軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第三十九話 合同依頼

第三十九話 合同依頼

ケニングの部品が届いた翌日。

小鳥遊さんは璃子先輩と共に、ケニングの修理中である。機械関連の知識はないので、力仕事以外で手伝える事がない。しかし、その腕力でどうにかなる仕事は届いた日に終わってしまった。

そんなわけで、今日は完全にオフである。……が。

放課後、自分は再び小鳥遊さんの家を訪れていた。と、いうのも。

「ふう……」

ガラスペンを置き、机の上にある文章を眺める。

そこに描かれているのは、この世のどの言語とも異なる文字。神代の終わりと共に、引き継がれる事なく終わりを迎えた文化の一端。

魔法文字である。

自宅でのスクロール作成は、どうしてもスペース的に厳しい。なんせ、書き終わったスクロールを乾燥させるスペースが自室の床ぐらいしかないので。

その点、小鳥遊さんの家は空き部屋が多い上に、家自体が大きい。彼女の厚意により、作業部屋を2部屋も貸してもらっていた。

誤字脱字が無いかを確認し、魔力が通っているかも確かめ、小さく頷く。

「ん……!」

軽く体を伸ばすと、肩や背中にほんのりと痺れる様な感覚がする。それが、少し気持ちい。

これで、9本目のスクロールだ。かなり魔力を使ってしまった事もあって、どうにも頭が重い。

家でやるよりも捗るからと、調子にのってしまった様だ。一度にこの数を作ったのは、久々である。

しかし、魔力切れの感覚はない。霊格が成長している証だろう。これがゲームだったら、『LV:12』ぐらい?そろそろ、ルーキーの名前が外れてもいい……かも?

そんな事を考えるが、苦笑と共に頭を横に振る。

冒険者になって、まだ1カ月だ。濃い経験をしたとは言え、まだまだ初心者である。

慢心、ダメ絶対。自分にそう言い聞かせ、隣室へとスクロールを運ぶ。

床に敷かれた新聞紙の上に載せ、先に置いておいたスクロールをチラリと見た。あともう少し、かな?

ゆっくりと扉を閉じ、作業部屋に戻る。

最初は1室貸してもらえれば十分だと思っていたのだが、こうして2部屋も貸してもらえると、この快適さに慣れてしまいそうだ。

もう1本か、2本は書けそうである。

軽く肩を回した所で、ふと今が何時か気になってきた。

ポケットからスマホを取り出すと、いつの間にか1時間半も経っていたらしい。体感時間は、その半分ぐらいだったのだが。

意外と、スクロールに向き合う時間が自分は好きなのかもしれない。

ちょっと職人っぽくって格好良いかもと、自画自賛する。

「あれ?」

そこで、スマホに通知が来ている事に気づいた。マナーモードにしていたので、分からなかった様である。

15分前に、虎毬さんから送られていたらしい。

小さく首を傾げながら、中身を確認する。

その内容を要約すると……。

「ダンジョン探索の、合同依頼?」

異能者は数が少なく、冒険者は更に少ない。

その為、複数のクランで協力しダンジョンの探索に当たる事はある。ネットや講習会の知識だが、そういうのは珍しい事ではないらしい。

虎毬さん曰く、彼女のクランメンバーが1人、ダンジョンの探索中に負傷してしまったそうだ。しかし、『間引き』の滞っているダンジョンがクラン近くにあるらしい。

そこで、1回だけで良いから自分に手伝ってくれとお願いしてきた様だ。

……もしかして、ケニングの事を聞きだす為だったりする?

