作品タイトル不明
271.鍛冶屋のドワーフ、イジョク
「ハァ、ハァ……ちょっと……待って……ハァ、ハァ。」
「アリッサさん、はいお水。」
ストレージから水を出して渡す。
ゴクゴクゴクッ。「……あ、ありがとうございます。」
「で、アリッサよ、どうしたんだ?」
「あの、そのカルキノスって、お腹の辺りに傷ありませんでした?」
「傷?私は覚えてないけど……ベルは?」
「んー、覚えてない……って見てみたら良いんじゃない?」
「あっ、そっか。」
「ん?姫さん、討伐部位以外も持って来たのか?何でだ?」
「そりゃ、頂いた命は全て食べて供養をしないと!」
「お、おう、そうか。じゃあ、出してみてくれや。」
「はーい。……これです。」
「コレも氷漬けか……。」
「えーっと……あっ、これかな?」
討伐したカルキノスの腹部に刀傷があった。
「やっぱり……。これ、懸賞金が掛かってます。」
「「「えっ!?」」」
「えーっと依頼書によると、鍛冶屋のイジョクさんが素材の為、このカルキノスを捕まえようとしたところ反撃を受けて怪我をしたんですけど、俺を怪我させるぐらいのカルキノスの素材で武器や武具を作りたいということで、懸賞金が掛かってます。」
「ほぉ〜アイツをケガさせたカルキノスか。」
「そのイジョクさんって強いんですか?」
「一応、Bランカーですが、鍛冶屋が本職なので素材の為にギルド登録した方です。」
「「へぇ〜。」」
受付に戻って、ギルドプレートを更新してもらう。
「ということで、討伐依頼と懸賞金合わせての金額、それの折半した額を、それぞれにお渡ししますね。」
「「ありがとうございます。」」
「いえ、こちらこそありがとうございます。懸賞金が掛かっているものの中々達成する人がいなくて……。」
「どうしてですか?」
「カルキノスを特定出来ないからですね。普通のカルキノスより大きくて腹部の傷ありだけでは特定が難しいですから。」
「あーなるほーーー」
バンッ。
アリッサさんと話していると、背後のスウィングドアが大きく開かれる。振り返ると、肩で息をした顎髭のオッサンがいた。
「あっ、イジョクさん。」
「「え?」」
「おう、アリッサ。どいつだ?俺の仇を取ってくれた奴は?」
顎髭のオッサンは、受付に向かいながら大きな声で聞いてきた。
「あ、こちらのお二人です。」
「あ?嘘だろ?この娘っ子2人が、あのカルキノスを倒したってぇのか?」
「はい、そうです。」
「おい!娘、本当か?本当にあのカルキノスを討伐したのか?」
私とベルが揃って頷く。
オッサン……声がデカくて耳キーンってするよ。もう少し、離れるかボリューム落としてくれないかな?
ってか、娘って名前じゃないし!
「娘、お前ランクはいくつだ?」
「あなたの娘じゃありません!ジョアンです!Dランカーですけど何か?」
「あん?ガキの癖に生意気な。しかもDだと?本当にお前らが倒したのか、怪しいもんだな!正直に言え。」
「「………。」」
「ほら言えねーってことは、嘘なんじゃねーか。おい!アリッサ!いつからここのギルドは虚偽の達成報告を鵜呑みにするようになったんだ?」
何なんだこのオッサンは、何も言えねーって話すタイミングをくれないじゃない!
あー、もー面倒くさい。
「あん?うっせーよジジイ!!Dランカーで倒したら悪いのかよ?あー、Bランカーの癖に反撃されて逃げたらしいな?そりゃ、Dランカーが討伐しちゃったら恥ずかしいよなー?」
「ジョ、ジョアン……。」
「んだと?どこのガキかわからねー奴が、俺に偉そうに言ってんじゃねーぞ!俺はドワーフだから、お前よりもずっと年上だぞ!敬え!オムツも外れてなさそうなガキのくせに!」
「じゃあ、どこのガキかわからねーのに偉そうにしてんじゃねーよ!敬える人間だったら種族関係なく敬うわ!それに今からオムツするのは人の話も聞かない耄碌したジジイの方だろ!」
「んだと!!」
イジョクがジョアンに殴りかかろうとしたところに
「お止めなさい!!」
声のする方をみると、そこにはリンジーがロッテンマイヤーを引き連れて立っていた。
「「っ!!!」」
ジョアンとイジョクは、リンジーの存在に気づき固まる。
「久々にギルドに来てみたら、何です?この騒ぎは。」
「も、申し訳ありません。」
「貴女が謝る必要はないのよ、アリッサさん。……どういう事か説明出来るわよね?イジョク?」
「は、はい、もちろんです、リンジー様。えーっと、俺が懸賞金をかけて依頼したカルキノスを倒したと聞いてやって来たら、このクソガ……娘2人で倒したと嘘を言うもんで、俺が説教してやってたところです。」
「そう。で、そこのお嬢さん達は本当に嘘をついたのかしら?どうなの?そちらのお嬢さん?」
「いえ、私は嘘をついてはいません。ここにいる 仲(・) 間(・) 皆(・) ん(・) な(・) で(・) 協力して討伐しました。」
「嘘をつくな、たかがDランカーが討伐できるわけねー!」
「イジョク、黙りなさい!これ以上話の邪魔するなら、武力的に黙らせるわよ!……で、本当に討伐した証拠はあるのかしら?」
証拠……討伐部位だと誰かが討伐したものを持って来たって言われるわよね。どうしよう……あっ、もしかして……。
「あるかも知れません、証拠。ちょっと待ってて下さい。……ロッソ、帽子見せて。」
ロッソの額の魔石を隠すための帽子を確認する。
「あっ、やっぱりあった。ありました。」
「コレは?」
「討伐する際の映像が入っているはずです。」
「そう。では、確認しましょう。……そこで傍観しているゲルーシ、出て来なさい!」
2階に行く階段の踊り場にいたゲルーシさんに話をかける。
「あっ、これは奥様、気付きませんで。」
「嘘おっしゃい!まあ、いいわ。映像見るために、どこか部屋を貸しなさい。」
「んじゃ、俺の所で。」
ゲルーシさんを先頭に、お祖母様、イジョクさん、ロッテンマイヤーさん、私、ベル、アリッサさんの順に執務室に入る。歩いている途中で、アリッサさんに確認したらゲルーシさんはギルマス兼解体場の親方だった。早く言ってよ〜。
執務室に入り、録画魔道具を確認すると案の定カルキノス討伐の映像があった。それだけでなく、海岸でのゴミ拾いからさっきのお祖母様登場のところまで全て録画されていた。
イジョクさんは本当に討伐した事に驚き、ゲルーシさんとアリッサさんはパールとロッソの攻撃力に驚いていた。