作品タイトル不明
密会〜レフィトside〜③
オレの言葉に、リカルドはキョトンと首を傾げている。
「人間関係なんて、利害関係で作られてるんだから、当然だよね。レフィトだって、カミレ先輩を利用してるでしょう?」
「はぁ?」
「あれ? 自覚ないの? そんなにもカミレ先輩に固執してるってことは、レフィトにとって何か特別に良いことがあるからだよね? カミレ先輩の場合は、物理的な利益は無理だから、心理的なものかな? それで、レフィトは物理的な利益を与えてるってところかな……」
何を言ってる?
カミレとオレの関係を、そんな言葉で勝手に当てはめて。カミレとオレはそんなものではないのに。
おまえなんかが何を知っている?
邪魔だし排除……は、できないか。
するにしても、準備がいる。
リカルドにバレないように、ゆっくりと息を吐き出し、湧き出てくる殺意をグッとのみ込む。
カミレが アルストロメリア王国(この国) で平和に生きていくには、リカルドがいなくなると不都合が大きい。
この国の王子は三人で、まだ第三王子は幼い。王女もいるが、他国へと嫁ぐことが決まっているし、そもそも女性の王位継承権が認められていない。
王弟もいるけれど、 国王(おっさん) が王位に継いた時に継承権を自ら捨てている。
リカルドがいないと、 レオンハルト(王子) の王位継承が確定となるだろう。
そうなったら、マリアンの権力は更に高まる。
だから、リカルドはまだ必要だ。処分できない。
そんなオレの葛藤も知らずに、リカルドは興味津々といった視線を向けてくる。
カミレを連れてこの国から逃げてしまおうか……。そう考えるものの、カミレが悲しむことは容易に想像がついてしまった。
カミレにとっての大切な人が、枷になっている。
けれど、それはカミレを守るための壁でもあり、カミレが幸せに暮らすための庭に必要な材料でもある。
だから、まだ間引いたりはしないけれど、もっと増えてきたら定期的に整理が必要になるだろう。
こいつもその時に、庭から追い出してしまえばいい。
カミレを利用するようなヤツは、いらない。
今はまだ、必要だから仕方なく置いておくだけ。
「利益なんか関係ないよぉ。カミレだから、そばにいるんだぁ」
そう言ったオレに、カガチは顔を引きつらせた。
あぁ、やっぱりカガチはきちんと読み取ったのか。
おまえとは利害が一致しなくなれば、そこで関係も終了だと。これ以上、踏み込むなと。
直接言葉にはしないけれど、言外にオレがそう言っていると、他者の感情に聡ければ気が付ける。
残念ながら、リカルドにはまったく伝わってないみたいだけどねぇ。
その証拠に、まだ好奇心を隠すことなく、口を開こうとしている。
「違うの? カミレ先輩に母親の愛情を求めているのかと思ったんだけど。ほら、レフィトの家ってフィラフばかり愛されて──」
「リカルド様っ!!」
珍しく、カガチが大きな声を出した。
別にオレはもう気にしてないんだけどなぁ。
あぁ、そうか。カガチは未だにオレがそのことで傷つくと思っているのか。
「カガチ、大丈夫だから。心配ありがとねぇ」
カガチに向かって、ヘラリと笑う。
オレにとって、痛くて触れられたくなかった記憶も、今ではただの過去となっている。
カミレがいてくれたから、過去にできた。
母親(あの人) のことを言われても、古傷が痛むこともない。
「リカルドさぁ、何がしたいわけぇ?」
「うーん。別に何がしたいとかはないかな。ただ、利害関係のない人間関係なんてないのになって思ってるだけだよ」
「それは、リカルドの考えでしょ? 押し付けてくるの、やめてくれないかなぁ?」
過去と今を無理に繋げたって、そこにリカルドのほしい答えなんかない。
あぁ、リカルドは人の感情の機微が分からないから、理由がほしいのか。理由がないと納得がいかないのかも。
あとは、あの人のことを出せば、オレの感情を揺さぶれるとでも思っているのかもねぇ。
このあとの話を有利に進めるために、動揺させたかったのかな?
たしかに、少し前のオレだったら揺さぶれたかもしれない。
けれど、今は家族なんてどうでもいいし、気持ちが冷めるだけだ。逆効果だよ。
「うーん。おかしいな……。レフィト、ちょっと変わった? あ、そうだ! もうひとつだけ聞かせてよ」
「何? さっさと本題に入りたいんだけどぉ」
「あと一つだけだから! ね、愛って満たされるの? 教えてよ」
「あ゛?」
馬鹿なのか? もう、そんな挑発に乗らないって分かったんだろ?
しつこくて、嫌になるなぁ。
答えなんて決まってるのにさぁ。
「そんなの満たさ──」
「駄目だ。レフィト! おまえはカミレちゃんと幸せになるんだろ!!」
「は?」
答えきる前に、カガチに後ろから羽交い締めにされる。
振りほどくのは簡単だけど、あまりの必死さに唖然としてしまった。
「おまえが捕まったら、カミレちゃんはひとりになるぞ」
えーっと。何を勘違いしてるのぉ?
オレ自身を攻撃されたところで、別に何とも思わないんだけど。
というか、これ、いつまでやるつもりなんだろぉ。
それに、カミレのこと名前で呼ぶなって言ったよねぇ?
「友だちができたって、カミレちゃんの一番傍で支えてるのはレフィトだろ。レフィトがいるから、カミレちゃんは自分の足で立ってられる。おまえがいなくなったら、マリアン様にとって食われるぞ。いくらネイエ様でも守りきれねーよ!」
あーぁ。リカルドなんか爆笑してるし。
オレのためだと思ってやってるって分かると、振りほどきにくいんだよなぁ。
あれ? 前はこんなこと思わなかったはずなのに。オレらしくない。
これも、カミレの影響?
もしそうなら、嬉しい。カミレがオレを書き換えて行ってるってことだもんねぇ。
でも、一つだけ許せないことがあるんだよなぁ。
「……カミレのこと名前で呼ぶなって、言ったよね」
「そうだよ!! カミレちゃんのことを名前で……って…………。え?」
「離してくれるぅ?」
そう言った瞬間、カガチは後ろに飛び退いた。