そんな疑いが浮かぶも、流石に考えすぎかもしれない。その思考は、一端頭の隅に置いておく。

自分が了承するか、判断をクランマスターに委ねるという場合は、虎毬さんの方から『アルフ』へと正式に依頼を出すらしい。

少し迷ってから、マスターに電話する。

2コール後に、彼女は出た。

『はい、もしもし。どうしたの、矢広君』

「あ、お忙しいところすみません。マスター、今お時間よろしいでしょうか?」

『うん。ちょうどお客さんもいないし、大丈夫だよ』

「ありがとうございます。実は───」

虎毬さんからの協力依頼を説明する。

ケニングについて探っているかも、という可能性も、一応伝えた。何の証拠もないが、こういう疑問は自分より頭の良い人にも共有してもらっておいた方が良い。

そう、思ったのだが。

『え、矢広君の学校のお友達!?』

マスターとしては、そっちの方が大事らしい。

「はあ、まあ。友達……と、言えるかも、という相手ですが」

『大丈夫!行ってきて良いよ!もし不安なら、私もついていこうか?1人でいけそう?』

「メールに添付されていたダンジョンの資料から、僕でも大丈夫そうな難易度かと」

『ううん、そっちじゃなくって。ちゃんとお話しとか出来そう?あ、でもこういうのは、大人がついて行くと逆に気まずいかな……』

「あの、マスター。友達の家へ遊びに行くわけじゃないんですからね……?」

『うん!分かっているよ!クランの方に依頼を出してくれたら、勿論私はOKを出すからね!矢広君次第ではあるけれど』

「はあ……分かりました。では、虎毬さんに了解の旨を送っておきます」

『分かった!頑張ってね!それで、お土産はどうする?私、腕によりをかけて美味しいクッキーを焼くよ!虎毬ちゃんって、アレルギーとかあるかな?』

「もう1回言いますが、遊びに行くんじゃないんですからね?」

『……え、まさか、デート!?キャー!青春、青春だね!お赤飯炊かなきゃ……!』

「聞けや」

あ、やべ。思わずため口になってしまった。

この暴走具合、間違いなく璃子先輩のお祖母さんである。いや、アレよりはマシかもしれないが。

そんな感じで通話を終え、虎毬さんにメールを送る。

「はぁ……」

なんか……疲れた。

小さくため息をつき、スマホをしまう。時間的に、スクロール作りはここまでにした方が良い。帰りが遅くなると、母さんが心配する。

……あと、最悪とんでもねぇタイミングで帰宅して、気まずさが半端ない事になるかもしれない。

そう思い、道具を片付け始めた時だった。

────コンコン。

「はい?」

扉がノックされて、そちらを見る。

「小鳥遊です。今良いでしょうか」

「あ、うん。勿論。どうしたの?何か手伝う?」

答えながら、扉を開けた。

そこには。

「いえ、そういうわけではないのですが……」

困惑した顔の小鳥遊さんが立っていた。

アメスク姿で。

白いシャツ型のブラウスは胸元が大胆に開けられ、白く深い谷間がバッチリと見えている。それを支える、ヒョウ柄のブラジャーまでもが、チラリと露出していた。

そして、ブラウスの裾は彼女の爆乳の真下で結ばれ、薄っすらと腹筋の縦線が浮かぶ細いお腹が外気に触れている。

青いスカートは異常にミニで、歩いたらパンツが見えてしまうのは確実であった。というか、かなりのハイレグの下着を履いているのか……腰紐が、スカートの付け根より上から出てしまっている。

当然の様に肉感的な太腿も惜しげもなく晒されていた。あと、なぜかルーズソックスを履いている。

完璧なまでに、あの実はアメリカの学校とは無関係な、大変叡智な格好であった。

あえて、古典的な表現を使わせてもらおう。

これなんてエロゲ?

「作業中、璃子先輩の様子がおかしくなりまして。ストレス発散だと叫んだ後、クローゼットの方へ走って行ってしまったのです」

「……小鳥遊さんの、その恰好は?」

「璃子先輩に、『美由っちもギャルになれぇい!』と言われて着替えさせられました」

淡々と告げる小鳥遊さんだが、迷惑そうに小さくため息をついている。

それだけの動作で、彼女の爆乳は僅かに揺れるのだ。ムニュリ、と。魅惑の谷間が一瞬だけ形を変え、元に戻る光景に、視線が釘付けとなる。

「矢広さんからも何か言ってください。今日はもう、作業は続けられそうにないので」

「おっぱ……あ、はい」

「おっぱ?」

「なんでもないでぇ⤴す!」

不思議そうに首を傾げる小鳥遊さん、どうにか首を逸らす。

危険だ……!今、自分の理性が音をたてて崩れようとしている……!

決っして、自分の理性は頑強な方ではない。何なら紙粘土と言っても過言ではないだろう。

誘惑せんでくれ……!僕は……弱い……!

……あれ。というか、『美由っちも』という言葉を璃子先輩が言ったという事は。

タッタッタ、という足音が、視線を向けた廊下の先から聞こえてくる。

「未来の技術者のバカヤロー!」

アメスク姿の璃子先輩が、現れた。

小鳥遊さんと同じく、白いシャツ型のブラウスの胸元を大胆に広げ、おへそが丸見えになる様に裾を結んでいる。

彼女よりは小さいとは言え、世間一般からすれば間違いなく大きい部類なお胸様が、小麦色の谷間を見せつけていた。ピンク色のヒョウ柄ブラが、良いアクセントになっている。

健康的なおへそや、柔らかそうな太腿。こちらもパンツの腰紐が上に伸びている、超ミニのスカート。

この似非ギャル、スケベ過ぎる!

