軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

悪役令嬢にざまぁされたくない令嬢の婚約者は、愛に気が付く~レフィトside①~

「一瞬で倒す!!??」

驚いたカミレの声に、可愛いなぁと頬がゆるむ。

カミレに救われているのは、守られているのは、いつだってオレの方なのに、そのことに気づいてもいない。

特別だから強いんじゃない、ずっと頑張ってきたから強いんじゃないかってカミレが言ってくれた時、オレがどれだけ救われたか……。

騎士団長の子息として、強いのなんて当たり前で、強くなればなったで、特別だと言われる。

オレには、それしかなかったから剣を選んできた。

頑張ってきたという自覚もない。それでも、積み重ねてきたものを特別だと言われるのは、正直なところあまり良い気分ではずっとなかった。

ただ、それを拒否すれば、輪の中から弾かれそうで言えなかっただけ。

オレって、強くなっても、言いたいことも言えないような、臆病者なんだよなぁ……。

それに比べて、カミレは自分以外のこととなると強い。

意識することなく、心を守ってくれる。

誰よりも優しい、心がキラキラした女の子なんだ。

「カミレに良いところを見せないとなぁ」

少しでも、オレのことを好きになってくれるように。

オレだけしか、目に入らなくなるように。

そのためなら、どんなことだってできる。

そこからの試合は、対戦相手が木刀を振り上げる隙も与えないまま、すべて倒した。

トーナメントを勝ち上がって行けばいくほど、試合間隔は短くなっていくから、もうカミレのところに戻っている暇はない。

けれど、次を勝てば昼休憩が入る。

目の前に立つログロスが、睨みつけてくるけれど、そんなことはどうでもいい。

早く、カミレのところに行きたいなぁ。

「お前、マリアンに何を言ったんだよ。泣かしやがって……」

「もうマリアン嬢のところには戻らないって言っただけだよぉ。ログロスにとっても、いい話でしょぉ?」

「何がだよ!! 好きな女が泣いてて、良いも悪いもあるわけないだろ!!!!」

これだから、 ログロス(馬鹿) と話すのは嫌なんだよなぁ。

すぐに感情だけで怒って、それを隠そうともしない。

何より、婚約者がいるくせに、別の人を好きな女って言うクズさが不快でしかない。

「オレがいなければ、あの中ではログロスが一番強くなるんだよぉ? 頼ってもらえる機会が増えたんだから、喜べばいいのにぃ」

せめて、好きだと言うのなら、綺麗事ばっかり並べてないで、もっと必死になりなよ。

王子から奪おうともせず、今の状況に甘んじてるところも、本当に理解できない。

そう思うと、マリアン嬢のことはただ面白がっていただけで、別に好きでも何でもなかったんだなぁ……。

もし、カミレが他の男と婚約していたとしても、その場所を全力で奪って、オレの婚約者にする。

それができないなら、カミレをさらって閉じ込めて、オレだけのカミレにしてしまうだろうから。

「クズだな」

うん。たしかに、ログロスの言う通りかもねぇ。でもさぁ……。

「その言葉、そっくりお返しするよぉ。現状も打破する気もない臆病者に言われたくないしねぇ」

「ぶっ殺してやるからな……」

「できないことは、言わない方がいいよぉ」

弱い犬ほどよく吠える。

その言葉を思い出し、笑ってしまう。

犬の方が利口だとも言われてたっけ。

そばにいなくても、カミレはこんなにも面白い。

「レフィト、頑張ってー!!!!」

カミレの声に、手を振ろうとそちらを見れば、見たこともないものを持って、振っていた。

「レフィト頑張って? 一撃必殺?」

丸い紙に文字が書かれていて、それを振っている。

何で、そんなことをしているのか……。分からないことだらけだ。

それでも、その言葉がオレへの応援なんだということは、伝わってくる。

「なんだ、あれ。お前の婚約者、頭おかしいんじゃないか?」

「黙りなよぉ。死にたいのかなぁ?」

前にも言ったのに、馬鹿だから忘れちゃったのかなぁ?

あぁ、変装に気がついてないから、分からないのか。

オレの最愛にそんなことを言って、許されるわけないのにねぇ。

今度は、この姿で教えてあげなきゃかなぁ。

でも、カミレのところにすぐに戻りたいし、痛めつけてる時間は惜しい。

それでも痛めつけなければ、気が済まない。矛盾だなぁ。

「三分だけ、遊んであげるよぉ。すぐには起き上がれなくしてあげるからねぇ」

地面に倒れたまま意識はあるのに起き上がれないなんて、ログロスからしたら屈辱だろう。

弱いくせに、力自慢をしている馬鹿だからねぇ。

ログロスがまだ吠えているけど、もう相手にはしない。時間の無駄だから。

そんなことより、紙を振って応援するという独特のスタイルを見せているカミレを、しっかりと目に焼き付けようともう一度見れば、書かれている文字が変わっていた。

真っ赤な顔で、それを見せている姿にも、その言葉にも、どうしていいのか分からないくらい嬉しい。

試合なんか放り出して、今すぐカミレに抱きついて、オレもだと言ってしまいたい。

だけど、優勝しなければ、大会に出た意味も騎士の誓いを捧げた意味もなくなってしまう。

審判の声で、木刀を握り、ログロスと向かい合う。

「始めっ!!」

ログロスが木刀を振り上げるより速く、 脛(すね) へと打ち込み、バランスを崩した体に更に打ち込んで、木刀で受けさせる。

そのまま強く押せば、ログロスは尻もちをついた。

この状態でも木刀を片手で握ったまま、競り合えるのは、流石とも言える。

だけど、やっぱり弱い。オレに勝てることは、生涯ないだろう。

「力任せじゃ、通用しないよ」

剣術大会というだけあって、剣以外は禁止。

足で踏みつけてやりたいけど、反則になるわけにはいかない。

「力も使い方があるって、そろそろ覚えなよ」

そのまま、ログロスの木刀ごと、ログロスの右肩を殴った。

痛みで木刀はログロスの手から離れていく。

「チェックメイトだ」

木刀の先を、ログロスの首に触れる程度に突きつけた。

試合終了。きっかり三分。

オレも大好きだと伝えるために、カミレの元へと向かおう。

でも、その前に──。

「オレの最愛を悪く言うなら、次は殺すからねぇ?」

痛みで呻くログロスからの返事はない。

それでも、忠告はした。

本当はカミレが嫌がるから殺せないけど、これくらいは言わないとだからねぇ。