作品タイトル不明
324.綺麗な瞳
王都のランペイル邸に向かう馬車の中で、先程寮の中で話せなかった詳細をミューちゃんに話す。
「そう、そんな事が……。奴隷商も酷いけど、どんな理由があるにせよ子供達を捨てた親は酷いわ。わかった、私が綺麗にしてあげる!」
ジェネラルの屋敷に着くと、お父様達への挨拶も早々に、2人の元へ向かう。
ザックとサラの手によって、綺麗になった2人は、人に洗ってもらう事どころか、お風呂自体初めてだったらしく、呆然としていた。
「バース、テト、今から髪の毛を切ろう。さすがに伸び放題だからね。私の友人が切ってくれるわ。」
「「えっ!?」」
「初めまして、ミューラです。カッコ良く、綺麗にしてあげるわ。はい、まずは君からね。危ないから、動かないで。」
驚く2人を構わず、最初にバースから切り始めるミューちゃん。あっという間に、さっぱりとしたバース。
「あ、ありがとう。」
「どう致しまして。次は、あなたね。」
「えっ、あの、私はーー」
「大丈夫よ。心配しないで。」
そう言って、ミューちゃんは前髪を上げる。
前髪を上げると、つぶらな瞳がようやく見える。
「「「っ!!」」」
鏡越しにテトの瞳を見た、私とミューちゃん、ザックは驚いた。
「……だから、嫌なのに……。」
ボソッと呟いたテト。
「「綺麗ーー!!」」
「えっ!?」
テトの瞳は、右が青、左が黄色のオッドアイだった。それを見て、私とミューちゃんは興奮した。だって、猫耳美少女がオッドアイなんて……最高かよ!
「何で隠してたの?こんなに綺麗な瞳なのに。」
「そうそう。勿体ないよー。」
私とミューちゃんが口々に言うが、テトは口を開けたままフリーズしていた。
「あ、あの……。」
テトの代わりにバースが教えてくれた。
猫人族にとって、オッドアイは不吉で忌み嫌われる存在ということ。その理由から、親に捨てられたこと。ストリートキッズの仲間からも、距離を置かれる為に前髪を伸ばして、俯いて生活していたこと。
「はーー!?なんだその理由!!どこが不吉なんだよ?テトが何かしたのかよ!?勝手にテトのせいにしてんじゃねーよ!!何でこんなに綺麗なのに、テトが嫌われないといけないのよ!」
「落ち着け、ジョアン。バース達が怯えてる。」
ザックに言われて、バース達を見ると、初めて孤児院で会った時のように、抱き合いながら震えていた。しかも、テトは涙目だった。
「あっ、ごめん。大きな声出して。ちょっと、頭にきて、つい……。」
頭を掻きながら、バース達に謝る。
「うっ……うわぁぁぁん、あぁぁぁん……。」
テトが急に泣き出した。
「えっ、えっ、私、私のせい?えっ、えっ、ミューちゃん、どうしよう。泣かせちゃった……。」
「もお!……ほら、テトちゃん。大丈夫よ、怖くないわ。どうしたの?どこか痛い?」
ミューちゃんが聞いても、首を横に振るばかり。私が謝るために近づこうと、一歩足を出すとミューちゃんが私に右手を広げて突き出し低い声で言う。
「ジョアン、ステイッ!!」
「はいっ!!」
ようやくテトが落ち着き、ザックが淹れた紅茶を飲む。でも、私は床に正座中……。
「美味しい……。あの、ごめんなさい。突然、泣き出して……。嬉しかったの……。」
「「「えっ?」」」
私とミューちゃん、ザックは何のことかわからない。
「テトちゃん、嬉しかったって?」
ミューちゃんが聞く。テトの横ではバースが、テトの背中を撫でている。
「私……今まで、この瞳のせいでずっと嫌われてた……。バース以外、私の近くにいなかった……。でも……、初めて会った人なのに、人族なのに、綺麗って言ってくれて、私のために怒ってくれた……。あの……ありがとう。」
「良かった〜。私のせいで泣かせて、嫌われたかと思った……。」
そう言って、私は後ろに倒れた。だって、脚が痺れて限界だったから。
「おい、ジョアン。仮にも貴族令嬢。」
「ちょっ、ザック。仮じゃないわ!」
と反論するが、ミューちゃんに
「それを寝ながら言うのもどうかと思うわ。」
「ぶっ……。」「ふふふ……。」
バースとテトにも笑われる。2人の笑顔を見て、私達も顔を見合わせて笑った。
その後、テトも綺麗にカットされて、とても可愛くなった。
「……と、はい、完成。どう?」
「わっ、すごい。私じゃないみたい。」
テトは、前髪を目にかからないぐらい、後ろ髪は肩ぐらいまで切ってもらった。今まで、汚れていた為に気付かなかったが、髪の毛の色は黒に近い濃灰色だった。ちょっとクセがある髪だったようで、ふわふわしていて更に可愛い。
その後、2人が緊張しないように、夕食はバース、テト、ミューちゃんと私の4人で取った。まだ、本調子でないバースとテトもいる為に、トメットリゾットと豆腐つくね、サラダにスープ。3人とも口に合ったようで、お代わりを促すと、声を揃えてお願いしていた。
デザートが運ばれて来ると、テトとミューちゃんが、目を輝かせていた。
そして、夕食後にお父様とお母様が話をしたいということで、ミューちゃんを除く3人で応接室に向かう。ミューちゃんは、ナンシーに呼ばれて、使用人達のヘアカットに向かった。
応接室に向かう間、2人の顔はどんどん青くなっている。
「そんなに緊張しなくて大丈夫だよ。」
「で、でも、俺ら猫人族だし、平民だし……その、マナーだってわからない。」
「それはお父様達も知っているわ。それに、そんな事で怒るような人達ではないわ。きっと、私に話してくれたことを、もう一度聞かれると思うけど、そこはごめんね。」
「いや、そんなことで良いなら……。助けてもらっただけじゃなく、湯浴みさせてもらって、食事も腹いっぱい食べさせてもらって……。本当にありがとう。」
「私も……瞳の色の違いのこと、気味悪がるどころか褒めてもらって、それにこんなに可愛くしてもらって……。ありがとう。」
「どういたしまして。」