作品タイトル不明
138.第二王子とジョアン
フレッド殿下……【雷】属性のアルバート殿下に怒られて、先程の威勢とはうって変わってシュンとしちゃったわ。
あーあれだわ。警察24Hとかでよく見る、泥酔して暴れて保護されて、翌朝平謝りで帰って行くモザイクの人みたいだわねぇ〜。
そのモザイクはかかっていないフレッド殿下が、私の側へやって来た。
「も、申し訳なかった……ジョアン嬢。その……少しだけ少しだけで良いから、そのペガサスを触らせてくれないか?」
フレッド殿下に謝られて、その上お願いされたら許可するしかないじゃない……。
「はい。スノーちゃん、お願い。」
『かしこまりました、主。』
スノーちゃんは私の背後から出て、隣に立つが顔はそっぽを向いたままだった。
「フレッド殿下……こちらを。」
ポシェットの中ーーに見せかけたストレージからーーキャロジンを出して、フレッド殿下に渡す。受け取ったフレッドは、スノーちゃんにキャロジンを出しながら
「スノーよ、先程は俺が悪かった。食べてくれるか?」
スノーちゃんは仕方ないわねという顔で、キャロジンを食べる。
「おお、美味いか?良かった良かった。」
フレッド殿下は笑顔で、スノーちゃんの頸を撫でている。
あー、フレッド殿下って典型的なガキ大将タイプね。
お前のモノは俺のモノ、俺のモノは俺のモノ!だったのねぇ〜。まあ、王子様だもん俺様になるかしらねぇ〜。
「……あの〜、良かったら飛んでみますか?」
「何!!」
「も、申し訳ありません。不敬でしーーー」
「良いのか?騎乗させてもらっても。」
「も、もちろんです。ただ私と一緒で良ければですが……。」
「かまわん。頼む。」
スノーちゃんに跨り、私の後ろにフレッド殿下が跨る。
「スノーちゃん、お願い。」
スノーちゃんはしばらく 常歩(なみあし) をし、羽を広げる。
フワッ…。「おお、すごい……。スノーは、すごいな。」
「お褒め頂き光栄でございます。」
本当にスノーちゃんからの眺めは最高だわ。
まさか、お城の上を飛べるなんてねぇ〜。
ふふふっ、ガキ大将に感謝かしら。
「なあ、ジョアン嬢。本当に、さっきはごめんな。」
「先程、謝罪頂きましたのでそれ以上は……。」
「また、スノーに乗せてくれるか?」
「ん〜、検討致します。」
「な、何だと!!俺が下手に出てやったのに!」
また、ガキ大将スイッチ入っちゃったわ……。
本当に面倒な子だよ〜。
もう、いっそのことへし折った方が、後々この子の為にもなるんじゃないかしらねぇ〜。
「……不敬を承知で申し上げます。フレッド殿下、自分の思い通りにいかないからと言って、すぐにカーッとなって先程のように手をあげたり声を荒げたりするのは止めた方が良いかと。殿下は王族なのです。どれだけ殿下の言葉が重いかわかっていらっしゃいますか?発言一つで、その人の今後の人生が決まるんですよ?先程だって、アルバート殿下が止めていなかったら、私は叩かれていました。殿下に叩かれた私は、非がなくてもずーっと殿下に不敬を働いた者として言われ続けるんです。そうなったら……私はもう死ぬしかありません。」
「死ぬだと……?」
「はい、そうです。なぜなら周囲の貴族からは我が家の弱点と見られて付け込まれるでしょうし、もちろん結婚さえも出来ません。私は大好きな家族に、領民たちに迷惑はかけたくありませんもの。それだったら命を捨てた方が良いです。」
「そ、そんな……。」
「先程だって、陛下とアルバート殿下以外に止めることも出来なかったじゃないですか。……それに気付いておられましたか?殿下に不敬を働いたとして、殿下の護衛騎士様が抜刀しようとしてたのを。」
「えっ!?」
「アルバート殿下が止めてくださらなかったら、あの時既に死んでいたかも知れませんね。そしたら、いくら臣下で……陛下の幼馴染である私の父でも、どのような行動を取ったでしょうか? ……殿下はそれだけの影響力をお持ちの方です。行動にしろ言動にしろ気をつけていなければ……言質を取られてしまい、ご自分の首を絞めることになりかねませんよ?」
「………。」
「申し訳ありません、差し出がましいことを。……スノーちゃん、下へ。」
中庭の上を旋回して降りる。
「フレッド殿下、大丈夫ですか?」
護衛騎士が駆け寄り、私を睨みつける。俯いていたところに話かけられビクッとしたフレッド殿下だったが
「あ、ああ、大丈夫だ。……ジョアン嬢、ありがとう。スノーもありがとう。」
「恐れ多いお言葉です。」
「ああ、良いんだ……。じゃあ……。」
そう言ってフレッド殿下は護衛騎士様を伴って帰って行った。
その様子を見ていた陛下と宰相様は
「ん?どうした、フレッドは?」
「はて?怖かったんでしょうか?」
私に言い負かされて、心をへし折ったなんて言えないわ……。内容的には正論だけれど、どう考えても不敬になるモノねぇ〜。
でも、誰かがフレッド殿下に言わないと……あの子、このままじゃあバカ殿下になっちゃうもの……。