夕食はまだだから、先に古代の武具をスクロールに変えるか」

「わかったわ。写し紙は馬車にあったわよね」

「ああ、このドロップ頻度だったらもう少し多く買っておけばよかったな。足りるか?」

就寝用のテントの側に古代の武具を並べ、その数を数える。

全部で十三個。

鎧に兜、盾に剣、槍に靴にと様々な形の武具が並んでいるが、皆一様に古ぼけているのは前と一緒。

「色々あるけど、これも何が入っているかわからないんだよね?」

「ああ、剣だからと言ってそのまま剣系統のスキルは入っていないな」

ドロップ確率とネルの豪運を鑑みて、写し紙は多めに買っておいたが、まさかそれで足りないと思うことになるとは。

「不思議だよね。なんでつけないんだろ?」

「さぁなぁ、こればっかりは俺もわからん」

五十枚という枚数も多めに見積もっている。

明日は一日中狩ることを考えると、足りない可能性すらあるのは想定外すぎる。

アミナと一緒に古代の武具を眺めていると写し紙を取りに行ったネルが戻ってくる。

「持ってきたわよ」

「ありがとう。とりあえず、ネル。良さそうなものとダメそうなもので分けてくれるか?」

「それって目利きスキルでってこと?」

「それよりも、直感で選んでくれ。前と同じようにフィーリングで選んでくれればいいから」

「わかったわ」

であるなら、ネルの直感で良さそうだと思うものを選びダメそうなものは後回しにするのがベストだ。

前の時もそれで選定ができていたからな。

「これは・・・・・ダメね」

右がダメで、左が良い物と分けるように頼むとネルはさっそく仕分けを始める。

ジッと見て、そして残念そうに首を振って右に古い盾を置く。

「これも、ダメね」

そして次に手に取った兜も右に置き。

「これは、少しいいわね」

三個目にして、左に一個置かれた。

「これと、これもダメで」

そこからサクサクとネルの直感で選定してもらうと。

「一番いいのはこれね!!」

ダメなのが九個、微妙なのが三個、そして一番手ごたえを感じた物が一個という結果になった。

ネルの一押しは、古びた短剣だ。

「なら、それは最後にしよう。そっちのダメな奴はひとまず馬車に乗せておくとして、微妙なのから行こうか」

果たしてそれがどれほどの輝きを見せるかはわからない。

ワンチャン虹色も期待できるかもと思っている。

まさかと思う気持ちと、現実的に考えてそう簡単には出ないだろうという疑心がせめぎ合っているのが正直な気持ちだ。

ならば精神的安静を求めてひとまずは安パイを手に取る。

手に取ったのは古ぼけた小手。

「それではネルさん、お願いします」

「まかせて!」

前回のような失敗はしない。

写し紙をネルに手渡して、ネルは写し紙を小手に当てると。

「青か」

「青ね」

「青だね」

『光った!!』

『私と同じ色~』

『あ、崩れちゃった』

微妙というのは青色のことだったか。

そしてまたもやネルの直感は当たり、白ではないがその一段階上の青色の光。

「なんのスキルだった?」

「弓術ね」

「お、いいじゃないか。割と当たりだぞ」

「でも、私たちの中じゃ使わないわよね?」

「誰か使う人がいたら使えるかもしれないし、あって損はないぞ」

一発目は無難な弓術。

需要は高いと思うし、今後仲間になる人がいて遠距離職を希望するのなら使い道があるかもしれない。

「それもそうね。それじゃぁ、次に行くわよ」

そしてそこから青、青と同じように続き。

「さすがに、必要な物はそう簡単には出ないか」

一つは騎乗スキル。

これは動物やモンスターに乗る際に乗りやすくなったりするスキルだ。

二つ目は、サンドカーテン。

土魔法の中の範囲防御系の魔法だ。

防御力は一点集中型と比べると低いが、それでもそこそこ高く、範囲カバーできるというメリットがある分使い勝手もいい。

「それじゃ、行くわよ」

三つとも当たりと言えるスキルで良かったと思いつつ、ついに自信があるというネルの厳選の一個。

それに写し紙を当てた瞬間。

「え、これって」

「金キタァアアアアアアア!!!」

黄金の輝きを見て俺は叫ぶのであった。