「り、璃子先輩……?」

「やってらるかー!なっんんんで、未来のコンピューターのくせに現代のよりスペック低いかもしれしれねぇんだよ!ブラウン管時代想定してんのかよくそがぁ!」

「どうしたんですか!?何か色々おかしいですよ!?」

「1回の処理で何回エラー出すんじゃボケェエエエエ!!」

「正気に、どうか正気に戻ってください!」

そう呼びかけながら、つい彼女の姿を凝視してしまう。

地団太を踏んでいる璃子先輩の巨乳が『プルン♡』『たゆん♡』と揺れ、スカートからピンクのヒョウ柄パンツがチラチラと見えていた。

どうしよう。まず感謝の言葉を叫ぶべきなのだろうか。

「頭の中がムズムズするんじゃい!これは、ギャル度を上げねぇと死ぬ!死んでしまうぞ、オタク君!」

「意味が分かりませんよ!?」

「うるせぇ!あーしの胸とパンツガン見しながら正論を言うな!」

「ごめんなさい!ありがとうございます!」

「良いって事よぉ!」

つい本音が出たが、まさかの許可が下りた。

さてはこの人、ちょっと発狂しているな?

「だが残念だったなぁ!このパンツもブラも見せ下着じゃい!つうか水着だわ!ハーッハッハッハ!」

馬鹿笑いしながら、スカートの裾をつまんでひらひらとし、パンツを見せつけてくる璃子先輩。

下着じゃなく、水着と言うが……ぶっちゃけ、自分からしたら実質下着にしか思えない。

「矢広さん。なぜ前傾姿勢に?腰痛ですか?」

小鳥遊さんがこちらの顔を心配そうに覗き込みながら、腰を撫でてくる。

視界に彼女の美貌と、重力に引かれて形を変えた、長い谷間が入ってきた。あ、待って。今は触れないで。

優しさが、とても辛い。

「スケベかオタク君!変態だなオタク君!言っとくけどあーしも美由っちもそういうのはNGだからな!おさわりは死を意味するぜぇ!」

「璃子先輩、そういうの、とは?」

「美由っちにはまだ早い事さぁ!」

「????」

相変わらず変なテンションの璃子先輩と、疑問符を大量に浮かべる小鳥遊さん。

取りあえず、貴女は人の事をスケベとか変態とか言える格好ではないと思う。

「璃子先輩が、この様に変なのです。矢広さん。どうするべきでしょうか?」

「……頭に冷水でもぶっかければ良いと思う。オーバーヒートしているだけっぽいから」

「良いのでしょうか?」

「良いと思う。後は任せた」

「え、ちょ」

足首から先を使い、室内へ後退。困惑した様子の小鳥遊さんを置き去りにして、扉を閉めた。

「ちょ、矢広さん!?私1人で璃子先輩をどうにかするんですか!?」

「ふはははは!さあ美由っち、一緒に自撮りだ!そんでオタク君に送り付けてやろうぜ!」

「璃子先輩、落ち着いてください!ちょ、何で胸を揉むんで、ひゃぁ!?」

扉越しに聞こえる声を耳にしながら、机まで戻り椅子に座る。

イヤホンを取り出して装着した後、片付け途中だったスクロール作成の道具を広げ直した。

なんかもう……こっちに集中するしかねぇ!

2本のスクロールを作り終えた後、スマホを確認したら3通のメールが届いていた。

1つ目は、虎毬さんからの合同依頼の受諾に感謝する旨。

2つ目は、困惑する小鳥遊さんと馬鹿笑いしている璃子先輩が、アメスク姿で乳合わせをしている自撮り写真。

3つ目は、2つ目から5分ぐらい後に、もの凄く丁寧な文章で璃子先輩から『お騒がせしました』という謝罪と、『あの写真は何も言わずに消してください』というお願いであった。

自分は……なけなしの理性を振り絞って────写真を、消した。

でも、頭の中にはずっと大切に焼きつけておくと、強く誓う。

ありがとう、璃子先輩。ありがとう、小鳥遊さん。

ありがとう、未来のプログラマーさん……!