軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

孤児院へ行こう~レフィトside~

そう、カミレは困っている人を放っておかない。

ただし、相手がそれを受け入れるか。それによって、カミレの行動は変わる。

相手が望まないものを無理に持たせたりはしないから。

「具体的に何か案は出そう? オレの方でも考えてはみるけどぉ」

「誰にでも作れるものだよね。難しいものは無理だろうし、かといって既にあるものも避けたいんだよなぁ……」

あーでもない、こーでもないと、カミレはぶつぶつと考え始める。

剣術大会での応援うちわに、ウサギの形に切ったりんご。カミレは既にあるものを、柔軟な発想力で新しい形へと作り変えていた。

もしカミレが主導のもと、サヴィオス修道院と孤児院の経済状況が改善するとしたら、カミレに向けられる視線は、また大きく変わることとなる。

「うーん。私が作ったことあるのは、ミサンガ、あみぐるみ、ビーズ小物、かごバッグくらいかな……」

「どれも聞いたことないけど、どんなやつ?」

そう聞けば、カミレは丁寧に説明してくれる。

「私には無理だけど、人によっては新しいデザインの考案もできるかも……」

「なるほどねぇ」

どれもこれも、商品になるものばかりだ。

だけど、このままだと──。

「ねぇ、前にオレが渡した万年筆、いつも持ってるよね?」

「えっと……ナイフの?」

「そうだよぉ。万年筆に見せかけたやつ」

万年筆型のナイフ。

今のところ活躍はしていないし、今後も使わないに越したことはない。

けど、嫌な予感がする。

「持ってるけど……」

「絶対に、肌見放さず持ち歩いてねぇ」

戸惑ったように、カミレが頷く。

この短時間で、カミレは新しいものの例をいくつもあげた。

特にかごバッグやビーズ小物は、新しい流行になるかもしれない。

カミレのアイデアが金になる。そう周知されれば、カミレを狙うものがでてくるかもしれない。中には強硬手段を取って、自分のもとに置こうとする者も。

「何かあってもなくても、絶対に教えて」

「……何かあるの?」

「今はまだないよぉ。でも、カミレのアイデアはどれも価値があるから」

驚いたようにカミレの瞳は見開かれ、マーサは心配そうにカミレを見た。

「本当にお気をつけください。世の中には、自身の利益ばかりを追求する者もいらっしゃいます。普段は善良でも、欲にかられる者もおりますから」

「……はい。あの、修道院で新しいものを作るということは、ここも狙われますよね?」

小さいけれど、確信を持った声でカミレは言う。

「何もしなければ、いつか今の生活すら厳しくなるかもしれません。けれど、ここに住む方たちを危険にさらすことは、私の本意ではありません」

空色の瞳がまっすぐにマーサへと向けられる。

「なので、思いついた中で一番利益の出なそうなものをカガチさんに相談のもと作るのはどうでしょうか? もちろん目立たないように、売上を調整して」

「うん。そうしたいけど、それだと建物の修繕まではなかなか難しそうだねぇ」

ということは、どこで作っているのか隠す必要がある?

だけど、それだとカミレをここに連れてきた意味がない。

「……たとえ王族であろうと教会は不可侵となっております。危険になることは、そうないのではないでしょうか」

「それは、教会に手を出す利益がなかったからだと思います。こうなってくると、根本的な仕組みに問題がありますよね。どうにもできませんけど……」

カミレは小さくため息をこぼす。

「根本的って?」

「教会が不可侵なのって、誰もがそうだと思っているからでしょ? 実際、警備している人もいないし、侵入しようと思えば、私でもできると思う」

「たしかにねぇ」

何だかんだ王都は治安がいい。

けれど、修道院は国が不可侵な分、謎も多い。

それこそ裏で何をやっていたとして、追及されないほどに。

けど、そのことを 国王(あのおっさん) が気付いてないとかあるだろうか。

「ま、不可侵と言われつつ、何もなかったのは実は守られている部分があったんだろうねぇ。孤児院だけでも、国の支援受けた方がいいんじゃない?」

「ですが、そのことで修道院にも口を出されることもございます」

頑(かたく) なだなぁ。

この状況でここまで拒否するってことは、過去に何かあったのか……。

調べる必要があるねぇ。

「ま、とりあえず、何かしら稼ぐ方法を考えるってことでぇ」

「うまくいくのでしょうか……。私には商売の経験はございませんから」

「うん。だから、オレの知り合いにも相談するよぉ。このままってわけにはいかないだろうし。損失が出た場合は、オレが 補填(ほてん) するから、安心して挑戦しなよぉ」

そう言えば、マーサは黙ってしまった。

このままでは駄目だと分かっているけれど、貴族の手は借りたくないといった感じだろうなぁ。

「その代わり、カミレの噂を広めてほしいんだぁ。損得関係なく孤児院を手伝いに来てくれる心優しい貴族令嬢がいるって」

「ちょっっ、レフィト!? 何言ってるの?」

カミレが慌ててオレを止める。

「事実を話すだけになるし、問題ないでしょぉ」

「そうじゃなくて! こんな利用するみたいなこと、駄目だよ」

小さく首を振り、心配だとオレを見る。

そんなオレたちに、マーサは安心したように表情をゆるめた。

「お気遣いありがとうございます。……今のレフィト様がいるのはきっと、カミレ様のおかげですね」

「えっ!?」

「他者への気配りができる、素晴らしい方になられました。何より、カミレ様を愛していらっしゃる。その姿を見ることができて、とても嬉しく思います」

マーサの言葉にカミレは首まで真っ赤に染める。

「カミレから愛を教わったからねぇ」

「レフィトっ!?」

「カミレがいてくれるから、オレはオレが存在していいと思えるんだぁ」

重すぎる想いをぶつけても、カミレは照れながら受け入れてくれる。包んでくれて、返してくれる。

「レフィトが好きだから一緒にいる。それだけだよ」

うん。カミレにとっては、それだけのこと。

だけど、オレにとっては、欲しくて欲しくて、それでも手に入らなかったもの。

カミレと出会って、やっと手に入れたもの。

「ただそれだけが、案外難しいものですよ」

マーサはそう言うと、立ち上がる。

「修道院と孤児院を見たいとお聞きしております。ご案内させていただいてもよろしいでしょうか」

「うん。よろしく頼むよぉ」