軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

473.炉端焼き

メルロス様と討伐した日から2日あけ、今日はチグサ様の案内で城下町でショッピング。

「今日は色々と見て回り、最後は我が家の商会に行こうと思うのですがよろしいですか?」

「はい。今日は、宜しくお願いします」

チグサ様のアテンドで、城下町を練り歩く。どこへ行っても皆んながチグサ様に笑顔で声を掛けたり、挨拶をしていく。

「いい所ですね。活気があって、皆んな笑顔で」

「そう言ってもらえて嬉しいわ。皆んな、私が貴族令嬢の時も王族になった今でも気軽に話しかけてくれるのよ」

「それはチグサ様のお人柄が良いからですね」

「そうかしら?でも、そうだったら嬉しいわ」

ランチは、チグサ様のご贔屓にしている料亭……ではなく、大衆食堂。私はそのギャップに驚いていたが、チグサ様は私に関係なく店の中へ入って行く。

「へい、らっしゃ……って、チグサ!?あのなぁ、この前断っただろうが。ここじゃあ、他国の使者様をもてなせねぇーって。お前の顔に泥を塗る事になるぞ」

「あら、そうかしら?」

チグサ様が店主らしき青年と話をしている間、私は店内や食事している人をキョロキョロと眺めていた。

店内は、真ん中に囲炉裏があり周りを囲むようにカウンター席と窓側のテーブル席がある。囲炉裏には、川魚らしき串焼きと肉串焼き、中央には鍋が掛かってある。

うわ〜、懐かしい。囲炉裏だー!!

我が家にはトム爺お気に入りの火鉢はあるけど、やっぱ囲炉裏は趣きがあるわ。

「うふふ。ジョアン様、こちらはこの店《炉端焼き 花》の店主のゲンタです。わたくしの幼馴染なんですよ」

「初めましてエグザリア国から参りました、ジョアン・ランペイルと申します」

「えっ、あっ、ゲンタです。……この少女が使者様?」

「はい、一応使者やってます。ところで、あの鍋は何が入っているんですか?良い匂いがするんですけど」

「あー、あれは、すいとん汁でーー」

「すいとん!!セウユ味ですか?メソ味ですか?」

「えっと……メソです」

「食べたいです!!」

「あ、はい」

ゲンタさんは、チグサ様に「奥で」と言い残し厨房へ入って行った。チグサ様は、勝手知ったる様子で店の奥に案内してくれた。奥には、個室があるそうだ。ただ、個室と言ってもVIP対応の為ではなくゲンタさんの友人用らしい。だから、通常はスタッフ用の休憩スペースに使っているらしい。

しばらくすると、可愛らしいお姉さんがすいとん汁、川魚の串焼き、肉串焼き、ヌルイモの煮物、おにぎり、塩辛、卵焼きを運んで来てくれた。

「お待たせしました。チグサ……様、お、お飲み物ど、ど、どうします?」

「ふふふ。ジョアン様、こちらはゲンタの奥さんでユキミ。彼女も幼馴染なんです」

「初めまして、ジョアン・ランペイルです。あの、いつも通りで構いませんよ」

「ほ、本当ですか?はぁ〜、すみません。慣れなくて……。あっ、で、飲み物どうします?チグサはいつもの?」

「じゃあ、私はとりあえずエールで」

「はい、かしこまりました」

エールとチグサ様の焼酎ロックがやってきて、私達は軽く乾杯をして運ばれた料理に手をつけた。

「ん〜美味しい!この卵焼き美味しい。出汁が違うのかな?」

「気に入ってもらえて良かったわ。どんどん食べて飲んでね」

そう言うチグサ様も塩辛をあてに焼酎ロックが進んでいる。どうやら中々いける口らしい。

次に運ばれて来たのは揚げ物。山菜の天ぷら、海老や白身魚の天ぷら、唐揚げをゲンタさんとユキミさんが運んで来た。

「えーっと、日本酒の熱燗は?」

「あっ、私です。ってか、ゲンタさん!」

「は、はい」

「料理、美味いっす!卵焼きって、キャッツブシの出汁じゃないですよね?聞いても良いですか?」

「えっ、あ、はい。ジャンプウオの出汁っす」

ジャンプウオとは、説明を聞くと前世の飛び魚だとわかった。ただ飛び魚は水上に飛び出し胸びれを広げて滑空するが、ジャンプウオは水上に飛び出すと胸びれを羽ばたかせて飛び回るらしい。

「うっま!唐揚げも味付けが違う。これは……オウメ?」

「はい。オウメの塩漬けとキャッツブシです。商業ギルドで買った “女神の唐揚げ” とは違うんですけどね。ウチの店のオリジナルを作りたくて。“女神の唐揚げ” は何て言うか、パンチが足りなくて」

“女神の唐揚げ” の言葉に、チグサ様と目を合わせて笑ってしまう。それを見たゲンタさんとユキミさんは首を傾げている。

「あの、じゃあ、こんなのどうですか?」

私はストレージから唐揚げを何種類か出して、皆んなに試食して貰う。取り出したのは、カレー味、ガーニック多めの塩胡椒味、そして油淋鶏。

「っ!!美味い!!これも……うっま!」

「「美味しい!!」」

皆んなが試食しているのを、ほろ酔いで良い気分の私は自然とニヤニヤして見ていたらしい。

『ジョアン様、顔が緩みすぎです』

「うっ」

従僕として付いて壁の花と化していたベルデにボソッと釘を刺される。

「さすが "食の女神” 様ね〜」

「「はいー!?」」

さらっと私が "食の女神” である事を言うチグサ様。その言葉に驚きを隠せないゲンタさんとユキミさん。

「ど、どういうことだよ! あの "食の女神”?」

「ジョアン様が?本当に?」

「えーっと、一応本当です。てへ」

「「……す、すみませんでしたーー!!」」

まさか、レシピについて批評した相手が目の前にいるとは思っていなかったゲンタさんとユキミさん。私が "食の女神” とわかると、自分の言った言動に血の気が引き綺麗な土下座をした。

「頭上げて下さい。人の味覚はそれぞれだから、ゲンタさんにとってはパンチがなかったのかも知れないですから。ってか、そこからアレンジできるゲンタさんは凄い!揚げ方も完璧だし」

「あ、ありがとうございます」

その後、パンチがないと言われていた唐揚げの作り方を見せて貰うと、漬け込みの時間が足りなかったことが原因だった。ストレージの【エイジング】で時短漬け込みをし、揚げて食べてみるとしっかり味がついていた。

ゲンタさんは、来店した時と打って変わって手をブンブン振りながら、「師匠!また、来てくださいね!!」と見送ってくれた。