軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

390.飴ちゃんの言い分

アニア国一行が戻って、1ヶ月。エグザリア国では、社交シーズンが訪れた。

王家主催の夜会が社交シーズン到来の開幕イベント。

いつもは各地の領地にいる貴族達も、この時ばかりは全員が王都のタウンハウスに居住を移す。それに伴って、各タウンハウスで、日中に行われるガーデンパーティーや夜会が開かれる。ガーデンパーティーや夜会では、お互いに情報交換や婚活が行われる。

王城のパーティールームでは、いつもながら宮廷楽団の演奏が流れている。そこに会場に響き渡るような案内の声で、貴族達が入場してくる。入場は、格下の爵位の貴族からで、私達が入場した時に、既にブラン男爵にエスコートされた飴ちゃんがいることは把握済み。なんでも、入場するなり「私がフレッド殿下の婚約者なんですぅ。」と言い回っていたそうだ。父親のブラン男爵も止めもせずに隣でニコニコとしていたらしい。もちろん言い回る飴ちゃんのことを、皆んな引き気味で見ており、何人か善意で咎めると「あたしは、次期王妃になるのよ!」と怒りだし手が付けられなかったと報告があった。それもあってか、ブラン男爵親子の周りに人はいない。

全ての貴族が入場し終わると、陛下達王族がパーティールームへ入場してくる。王族の周り、そして全ての出入り口にはいつも以上に警備体制が整えられ、近衛隊だけではなく他の騎士団からも応援が来ている。その中には、第二騎士団、通称、魔物討伐団に所属するジーン兄様やエリック様、ノア先輩、カズール先輩が。第三騎士団、通称、魔術師団からはノエル兄様の姿も見える。

社交シーズンに向けての陛下の開幕の口上が終わると、割れんばかりの拍手が巻き起こる。

「それから、ここで我が愛する第二王子、フレッドの婚約者を紹介しよう。では、こちらへーー」

「はーい。」

陛下の話の途中で、しかも食い気味で返事した者がいた。それは、もちろん飴ちゃんだ。誰も呼んでもいないのに、カツンカツンとヒールを鳴らす不作法な歩き方で、王族の方が立っている所に行こうとする。もちろん、そんな行為は近衛隊に止められるわけで……。止められた飴ちゃん本人は首を傾げキョトンとしている。それを見た王妃様は、扇で顔を隠すがチラリと見える目は今まで見たことがない冷たい視線だった。アルバート殿下はさりげなく庇うようにキャシーちゃんの前に出ている。

飴ちゃんは、呆気に取られながらもキャシーちゃんを認識したようで、直後よく通る声が、パーティールームに響き渡った。

「あっ、キャサリーヌ様いたーー!探したんですよ。悪役令嬢がいなきゃ、始まんないじゃないですか〜。」

「黙れ!!誰の許可を得て話している!」

「っ!!」

陛下の威圧ののった言葉に、固まる飴ちゃん。そこへ、慌ててブラン男爵が駆け寄る。

「ブラン男爵、そこの令嬢は貴殿の娘か?」

「はっ、陛下。さようでございます。我が娘、キャンディになります。この度は、娘をフレッド殿下の婚約者に選んで頂き、誠にありがとうございます。」

「何?……それは、誰が申した?」

「えっ、あっ、いや……娘が。……キャンディ、そうなんだよな?」

「えっ?その……あたしがヒロインだから……フレッドと結ばれるのは、あたしなんです!!」

「ヒロインだか、孤児院だかよく分からんが……その方がフレッドと婚約をすることはない。」

「ど、どうして……やっぱり悪役令嬢があたしの邪魔をしているんだ。」

飴ちゃんは、呆然とした後俯いて何やらブツブツと呟いている。

「何だ?ブツブツ呟きおって。……どうしてもこうしてもでは、ないであろう?まず、男爵家では王族の婚姻相手としてはそぐわない。何か功績でもあれば別だが、何かあるとは報告を受けていない。それに、フレッドからもその方のことを、一度も聞いたことはない。」

と、陛下が言うとフレッド殿下も頷く。陛下の言葉を聞いて飴ちゃんはバッと顔を上げて叫ぶ。

「それもこれも、キャサリーヌ様があたしを虐めるから!!フレッド殿下に会わせないように画策したり、あたしの教科書や私物を破いたり隠したり……。」

「でも、キャサリーヌ嬢とその方は、学年も違うよね?じゃあ、そんなこと出来ないんじゃない?」

と、アルバート殿下。さすがに愛する婚約者に対する無礼に、黙っていられなかったらしい。

だけど、もう少し威圧を抑えて!

飴ちゃんだけじゃなく、他の人たちも顔色悪くなっているからー!!

「そ、それは……取り巻きのランペイル辺境伯令嬢にやらせたんです!!」

へぇー、ここで私まで登場させちゃいます?

良いですよ〜。登場してやろうじゃない。

話を聞いていた周囲の人間が、一斉に私達を見る。

「あなた、威圧を抑えて。」

お母様に言われて、お父様は渋々威圧を抑える。

アルバート殿下は、私達を一瞥して更に飴ちゃんに聞く。

「じゃあ、ランペイル嬢がどうやってやるの?彼女も学年違うよね?」

ええ、何だったら学科も違いますけど?

「ラ、ランペイル辺境伯の従僕見習いが、あたしと同じ学年にいます。あの、獣人にやらせたんです!!」

「それは、目撃者でもいるの?」

「いませんけど……で、でも、あの性格ブスな地味メガネ……じゃなくて、ランペイル辺境伯令嬢に決まってます。」

飴ちゃんが、私のことを《地味メガネ》と呼んだ瞬間に、再度周囲の人間が私を見る。が、皆んな首を傾げる。どこが地味メガネなのか?と。

そりゃ、そうでしょうよ。

まず、今は伊達メガネをかけていない。そして、この日の為に、サラ達は1ヶ月前の夜会の日から毎週念入りにエステしてくれている。しかも、1ヶ月前にはメモを取るだけだったテトが、寝る間も惜しんでひたすら鍛錬した結果、バストアップ、ヒップアップ、くびれ造形と凄腕エステティシャンに成長していた。獣人の程よい力加減が絶妙で、エステ開始から10分後には寝落ちしてしまうほどに気持ちが良い。そして、寝覚めたら全身の浮腫みは取れ、ボンキュッボンの出来上がり。

ドレスはグッドマン夫人とニッキーさんにお願いしたもの。初の師弟コンビの渾身の品だ。今回のドレスは、私の瞳の水色と紺色のグラデーションが美しいワンショルダーのAラインドレス。パッドを挟み縫いしたビスチェ仕立ての胸元に重ねたのは、透け感のある布でシャーリングのフロント部分。高めの位置で切替えたウエストからのスカート部分には、膝上よりちらり覗くスリット入り。髪の毛はアップにして、アクセサリーはアラン兄様とヴィーからのプレゼントの付与付きペンダントとピアス。ピアスには、ジュリー叔母様に状態異常無効、魔法攻撃無効を付与してもらった。

こんな見た目の私が、地味?

そんな時代遅れなフリフリのピンクのドレスを着ている飴ちゃんに言われたくないわ!!

あー、ジーン兄様は肩を震わせてるし、ノエル兄様は威圧が……。