作品タイトル不明
密会〜レフィトside〜②
「俺の意見で変えるのか?」
「んー、出方は変えるよぉ。さっきも言ったじゃん」
カガチが聞きたいことから、少しズラして答える。
そんなオレに「答えるわけないか」と気にした様子もない。
「レフィトがリカルド様についたところで、形勢は変わらない。レオンハルト様が圧倒的に有利だぞ」
「そんなの知ってるって。それでも、リカルドにつくんでしょぉ?」
「……表向きは中立を保つけどな」
あぁ、カガチは本当にオレの欲しい答えをくれる。最高だ。
「オレが知ってるってことは、カガチも気づいてるよね? 優秀な下位貴族の子息たちはリカルド側に付き始めてるってさぁ」
「かなり厳選されてな。リカルド様自身が動くと目立つ。優秀な人間がリカルド様側についているんだろう」
「その人物、誰か見当はついてる?」
「見当は……な。確信は持てない」
そうかぁ。カガチでも、確信が持てないか。
これだけ情報を流してくれるあたり、大サービスなんだろうなぁ。
いや、カガチとしても見極めの時期に入ってるのか?
「国王様には、隠したところでお見通しだろうけどな」
「あのおっさん、目ざといからねぇ。優秀な人材を能力重視で囲ってるわりに、高位貴族から不満が表面化しないとか、どうやってるのかねぇ」
「さぁな。あちこちで貸しを作ったり、弱み握ったり忙しそうだけどな」
「あはは、そうだねぇ。息子たちのことも、見てないようで見てるだろうし。監視係がどっちにつくかも結構重要な要素だと思ってるんだろうなぁ」
身近で見ている人物に見限られるって、問題があるって言ってるようなもんだからねぇ。
王子はそのことにすら気づいてないだろうけど。
「あ、確認なんだけどネイエ嬢と婚約したらってのは、勢力的なバランスでってことぉ? それとも、リカルドがネイエ嬢を引き込めた手腕を買ってなのかなぁ?」
「聞かなくても、分かるだろ」
うんざりとした表情で言われるけど、確認って大事。
うん。でも、これで分かった。
「そっかぁ。両方かぁ。オレとカガチの考え方、やっぱり似てるねぇ」
今度は苦虫を嚙みつぶしたような顔をされる。
失礼なヤツだなぁ。
「話によっては、オレはリカルド側につくかもねぇ。間違っても二度と王子側につくことはないけどぉ」
「だろうな。ということは、リカルド様は カミレ(お嬢さん) と接触しても、レフィト的には良いってことか」
「色々と失礼だから、あんまり近付けたくはないけどねぇ」
「そうなのか? 文通仲間らしいし──」
「はっ!?」
どういうこと?
オレ、そんなの聞いてないんだけど……。
「リカルドのとこ、案内してくれる?」
「げっ。まさか、知らなかったのか? うわっ。俺めちゃくちゃ余計な事言った感じじゃん。今の聞かなかったことにしてくんない?」
「無理。ほら、さっさと連れてってよ」
いつものカラッとした雰囲気になったカガチに連れられて、リカルドの待つ部屋へと向かう。
まずは文通の件、しっかりと聞かせてもらわないとだよねぇ。
通された部屋は、応接室としては若干狭いし、飾り気もない。けれど、話し合うには十分な広さの部屋で、ソファーとローテーブルが置かれている。
「久しぶりだね」
そう言いながらソファーに座って足を組み、優雅にお茶を飲んでいるリカルドに腹が立つ。
「 剣術大会(この前) 会ったばっかだよねぇ? それより、誰の許可をとってカミレと文通してるのかなぁ?」
「カミレ先輩のだよ? あれ? レフィトの許可もいるんだったのかな? というか、文をやり取りしてるって、カミレ先輩から聞いてないんだね。まぁ、そんなに束縛が強いんじゃ言えないか。カミレ先輩、かわいそう」
「は?」
かわいそう? カミレが?
「カミレに嫌そうにされたことなんてないんだけどぉ。おまえの価値観を押し付けてくるのやめてくんない?」
「何言ってるの? 人間誰しも、自分の価値観でしか物事を測れないよ」
「それなら、余計な口出ししないでくれる?」
「レフィトが僕とカミレ先輩の文通に口出ししたんだよね?」
こいつ……。
胸元に仕込んであるナイフ、投げてやろうか……。
そんなオレの苛立ちに気が付いたのか、カガチが大きな声を出した。
「はいはいはいはいはーい! そこまでにしようか。レフィト、落ち着けって。リカルド様も婚約者のいる令嬢と文通は良くないですって」
「……そうなんだ?」
「当たり前じゃないですか。お嬢さんが不義理を疑われる可能性がありますから」
「お嬢さん?」
「レフィトの婚約者ですよ!」
「あぁ、カミレ先輩のことか」
なるほど……と言った風にリカルドは頷いたけど、たぶん分かってない。
「文通といっても疑われる内容は何もないから、問題ないよ」
「問題しかないってぇ。それに、疑われる内容だったら、すぐにリカルドの首と胴はさよならだからぁ。どんな理由があって、カミレと文通なんかしてるわけ?」
「カミレ先輩は推し友だからね」
「「……は?」」
推し友? 何言ってるんだ?
「僕が渡した推しの本の感想を言い合ってるんだよ。ついでにネイエ嬢の攻略も聞いてるけど」
「意味が分かんないだけど」
「だから、カミレ先輩は僕が布教した本でハマってくれたんだよ。好きなことについて語り合うのって、最高だね」
「いや、そっちもだけどネイエ嬢の攻略をカミレに聞いてどうするのかなぁ?」
「ネイエ嬢が僕と婚約したくなるようにアプローチするつもりだけど? あ、カミレ先輩は、僕がネイエ嬢を好きだって勘違いしてるね。困る勘違いでもないし、訂正することに意味を見出だせないから放っておいてるけど」
その言葉に、何でカミレが黙ってるのか理解した。
きっと、人の恋愛を勝手に話すなんてできないよ!! って言うんだろうなぁ。
というか、知らぬ間にカミレが厄介なのにすっかり好かれてるんだけど。
いや、何かあったらリカルドをカミレの防波堤にできると思えば、悪くないのか?
そう思うけど、やっぱりすっごく気に食わない。何より気に食わないのが──。
「カミレのこと利用したってことだよねぇ?」