軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

新事業の影響

冬の晴れた日。

俺は村を見回る。

いつもは徒歩だが、あちこちで雪が積もっているので今日は 空飛ぶ絨毯(フライング・カーペット) に乗って見回る。

だから、ラスティとの子であるククルカンも一緒。

ククルカンは空飛ぶ絨毯がお気に入りだからな。

そして、ククルカンを外に連れ出すのだから、ククルカンのお世話をしてくれているブルガとスティファノも一緒だ。

「ククルカンさま、寒くないですか?」

「マフラーは外しちゃ駄目ですよ。

しっかりと首に巻いてくださいねー」

まあ、ククルカンを大事にしてくれるので問題はない。

とりあえず、いつものルートで俺たちは村を見回った。

ククルカンと空飛ぶ絨毯はご機嫌だった。

屋敷に戻ると、ほかの子供たちが待っていた。

それぞれの母親たちもいるが、彼女たちはなにも言わない。

ただ、子供たちのそばにいるだけ。

……

わかっている。

ククルカンとだけはズルいな。

見回っているあいだに除雪は進んでいる。

歩きでも大丈夫だろう。

暖かい服装……はすでにしているな。

よし、行こう。

ククルカンは……空飛ぶ絨毯と一緒にお昼寝ね。

了解。

俺はブルガ、スティファノにククルカンを任せ、子供たちと村を見回った。

ちょっとした冬のピクニックだった。

デルゼン製紙が試運転を開始し、植物紙の製造を始めた。

デルゼン製紙の代表代行のエライザから報告を受ける。

「山エルフさまたちの機械をいくつか導入したので、予想より製造できる紙の質がよく、数も作れるようです」

それはよかった。

「いえ、その……」

なにかあるのか?

「はい。

この紙を売りに出すと、紙の値が崩壊するかと」

……そんなことになるほど、量産できるのか?

「大きい紙を作って、カットする方式ですので大量に。

たとえばこの本の大きさの紙でしたら、一日で一万枚は製造可能かと」

なるほど。

「これまでの紙の弱点である、大きさと数を揃えることが容易ですので。

たぶんですが、十年もすれば動物紙を作っているところが全滅します」

むう。

そうなると、一村で作っている植物紙も?

「なにかしらの付加価値をつけないと、値下げに巻き込まれるかと」

あー……

よろしくないな。

「はい。

ですので、当面はデルゼン製紙で作った紙は一般販売せず、デルゼン印刷で使うということでよろしいでしょうか?」

それだと、周囲への影響は少ないか。

「当面ですけどね。

デルゼン印刷で作られた本が出回ると、紙も求められると思いますので」

求める声を、どこまで無視できるかか。

そういえば、魔王国の文官から紙を大量に買いたいと言われているんだった。

「魔王国の文官とお話する機会があったのですか?」

ランダンやビーゼルに手紙を預けてきた。

本格稼働していないから、返事はしていないぞ。

「承知しました。

では、その件はこちらで対処します。

魔王国への販売はかまいませんね」

かまわないが、周囲への影響は小さくなるようにな。

「もちろんです。

あと、別件ですが……村で使っている紙を束ねる道具、バインダーは売れますね」

バインダーは、ドースからもらった紙を使うのに使っている。

もちろん、紙に穴をあけるパンチも作った。

村では文官娘衆を中心に使われている。

「はい。

あれ、便利ですよね。

紙が簡単に本になります。

それに、これまでの紙は高価で穴を開けることに抵抗がありましたが、デルゼン製紙の紙なら」

なるほど。

「将来的に紙の流通を 牛耳(ぎゅうじ) るなら、そういった道具を扱う事業を準備しておくのもいいかもしれません」

バインダーにパンチ。

デルゼン文具か。

ペンやインクも売れるだろうしな。

「大樹の村でやりますか?」

あー、希望者を募って、集まればだな。

集まらなかったら、五村に任せよう。

「承知しました」

あと、動物紙を作っているところの保護も忘れずに検討してほしい。

「保護ですか?」

魔法関連は、植物紙よりも動物紙のほうが使いやすいってルーやティアが言ってた。

動物紙が作られないようになると困る。

「需要があるなら、大丈夫そうですが?」

魔法使いしか求めないとなると、値上がりするだろ?

「そうですね」

入手もむずかしくなる。

「ですね」

たぶんだけど、そうなるとルーやティアなら、植物紙でなんとかする方法を研究すると思う。

「あー、しそうですね」

すると、やっぱり動物紙を作っているところは困ると思うんだ。

「承知しました。

えーっと、保護ですから……デルゼン製紙で吸収しても?」

強引な吸収は駄目だぞ。

「もちろんです。

代筆業と同じ方向で進めます」

代筆業。

頼まれて手紙などを書く仕事だが、そうそう手紙の依頼があるわけでなく、メインは写本。

本や手紙を写す仕事だ。

印刷技術が広まれば写本という仕事はなくなると予想される。

代筆業をやっている者たちの貴重な収入源がなくなる。

とても困るだろう。

そのあたりを考え、印刷機は表に出していなかった。

ヴェルサに事業を譲られなかったら、まだまだ表には出さなかっただろう。

出してしまったのだから、仕方がない。

困る前に、代筆業をやっている者たちを雇用。

デルゼン出版で印刷物の原本作りをしてもらおうと計画している。

仕事内容を説明して雇用に納得してもらうのが大変そうだけど……

エライザはお任せくださいと請け負ってくれた。

すでに何人かの代筆業者は、雇うことが決まっている。

そして、代筆業と同じ方向ということは、動物紙を作っている者を雇用するのだろう。

デルゼン製紙は絶対に植物紙しか作らないと決まっているわけじゃない。

動物紙を作る部門を立ち上げ、そこで安定した生産をして収入を得てもらいたい。

……

まあ、俺の勝手な考えだ。

事業を広げ、その影響で困る人を保護とか、余計なお世話かもしれない。

「いえいえ、職の保護は領主の仕事ですから。

当たり前の行動です。

とくに新しい事業を進めるときは、大事なことですよ」

俺は領主ではないが?

「村長は村長という役職の領主です」

むーん、そうなのかな?

「そうなのです。

なんにせよ、こちらのやり方が気に入らなければ相手方は断ってきますので、あまり気になさらずに」

わかった。

ただ、大きな資本で進める新しい事業だから、それに巻き込まれる者たちがな。

「ふふ。

多少の混乱はあるでしょうが、うまく利用してきますよ」

そうか?

「ええ。

なんだかんだで、しぶといですから」

……わかった。

経過を見守るよ。

「承知しました。

なにかあればご報告します」

頼む。