軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

いろいろな仕事

魔王国にはいろいろな仕事がある。

たとえば洗濯。

清潔な生活をするうえでは必須だが、洗濯が苦手な者、できない者、したくない者もいる。

そういった者たちに代わって、洗濯をする仕事。

これ、業者がやる仕事ではなく、普通の一般家庭の内職的な仕事。

袋に洗濯物を詰めて、一袋いくらでやりとりする。

もちろん、洗濯の腕は各家庭で違うので、洗濯の腕がいいところには多く頼まれるそうだ。

同様に 裁縫(さいほう) 。

これも生活に必須だが、誰もが裁縫仕事ができるわけではない。

生地から服を作る本格的な裁縫仕事は、服作りをする仕立屋や布仕事をする裁縫屋に頼むことになるが、簡単な 解(ほつ) れ程度なら、一般家庭の内職的な仕事として引き受けてもらえる。

腕次第で報酬額が変わるし、リピーターの定着率も変化するので、暇を見て裁縫技術を鍛える家庭は珍しくない。

余談になるが、魔王国の大半の家庭の主婦は、生地から服が作れる。

作れないと 嫁(とつ) げないというか、未熟者扱いで結婚の許可を出してもらえないことが多い。

なので、若い娘ならほぼ確実に持っている、もしくは持っておきたい技術だそうだ。

そして、仕立屋や裁縫屋はそういった一般家庭の主婦では手も足も出ないような突出した技術や独自性が求められる。

なかなか厳しい商売らしい。

煙突掃除。

これは煙突を持つ家を訪問し、煙突掃除を提案して行なう仕事。

押し売りっぽいが、代金はとても安い。

この代金の安さには秘密があり、煙突掃除で出た 煤(スス) や 灰(はい) を貰うからだ。

煤や灰は意外と使い道があり、それを買い取ってくれる業者がいるので成り立っている。

だったら代金は必要ないんじゃないかとなるが、代金を取らないと煤や灰がろくにない綺麗な煙突の掃除を何度もすることになるそうだ。

この煙突掃除。

作業する場所が狭いので、体の小さい種族の仕事とされている。

ただ、体が小さくても獣人族系はこの仕事を嫌がる。

毛に煤や灰がつくからだ。

似たような仕事で、下水掃除がある。

これは下水道を管理しているところが、賃金を提示して人を集めてやってもらう仕事だ。

魔王国では下水掃除はスライムを使っているところが多いが、人の目での確認は必要とのこと。

なんでも昔、下水道に隠し部屋を作り、危険な実験を行なった魔法使いがいたり、犯罪組織が拠点にしたこともあったそうだ。

下水道に近づきたい者は少なく、隠れるにはいい場所なんだろう。

スライムを使っていると、下手な場所よりは綺麗なんだけどな。

スライム、助かってます。

荷物運び(ポーター) 。

これは規模の大小があるけど、その名のとおりに依頼者に同行して荷物を運ぶ仕事。

配達や配送ではないので、単独で荷物を運んだりはしない。

必ず依頼人か、依頼人が任命した同行者がいる。

渡す相手の確認が必要だし、荷物を持ち逃げされないためだ。

荷物を持てる力があれば誰でもできる仕事だけど、それだけにある程度の信用は必要になる。

あと、冒険者に同行しての荷運びは、冒険中に獲得した物の回収と運搬をするので、冒険者の足を引っ張らない能力が必要になる。

こういったのって、冒険者より弱い人がやる仕事かなと思っていたけど、冒険者よりも強い人か同等じゃないと雇われないそうだ。

案内。

外部からの訪問者に、街の案内をする仕事。

街に詳しくないとできない仕事で、食事の美味い店や、評判のいい宿の情報は、常に収集していないとやっていけない。

また、コミュニケーション能力が高くないと、客がつかない。

外見も大事だ。

真面目そうに見えないと、客が嫌がる。

真面目そうに見えたからと、絶対に安全というわけでもない。

五村では聞かない話だが、ほかの場所だと怪しい宿に案内して宿ぐるみで窃盗する者もいるとか。

なので、五村では、この案内の仕事をする者を公認して、信用できる案内人を明示。

訪問者が困らないようにしている。

その公認があるため、五村では新規参入のハードルが少しあがってしまっているのが、少し問題視されていたりする。

対策として、五村の村議員が人手を集めて新人が公認を取れるように教育しているそうだ。

さて。

なぜ、こういった商売の話をしたか。

洗濯、裁縫、煙突掃除、荷物運び、案内は個人でやっている仕事だが、取りまとめている者がいる。

店側、客側、どちらかになにかしらのトラブルがあったときに、駆け込む場所が必要だからな。

縄張りとかで揉めたときにも、仲裁役として活躍している。

まあ、そういった取りまとめ役は、主張してなるものではなく、人望があって腕のいい者が推薦されてなっているそうだ。

詳しくは知らない。

文官娘衆の一人、ララベルから、そう教えてもらったからだ。

だから商売の話になった。

そして、ララベルはなぜそれを俺に教えたのか?

ララベルは、その取りまとめている者たちを取りまとめているからだ。

それはヨウコの仕事じゃないのかと思ったけど、ヨウコとは連携するが別口のほうがいいとのこと。

なぜか?

五村での防犯のためだ。

洗濯、裁縫、煙突掃除、荷物運び、案内の仕事は生活に密着している。

それゆえ、不審者を察知しやすい。

もちろん、不審者を見つけたからと捕まえたりはしない。

そんな権限もない。

報告するだけだ。

そして、その報告は最終的にララベルに集まる。

そこで不審者が五村に害をなす者とララベルが判断したら、警備隊に通報。

警備隊の権限で、逮捕する。

これならヨウコと別口にする必要はないようにも思えるのだけど、不審者を見つける目は複数あったほうが安全らしい。

実際、ヨウコのところでもヨウコ管轄と、密偵のナナ管轄の二つの不審者を見つける目がある。

ララベルの管轄と合わせて三つ。

かなり厳重だ。

「村長。

もう一つ、ありますよ」

そうなのか?

「はい」

ララベルが目をやった室内の天井の 梁(はり) にザブトンの子供たち。

なるほど。

不審者を見つける目は、これで四つか。

頼もしいな。

「はい。

努力してまいります」

ララベルの返事に合わせ、ザブトンの子供たちも足を上げて敬礼してくれた。

文官娘衆の一人、ララベル。

正式な名はララベルラルー=ラーベルラ。

なぜかこういった情報の収集や取り扱いが上手いらしい。

文官娘衆は貴族の娘さんなのになぁ。