作品タイトル不明
ソニア王国で
歓迎式典、 馬の王(メアラス) に乗って参加するのって緊張する。
マーガレット王女の側仕えとして、この訪問団にいるのだから、馬車に一緒に乗っていたかったよ。
それに、暖房がないから寒い。メアリーには不評だけど、ダウンコート着てよかった。
多分、立派な服を着ている人がマグギャバン辺境伯だと思う。
マントを片方の肩に掛けているけど、格好は良いけど、寒くないのかな? 何だか、初めて会った時のパリス王子を思い出すよ。バラを背負っている感じだったんだよね。
ただ、ソニア王国の歓迎式典に参加した人達、 天狼星(シリウス) にビビっているみたい。
「パリス殿下、カレン殿下、帰国おめでとうございます。マーガレット殿下、ようこそお越し下さいました」
ふうん、自国の王族が先なんだ! 歓迎式典なのに?
マグギャバン辺境伯、この挨拶だけで減点したくなる。ソニア王国が、ローレンス王国をどう見ているか、察しちゃうよ。
前の小競り合いも、ソニア王国がローレンス王国の東部は元々は自国の領土だと思っているから起こったんだよね。
まぁ、これはローレンス王国側からの見方だし、彼方には、彼方の言い分があるかもしれないけどさ。
嫌いだった老カッパフィールド侯爵が、ソニア王国軍を押し返してくれたから、国境が護られたのも確かなんだ。
ここら辺が、貴族主義者の難しい問題なんだよね。
何処かの馬鹿で偉そうな自領の孤児や老人を追い出す貴族主義者と、愛国心があるし領地もちゃんと経営しているけど頭の古い貴族主義者。
私的には、頭に新しい風を吹き込んでやりたい気分だけどさ。目の前の辺境伯にもね!
私の気持ちが 天狼星(シリウス) に届いたのか、不機嫌そうに唸っている。
「 天狼星(シリウス) ! 良い子にしているのよ」
感じの悪い辺境伯は、どうでも良いけど、 馬の王(メアラス) や 金の鬣(グルファクシ) 、それに他の馬たちが怯えたら駄目だからね。
「そのような魔物は、聞いておりません!」と拒否ろうとする。ビビっているのは分かっているよ。
こんな時は、ゲイツ様の出番だ。
「この 天狼星(シリウス) は、訪問団の護衛だ。外務省から通達させた筈だ」
強気の発言をさせたら、ゲイツ様の横に並ぶ人はいない。傲慢な態度がよく似合う。ベネッセ侯爵夫人も、無礼な態度を嗜めない。
「では、王宮魔導師のゲイツ様が責任を持って大人しくさせて下さい」
ははは……と笑うゲイツ様! 嫌な予感しかしない。
「この 天狼星(シリウス) は、ペイシェンス様の従魔です。彼女を怒らせないように注意した方が宜しいですよ」
こんな小娘が? と疑う視線。それと、ザザザッと皆が後ろに下がっちゃったよ。
「マグギャバン辺境伯、出迎え感謝する。こんな寒空の下にマーガレット王女をいつまで立たしておくのだ?」
あっ、パリス王子も寮とは違って王太子モードだ。
やっと移動だ! 寒かったから、良かったよ。
「 天狼星(シリウス) 、小さくなって馬車に乗りなさい」
天狼星(シリウス) が小さくなるのも怖いのか、より引かれている気がする。
「そんな魔物を馬車に乗せるのですか?」
もう、私の中で辺境伯のイメージはだだ下がりだ。
「ペイシェンスは、マーガレット王女の側仕えだ。同じ馬車に乗るのが当たり前だ」
ゲイツ様は、寒いのが苦手なので、とっとと馬車に乗っているから、パリス王子が応えてくれた。
マーガレット王女は、最初に出迎えを感謝した後は、微笑んでいるだけだ。
王妃様やリチャード王子と同じだけど、まだまだ修業が必要かもね。微笑みが深くなって不快を表している。
「さぁ、ペイシェンス様!」
パーシバルが 馬の王(メアラス) から抱き下ろしてくれたので、なるべく格好をつけて馬車に乗る。
「もう帰りたくなったわ!」
私達だけになったので、マーガレット王女が愚痴る。
「破談にしますか?」と笑って言うと、首を横に振る。
「尊大な貴族が多いと、パリス様からも忠告されていたけど……まともな人もいると思いたいわ」
「それは、その通りですわ! 我が国でも頭の古い方が威張っていますもの」
散々、悪口を言って憂さを晴らす。馬車から出たら、微笑みモードにしなきゃいけないからね。
「お母様が反対された意味がよく分かりましたわ。でも、パリス様との結婚は、絶対にやめませんわ!」
恋した乙女は強い! そこからは、シャーロット女官が、これからの予定を話して辺境伯の館まで馬車でぬくぬくする。
我慢した 天狼星(シリウス) には、クッキーをあげておこう!