軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

270.ファン

肩を抱かれ、誰かとよく見るとジーン兄様。ベルの肩を抱いているのはエリック様。

「ジョー、待たせたな。じゃ、達成報告しようぜ。」

「受付はあっちだな。行こうベル。」

ジーン兄様とエリック様が目の前の3人組を完全スルーで話を進める。側から見れば間違いなく、男連れの少女達に話をかけた3人組という立ち位置。普通であれば心が折れて、すごすごと退散するはず……。

「あ、あの……。」

まさか、この状況で話をかけると思わなかった私とベルはギョッとした。話かけたのは、ジョーイ。

「あ?何か用?」

珍しくジーン兄様が苛立っている。しかも、軽く威圧を出している。

「ヒィッ。あ、あの……も、もしかして……6年生のランペイル先輩とアダムズ先輩ですか?」

「そうだけど、だったら何?」

エリック様まで苛立って更に強く威圧を出す。

「「「ヒィッ……。」」」

威圧を受けながらも何とか3人組は目を合わせ頷くと

「「「お、俺たち、先輩達のファンなんです!」」」

「「「「はっ?」」」」

私、ベル、ジーン兄様、エリック様は理解が出来ず、ポカンと口を開けて固まった。なんなら周りの冒険者や受付のスタッフまでことの成り行きを見ていたので、ギルド内の全員が理解不能で固まった。

「いやー、マジ感激です。」

「ホント、ランペイル先輩とアダムズ先輩と話せるなんて。」

「俺、同級生に自慢します!」

何故か、ギルドの隣の酒場で皆んなでお茶をしている。

よくよく話を聞くと、今朝ジョアンとベルのことは本当にただの親切心で声をかけたらしい。その後、そう言えば食堂のテラスで憧れの先輩達と一緒にランチをしている子だということに気付き、達成報告に戻ってくるのを待っていた。お茶を誘ったのは、どうにかジーン達に会わせてくれないかとお願いをする為だったのだが、そこへジョアン達がナンパされているもんだと思って苛立ったジーンとエリック登場……で、今に至る。

「あー、なんだ。悪い。てっきりジョーに絡んだ輩かと思って威圧まで出しちまった。」

「あぁ、俺もだ。ごめんな。」

「いえいえ、こちらこそ先輩方の婚約者だとは知らなくて。」

「「「「はっ!?」」」」

「いやいや、違うから。」

また4人で固まってしまったが、いち早く復活したジーン兄様が慌てて否定する。

「えっ?違うんですか?呼び方とか距離も考えて、てっきり……。」

「ジョーは、俺の妹。で、ベル嬢はエリックの従姉妹だよ。」

「ごめんなさい。冒険者の時は家名を名乗ってないから。」

「ご、ごめん……なさい。」

「あー、頭を上げて下さい。こちらが勝手に予測したことですし……。」

盛り上がっているボーイズ達から離れて、ジョアン達は達成報告の為受付に行く。

「……はい、お疲れ様でした。ゴミ拾いの方はOKですよ。もう一つのカルキノス討伐に関しては、解体場で討伐部位を確認しますね。じゃあ案内しますね。」

ギルドの外へ出て裏手にある解体場に案内している途中で、受付のお姉さんがいきなり頭を下げる。

「ごめんなさい!ウチの弟達が。」

「「えっ?弟?」」

「さっきあなた達と一緒にいた3人組のうちのジョーイは、私の弟なの。」

「そうなんですか!?」

「それから……私兵団にいるガッツはウチの兄なの。ジョアン様には兄弟がご迷惑を。」

「えー!?ガッツさんの妹さん?」

「はい。4年前は兄が迷惑をかけて謝れていない間に、今度は弟が……申し訳ありません。」

「いやいや、頭を上げて下さい。ガッツさんの時は色々あってしょうがないですし、ジョーイさんは私たちのことを心配して……まあ、ウチの兄のファンだっただけで迷惑はかかってないですよ。」

「でも……。」

「私が大丈夫なんで、気にしないで下さい。えーっと……。」

「あっ、私はアリッサです。ありがとうございます。えっと、じゃあ解体場にいきましょうか。」

解体場に来ると、色黒なガタイの良い人が何人か忙しなく動いていた。

「親方〜お願いしまーす。」

「おうよ!」

アリッサさんの声に反応した、どの解体職員よりもグンを抜いて色黒でニカッと笑うと真っ白な歯が印象的なオッサンが振り向く。

うわ〜、黒光りしてるよ。

前世の有名な歌手みたい……。愛の〜甘いメロディ〜とか歌っちゃう?

「ここの……親方のゲルーシさんです。」

「っ!(名前まで似てんのかーい!!)」

「ん?見たことないお嬢さん達だな?」

「親方、こちらはウィル様のお孫さんのジョアン様と、お友達のベル様です。」

「あー、あの姫さんか。……噂に聞いていたより何とも可愛らしいじゃねーかよ。」

「あの……噂って?」

「あ?大男を何人も投げ飛ばして失神させたとか、あの干物の偏屈婆さんを手玉にとってるだとかだぞ。」

「「は?」」

えっ?何でそんなに話が盛られているのよー!

酔っ払いを1人だけ倒しただけだし、偏屈婆さんってさっちゃんのことよね?

「いやいや、話が盛られまくってますって。」

「そうなのか?まあ、でもウィル様とリンジー様の孫だから皆んなすんなり受け入れていたがな。」

「「……。」」

「……ま、まあ、ともかくカルキノスを見せて貰えますか?」

「あ、はい。えっと……ここで良いですか?」

「おう、いいぞ。」

あっ、やばい。氷漬けがデカいから通常の出し方が出来ない……。先に言うしかないかな……。

「どうしたの?ジョアン。」

「……ん?あっ、ごめん。えーっと、ストレージに入っているんですけど、ちょっと大きいので驚かないで下さいね。あと、出し方は私のストレージがSだからですから。」

「あ?よくわからねーが、ともかく出してみろや。」

「はい、では……。」ゴドンッ。

討伐部位のハサミを出す。

「「「「「っ!!」」」」」

「お、大きい……。もしかして、これって……ちょ、ちょっと失礼します。」

何か思い出したアリッサさんはどこかへ行った。

「姫さん、何で氷漬けなんだ?」

「えっ?鮮度を保つために。」

「食うのか?」

「えっ?食べないの?」

「ファンタズモは海産物が豊富だから、わざわざカルキノスを食べる奴はいねーな。」

「そうなの?」

「ああ。それにしてもデカいな。どうする?買い取るか?武器などに加工するから高く売れるぞ?」

「んーどうしよう?」

「ちょーっと待ったーーー!」

ベルと相談しているところに、アリッサさんが息を切らしながら走って来た。