作品タイトル不明
267.ブラウとの再会
翌日、予定通りにバースト領のベルファミリーに別れを告げて、ファンタズモに向けて発つ。途中、バースト領に向かった時のようにパールとロッソのお陰で魔獣に会うこともなく、2泊3日の移動は順調だった。
「おお、皆んなよく来たな。」
「まあまあ、あなたったらこんな所で。さあ、皆んなこちらへどうぞ。」
応接室に通されて、ジーン兄様からエリック様とベルそしてお付きでやって来たゾーイさんを紹介してもらう。
「ジーンとジョアンのご友人なら喜んで歓迎する。いつも孫達がお世話になっている。」
「ジーンもジョアンもあなた方を振り回してはいないかしら?何かあれば遠慮なく言って頂戴ね。」
「いえ、とんでもありません。いつも俺…いえ私たちがお世話になってばかりいます。今回もこちらにご招待頂き、本当に感謝しております。」
エリック様とベルが揃って、お祖父様たちに頭を下げる。
「そうか?なら良いが。」
「あっ、お祖母様。ここにいる間、空いている時で構いませんのでご指導をお願いします。ベルも。」
「あら?ベル様も?」
「は、はい。よ、よ、宜しくお願いします。」
「私で良ければ、喜んで。じゃあ、せっかくだもの皆んな纏めて鍛練しましょうね。ロッテンマイヤーも手伝ってね。」
「かしこまりました。」
「「「「えっ?」」」」
「お、お祖母様?皆んなとは……。」
ジーン兄様が何故か焦っているわ。
「それはもちろんジーン、ジョアン、エリック君、ベル様、サラ、ザック、ゾーイさんよ。」
「「「「っ!!」」」」
「やったね、ベル。皆んな一緒だって。しかもロッテンマイヤーさんも一緒なんて。」
「うん。すごく嬉しい!ね、ゾーイ。」
「はい。夢のようです。」
喜んでいるのは、私とベル、そしてゾーイさん。その他のメンバーは、絶句している。
「では、明後日に致しましょう。」
「「「はい!」」」「「「「……はい。」」」」
挨拶が終わり、お祖父様とベルと共に厩舎へ向かう。ファンタズモに預けている、ブラウに会う為に。
「お祖父様、ブラウはどうです?ここで、ちゃんとやれてましたか?」
「ああ、最初の頃はずっと落ち込んでいたようだが、ここにいる馬達に何か言われたようでな、それからは前向きに生活しておるよ。それに、ウチの馬番達からは馬達の通訳をしてくれるから助かると言われているな。」
「そうですか。なら、良かったです。」
でも、厩舎の馬や馬番との関係よりも気になるのは、フェミニストでナルシストなブラウのあの性格がどうなったか。
厩舎に行くと、スノーとゼクスがパカッと口を開けて固まっている。
「ス、スノーちゃん?ゼクス?」
『ジョアン……。ブラウが……。』
「え?何?どうした?」
『うっす、ジョアン様じゃないっすか!久しぶりっす!大きくなって更に可愛くなったっすね〜。』
「えっ?ブラウ?」
『そうっすよ。ブラウっす。何か親父もお袋もしゃべらなくなったんすよ〜。酷くないっすか?久々に会った息子に対して。』
「あー、あれじゃない嬉しすぎて言葉が出ないってやつ?」
『あっ、なるほどっすね。で、ジョアン様の隣の方は?』
「えっ?あっ、私の友達のベル。ベル、こちらが契約獣のブラウ……らしい。」
「らしいって?」
「いや、ランペイルにいた時はナヨナヨしてフェミニストでナルシストだったんだけど……。」
『俺だって成長したんすよ。こっちの先輩方に、指導頂いたっつうか、マジでリスペクトっす!ベル様っすね、よろしくーっす。』
「「……。」」
ナルシストが漢臭いファンタズモに揉まれると、チャラくなるの?
どういうこと?
「えーっと、お祖父様?その先輩方のリーダーはどこですか?挨拶したいから。」
「ああ、ここのリーダーはゼロだ。ワシの愛馬だよ。ほら、厩舎の奥にいる黒毛だ。」
厩舎の奥に行くと、綺麗な黒毛の馬がこちらをジッと見ながら、耳を後ろに伏せている。
「こんにちは、あなたがゼロ?触れてもいい?」
「ブルルー。」
ゼロの近くに行き、鼻の近くに手を伸ばし自分の匂いを嗅がせてあげるとゼロは警戒を解き、耳をまっすぐ上に立てていた。
首のあたりを手のひらでポンポンとたたいてあげながら、話しかける。
「ブラウのこと気にかけてくれて、ありがとうね。」
『ほう、アイツが言っていたように本当に話せるんだな。あー、ちゃんと挨拶していなかったな。俺が、この厩舎の長ゼロだ。お館様の相棒だ。』
「ご丁寧にありがとう。私は、ブラウの契約主のジョアンよ。……ところで、ブラウって何であんな感じになったの?」
『知らん。』
「即答!?」
『知らんが……しかし今日はいつもと違うんだ。いつもあんな感じではない。』
「えっ?そうなの?」
『お嬢の知るアイツはどんなだ?』
「えーっと、フェミニストでナルシスト。女性に対して紳士的だけど、それ以上に自分が大好きすぎる自信家。」
『……確かにな。来た当初はそうだった。しかし、ここに来てからは己の成長の為に頑張っていたぞ。紳士的なのは変わらないが、そこまで自分大好きというわけではない。誰に対しても礼儀正しいし、冷静だ。ただ昨日から、落ち着きがなくてな。たぶん、お嬢たちが来ることがわかったからだろう。で、今朝になったらあんな話し方になっていた。』
「なるほど〜。ランペイルにいた時とは違うって事を見せたかったけど、どう見せたら良いかわからなくてあんな感じになっちゃったと……。」
『まあ、そうだろうな。』
「『はぁ〜。』」
ゼロに再度お礼を言って、ブラウの元に戻る。
『あっ、ジョアン様。どうっすか?ゼロ先輩、いい男っしょ?』
「………。」
『ジョ、ジョアン様、どうしたんすか?』
「ブラウ……。無理しなくて良いよ。いつも通りで。」
『えっ?』
「ゼロが言ってたよ、いつもは冷静で礼儀正しいって。今朝から、そんな喋り方なんでしょ?」
『……。』
「ブラウ?ちゃんと答えて。」
『……自分では以前とどう変わったかわからなくて……。もし、変わってなければジョアン様の元には戻れないかと思って……。』
「ブルルー。」『ブラウ……。』
スノーもゼクスも心配そうに見ている。
「ブラウ、私たちがここにいる間はいつも通りにして。そうじゃなきゃ、判断出来ないよ?ちなみに、さっきみたいなテンション高めのチャラい感じは無理!」
『っ!!ご、ごめんなさい。止めます、すぐ止めます。』
「よし!じゃあ、いつものブラウでいてね。」
『はい!』
ブラウの言動などには私だけじゃなく、親であるスノーちゃんとゼクスも引いていたからね〜。
アレが、急遽作られたもので良かったー。