作品タイトル不明
472.体育会系側室
会場に戻る間に、ワカナ様と話し宴が終わったら、ワカナ様が若殿に話してみると言うので私は後で結果を聞くことになった。さすがに、お節介おばあちゃんでも引き際はわかっているつもり。
ちなみに、私が着替えに行っている間に私に暴言とシャンパンを浴びせた令嬢達の親は事態を重く受け止め、すぐさま爵位を返納し嫌がる令嬢達を城からそのまま尼寺へ入れたそうだ。令嬢達の親は常識のある方々だったが、どの令嬢も次女や三女で甘やかして育ててしまったと、各ご夫妻共々私に土下座して謝ってくれた。
まぁ、東の国が何も動かなきゃ、私が鉄槌を下そうとしてたから手間が省けたから良かったと思うことにしよう。それに尼寺入っちゃったら手を出せないしね〜。
ワカナ様の結果を聞いたのは、メルロス様との狩りの約束をしていた日だった。待ち合わせの冒険者ギルドに早めに行き、依頼書などを見ているとメルロス様が何人かの女性を引き連れてギルド内に入って来た。一緒の4人の女性達も全員冒険者のような服を来てその中にはワカナ様もいた。
「ごめんなさいね〜。待たせちゃったかしら?」
「いえ、私が早く着き過ぎただけなのでお気になさらないで下さい」
「そう?じゃあ、行きましょうか?わたくしが先行するので、後ろから付いて来てね〜。ジョアンちゃんには、ワカナちゃんが付き添ってね〜」
「はい」
ワカナ様に聞くと、メルロス様が気を利かせてくれて私達が話す時間を取ってくれたと言うことだった。ちなみに追随する女性達は、近衛隊でワカナ様の先輩達らしい。その先輩達は、私達の話し声が聞こえない距離を保って馬を走らせてくれている。
「あの後時間を頂き、殿様、奥方様達、若殿、2人の婚約者候補、わたくしの両親を交えてわたくしの気持ちを話しました」
ワカナ様の独白は、もちろんタイキさんの名前は出さなかったらしい。貴族令嬢として政略結婚は承知しているし、城から選んで貰った立場の自分が辞退するというのは不敬に当たるかも知れないが、自分には前より慕っている殿方がいる。この気持ちのまま若殿の婚約者候補でいることは若殿に対しても他の婚約者候補に対しても失礼になるので、候補者を外して欲しいとのことを願ったそうだ。それを聞いた殿様と奥方様は静観し、若殿と他の婚約者候補は軽く頷き、ご両親は驚いてフリーズしていたらしい。その後、殿様は若殿に意見を求め、若殿のフォローもあり候補者を解消することが決まったという。
「えっ、じゃあ晴れてフリーに?」
「ええ、近衛隊の先輩方からは勿体無いと言われましたけど、でも自分に正直に生きたいと思ったので悔いはありません」
「そっか。良かったね。ちなみに若殿のフォローって?」
「えっと、実は……若殿も他の婚約者候補も、わたくしの気持ちに気付いていたようで……」
「えっ!?あっははは、やっぱりバレバレだったんだ」
「ええ、それを聞いた時はもう恥ずかしくて恥ずかしくて。でも、若殿も他の婚約者候補も、応援するからと言ってくれました」
メルロス様の誘導で狩場に着くと、颯爽と馬から降りたメルロス様が笑顔で話す。
「今日は、討伐依頼が出ていたアユティの討伐よ〜。調査では1体とは聞いているけれど、気をつけてね〜」
「「「「「はい」」」」」
《アユティ》
大型の猿のような獣。
全身長い毛に覆われ、人間に似た顔、極端に短い尾を持ち四肢の先に指は3本で幅広の爪で木に登る魔獣。知能的には6才児程度、単体ではさほどの脅威になることはないが、連携能力に優れており、群れで行動することが多い。
狂暴で素早く、怪力。
念のため、一緒に連れて来たメテオに周辺を偵察して来てもらう。ちなみに、パールは一緒に来ると小物の魔獣が逃げてしまうからとお留守番。ロッソはさっちゃんとお茶するから行かないと言う。ベルデは、妖精ver.で私の肩にさっきまでいたがメテオが偵察に行ったタイミングで、付近を確認するために飛び立っていた。
『姐さん、5アユティっす。そのうち1体は、まだ子供っすね』
メテオの報告で、事前に聞いていた内容と異なっていた。メルロス様も近衛隊のお姉様方も驚いて目を見開いている。ただ、メルロス様だけは他の人と違う方向を見ていた。
「メルロス様?」
「あ、ご、ごめんね。あの、もしかしてだけどジョアンちゃんの肩の上にいるのって……」
「あっ、メルロス様は見えるのですね。私の契約獣の緑の精霊のベルデです。ベルデ、ご挨拶を。あっ、見えるようにね」
メルロス様は、エルファ国出身でも見える派の人だったらしい。なのでワカナ様も含め、近衛隊は首を傾げている。ベルデは、私の指示通り肩から下りて従僕ver. になり挨拶をした。見えない人からしたら、いきなり現れたイケメン従僕に驚き見惚れる。現に近衛隊のお姉様が何人かポーッとしている。
『ご挨拶が遅くなりましたこと、心よりお詫び申し上げます。我は、ジョアン様の契約獣、緑の精霊ベルデと申します』
「まぁ〜、ご丁寧にありがとう。わたくしは、メルロスよ。あなたが父の話していたベルデ殿ね。会えて嬉しいわ〜。エルファでは、父達がお世話になったようでありがとうね」
『勿体なきお言葉。……ジョアン様、付近にはメテオの報告したアユティ以外はいないようです』
「ありがとう」
皆んなで考えた作戦は、ベルデの【結界】でアユティを1体ずつ隔離し、結界内に麻痺毒を散布。人間と違ってどのぐらい効くか不明だけど多少弱らせたら、1体ずつ討伐することにした。ちなみに、この麻痺毒はアニア国の元コッカー伯爵が持っていたリコリスとは別のスズランの毒。
前世でも、よくニラと間違えてスイセンを食べて食中毒になったってニュースでもやってたからね〜。
無理言って貰ってきておいて良かった。
子アユティがいるということで、他のアユティの警戒心は通常より高いようだ。でも、ベルデは難なく1体ずつ【結界】による隔離を行い、私から渡された麻痺毒を結界内に散布した。【結界】を叩いていたアユティ達だったが、しばらくすると毒が回ってきたのか子アユティから動かなくなった。討伐順は、体格の大きい方から。先に子アユティを討伐すれば、子供を殺された悲しみから他のアユティが暴れると予想されたから。
その作戦は、上手くいき誰一人怪我することなく討伐は完了した。
その後、メルロス様の行きつけだという料理屋で打ち上げをした。そこでの話は、無礼講で主に冒険者活動の事だったり武器の話だったり。誰も恋バナなんて話さない、体育会系の打ち上げだった。