軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

8.特別な計画

「! 確かに……改良すれば、山岳地帯を移動するときの手助けになりそうです……!」

「ええ。さすがに、人が乗って高速で移動することはできないけれど、滑落の危険がある場所を、歩くのより少し速い速度で移動したり、重い荷物を運ばせることは可能よね」

王妃陛下は、ローナさんが開発した空飛ぶ絨毯を馬車のようにして使えるのではと考えているみたいだった。

それは本当におっしゃる通りで。ローナさんなら用途を聞けば絶対に目的のものに改良できると思います……!

「私もお手伝いしたいと思います。リトゥス王国を訪問できるように」

「フィーネが手伝ってくれるなら心強い。計画は予定よりも早まりそうだな。それなら、公務の予定を調整しないと」

レイナルド様の言葉に、私は目を瞬いた。計画が予定より早まる? 公務の予定を調整??? 近いうちに使節団を派遣するとおっしゃっていたけれど、そんなに現実的な話だったことに驚いてしまう。

いいな。……私も行きたいな……。“お母様”にルーツがあるかもしれない国。訪問したら、もしかして“お母様”のことを知っている人がいるかもしれない。それに、魔法が消えた理由もわかる気がする。

「あの……王妃陛下とレイナルド様はリトゥス王国を訪問されるのですか?」

おずおずと聞いてみると、王妃陛下はため息をつき首を傾げてみせた。

「ふふ。国王陛下が私の訪問は許してくれないのよねえ。余計な問題を起こしそうなんですって。ひどいと思わない?」

「お気持ちはよくわかります。私も同意見ですから」

「レイナルド? あなたは訪問を認められてよかったわね? 当日、認識阻害ポーションを使って入れ替わらない?」

「無理ですし嫌です」

王妃陛下とレイナルド様の仲の良さそうな会話を聞きながら、レイナルド様は使節団のメンバーに入っているのだと察する。いいな。

でも、国交のない国に行くのだ。誰かのお世話はなく自分で動けて、自分の身は自分で守れる人でないとメンバーにはなれないのだろう。

羨ましいと思う気持ちで黙ってしまった私に、王妃陛下が優しく告げる。

「実はね、宮廷錬金術師工房からも数人の人員を連れていくことを検討中なの」

「! 本当でしょうか……?」

「ええ。人選はこれから工房に任せることになるのだけれど……あそこには魔法や錬金術が好きな人間がたくさんいるでしょう? フィーネさんも、選ばれるように頑張ってみてはどうかしら」

「!」

そんなチャンスがあるんだ……!

「王妃陛下、ありがとうございます。工房でメンバーに選ばれるよう、私……空飛ぶ絨毯の改良をがんばります……!」

私はそう決意すると、レイナルド様と一緒に小部屋を出たのだった。

帰り道。月明かりに照らされた吹き抜けの図書館を歩きながら、レイナルド様が聞いてくる。

「フィーネ、ご両親のことを知ったのはいつ?」

「一週間前……ぐらいだったと思います。でももう大丈夫です。ご心配をおかけして申し訳ありませんでした」

立ち止まって頭を下げると、レイナルド様は急に言葉を選ぶようにして黙ってしまった。どうしたのかな。そうして、おっしゃる。

「……フィーネにはそんな話じゃないと思われてしまうかもしれないけど」

「?」

「苦しい時に頼ってくれて、うれしかった」

瞬間、その言葉だけで胸がいっぱいで、動けなくなる。

わざわざ夜中に案内をさせてしまって、ご迷惑ではないかなと思っていたから。助けてもらうばかりで、申し訳ないと思っていたから。

レイナルド様はとても聡明な方だ。私の心を軽くするために今この言葉を下さったのだと思うと、優しさがとても沁みる。

「……私は大丈夫です。もう受け入れましたし、今リトゥス王国への使節団入りの話を聞いて、とっても前向きになれました」

「フィーネさ。さっきアトリエにいたときからずっと大丈夫って繰り返してるけど」

「?」

「まるで自分に言い聞かせているみたいだ」

そう言ってくださったレイナルド様は、とんでもなく心配そうな瞳で私を見ている。

そっか。自分でも気がつかないうちに強がっていたみたい。一度認識してしまうと、ぎゅっと引き締めていた気持ちに綻びが出そうで、私は唇をギュッと噛む。

レイナルド様はとてもお優しい方だ。でも、出会ったばかりの頃とは優しさが全然違う。こうして言葉にして考えると頭の中がとけそうになってしまうほど、私に特別を見せてくださる。

月明かりの図書館は、私に大きすぎるときめきを残していったのだった。