作品タイトル不明
272.負け犬の遠吠え
映像を見終わったイジョクは、唖然としていたがジョアンを見ると
「ほ、ほら、言ったじゃねーか!このガキが討伐したわけじゃねー。その犬ころとリスがやったんじゃねーか!嘘ついた上に、俺に啖呵きりやがって!」
「あのー、さっき『仲間皆んなで協力した』って言いましたよね?誰も、私1人で倒したって言ってないですけど?」
「へ、屁理屈ばかり言いやがって、碌な育て方されてねーな。親の顔が見てみてーもんだ!」
これって負け犬の遠吠えってやつかな?
親の顔は見れないけど、親の親の顔はすぐ近くにあるよ。
それと、ゲルーシさん下向いてるの、笑い堪えているよね?バイブ機能状態なのバレてるよ!
「イジョク?あなたが言っていることも屁理屈ではないかしら?確かに、こちらのお嬢さんは1人で倒したとは言ってませんよ。それに、まず、あなたは依頼達成した冒険者に対して喧嘩を売るためにギルドに来たのかしら?」
「い、いや、その、俺はあのカルキノスを討伐してくれた冒険者を見てみたくて……。で、来てみたら、まさかこんなガキが討伐しただなんて、嘘だと思い込んじまって……つい。」
「では、まずお嬢さん達に言うことがあるでしょう?」
「……すまねぇ。それと……その……討伐してくれて感謝する。」
「許します。私も、売られた喧嘩を買って、あんな言い方をしてしまってすみませんでした。」
「いや、良いんだ。まさか、こんなガキに啖呵切られるとは思ってなかったがな。ガッハッハハ。」
イジョクさんと握手をして、仲直りをする。それを見ていたベルとアリッサさんは、ほっとした顔をしていた。
「ようやく話がまとまったようだな。」
「ゲルーシ、お前も人が悪いぞ。近くにいたなら間に入れば良いものを。」
「いや〜、久々にお前のデカいダミ声に怯むこともなく食ってかかる冒険者がいるもんだと思ってな。あっはははは。」
いやいや、さすがにこればっかりはイジョクさんの意見に賛成だわ。ゲルーシさんが間に入ってくれたら、あんな事にならなかったし、お祖母様も来る事なかったんじゃないの?
ジョアン以外にもベルやアリッサも、同じように考えていたようで3人でジッとゲルーシを見ている。それを知ってか知らずか、未だに大笑いしているゲルーシ。
「ところでお嬢、イジョクにまだ 正(・) 式(・) な(・) 挨拶してねーんじゃねーのか?」
ニヤニヤしながら言うってことは、間違いなく私とお祖母様の関係をイジョクさんに教えたいのね……。
「あー、そうですね。」
チラッとお祖母様を見ると無言で頷いているので、挨拶は構わないようだ。
「イジョクさん、改めてご挨拶致します。ランペイル家長女、ジョアン・ランペイルと申します。」
「へっ!?……えーーーーっ!?なんだとーー!このガ……じゃなくてお嬢さんが、リンジー様の孫!?」
「何です?私の孫じゃいけませんの?」
「いやいやいやいやいや……も、申し訳ありませんでしたーーー!!」
イジョクはソファーからすぐさま下りて、土下座をした。
「イジョクさん、頭を上げて下さいよ。さっき、和解したじゃないですか。それに、冒険者やっている時は家名名乗らないようにしているので、気にしないで下さいよ。」
「いや、でも……。」
「ほら、良いから座って下さいよ。」
「は、はぁー。しかし、お嬢さんも人が悪い、先に言ってくれたら……。」
「いやいや、人の話聞かなかったですよね?……というか、もう、こんな話は良いんです。それより、聞きたい事があるんですけど。」
「こんな話って……まあ、良いなら良いが。聞きたい事って何だ……ですか?」
「ふふふっ、私には無理して敬語じゃなくて良いですよ。聞きたい事ってのは、イジョクさんって鍛冶屋なんですよね?今回の依頼って、素材の為の討伐ですか?」
「すまねぇ、敬語は苦手で……。んで、確かに素材として自分で討伐しようとして失敗したから依頼したんだ。」
「ちなみに必要な部位は?」
「あ?まあ、1番欲しいのはハサミの所だな。あれが1番、強固だからな。」
「じゃあ、外殻があればいい?」
「ああ、他は捨てるからな。」
「じゃあ、身はいらないですよね?捨てるんですよね!」
「お、おう、捨てるからいらーーー」
「ください!」
「ん?どうするんだ?身なんぞ。」
「食べる!」
「もしかして、料理出来んのか?あの化け蟹を。」
「出来ますよ?あれ?食べたことあるんですか?」
「ある。ここに落ち着くまでは旅していたからな。」
どっかで聞いたような話だと思いながら聞いていると、イジョクさんは他所で食べたカルキノスの味が忘れられなくて、一度自分で調理したが腹を壊したらしい。
「あー、生食は新鮮なうちに食べないとお腹壊しやすいから。」
「いや、火は通したぞ。たぶん、一緒に入れた野菜の代わりの草だな。」
「「「「「は?」」」」」
「何で野菜の代わりに草なんて入れたんですか?」
「いや、前に食べたやつが野菜とカルキノスのスープだったから、それに似せようと思ってだな。」
「なんて無謀な……。」
お祖母様は呆れ顔で呟いた。
「お嬢さん、俺にもカルキノスの料理を食わせてくれ!」
「良いですけど……。その代わりお願い聞いてくれますか?」
「ん?何だ?」
「私たちに、剣を作って欲しい。」
「だが、素材がなぁ〜。」
「カルキノスの外殻なら、まだあるよ。1匹丸々。」
「1匹丸々だと!?なぜだ?」
「食べる為に。」
「おお、そうか……。よし!わかった。時間は貰うが作る。だから、食わせてくれ!」
「っしゃー!!約束ですよ!ゲルーシさん、アリッサさん、お祖母様が証人ですからね。」
「おう、俺も男だ。男に二言はねー!」
イジョクさんと約束をして、お祖母様と共に屋敷へ帰る。
私とイジョクさんの話を聞いて驚いていた、ゲルーシさんとアリッサさんも誘ったので、今夜は大人数での夕食だ。
私は気づいていなかったが、何を作ろうか考えながらニヤニヤしていたらしく、お祖母様とベルは顔を見合わせて笑っていたらしい。