軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

歓迎式典は緊張する

カッパフィールド侯爵は、陛下の側近として働いているだけあって、もてなしも素晴らしかった。

お風呂だけじゃないよ! 馬の世話も完璧! ここまで一週間の長旅を続けていた馬車もお掃除してくれた。

まぁ、それはいつも私が「綺麗になれ!」と掛けていたからね。そんなに汚れはこびれついていなかったけどさ。

今日は、早めに着いたから、 馬の王(メアラス) と 金の鬣(グルファクシ) の様子を見る。

ちょこっとだけパーシバルと会えたら良いなとも思っているけどね。

私は、常にマーガレット王女の側だし、パーシバルは外務省の上役に色々と用を言いつけられて忙しそう。

馬房にはサンダーとジニーがいたので、明日の相談をしておく。

「国境を越えたら、 馬の王(メアラス) に乗って歓迎式典に出ないといけないそうですの」

「聞いています。そのように手配しておきますよ」

パーシバルは、 金の鬣(グルファクシ) から降りて館に入ったみたいとガッカリしていたら、馬房の奥からベリンダと一緒に出てきた。

「パーシバル様!」と思わず駆け寄ってしまう。

「ペイシェンス様!」とパーシバルもあまり話せないのが寂しかったのか、ギュッと抱きしめてくれた。

「明日の歓迎式典が心配でサンダーと話に来たのです」

こんな話でも、パーシバルと一緒だとホッとする。

見知らぬ貴族の館に泊まる日々、精神的に辛いんだよね。

「明日からは、ソニア王国ですから、ペイシェンス様も気をつけて下さい」

様つけの他人行儀な話し方も寂しい!

「ええ、 天狼星(シリウス) の世話はちゃんとしなくてはいけませんわ」

天狼星(シリウス) は今のところ問題は起こしていない。馬車で寝ているだけだからね。

「ペイシェンス様、 馬の王(メアラス) に乗っての歓迎式典ですが、 天狼星(シリウス) に大人しくするように言い聞かせておいて下さいね」

パーシバルと、分かっている話を続けちゃう! でも、メアリーは手強い。

「お嬢様、お風呂に早く入って着替えませんと」と私達を引き離す。

お風呂は嬉しい! 暖房が効いていても、やはり冬の旅は冷えるからね。

今日、ゆったりと時間を取っているのは、明日からソニア王国になるからだ。

私は、ずっとマーガレット王女と一緒に行動している。ベネッセ侯爵夫人とゲイツ様も側にいるけど、明日からはパリス王子とカレン王女がメインになるソニア王国。

少しだけパーシバルと話せて、ホッとしたよ。

それと、やはりお風呂に入ると温まるし良いよね。

「明日は乗馬服を着ないといけないわ」

乗馬が上手い人なら、ドレスでも貴婦人乗りができるのかもしれないけど、私には無理。

「歓迎式典だと聞きましたが、その後は直ぐに宿泊場所に行くのですか?」

そこら辺は、まだ詳しく聞いていない。歓迎式典って、何をするのかも知らないんだ。

「寒空の下、そんなに長時間ではないと思いたいわ。私はできれば馬車で移動したいけど……今夜、ベネッセ侯爵夫人にお伺いしてみます」

ここまでの旅では、夕食の後もサロンで話したりしないで、すぐに部屋で休んでいたけど、今夜は打ち合わせがあるとシャーロット女官が言っていた。

パーシバルと久しぶりにゆっくりと話せるのでは? と期待しちゃう。

それは、マーガレット王女も同じ気持ちなのか、髪型やドレスに気合が入っていた。

食事の後、カッパフィールド侯爵夫人とベネッセ侯爵夫人と共に、マーガレット王女、カレン王女、私はサロンに先に向かう。

そこにシャーロット女官が来て、明日の段取りの説明をしてくれた。

「ペイシェンス様は、 馬の王(メアラス) に乗って国境を越え、歓迎式典に参加して下さい。あのう、 天狼星(シリウス) もできたら本来の大きさで……」

シャーロット女官もこの一週間、 天狼星(シリウス) の毛皮に足を埋めていたのに、本来の大きさは怖いのかな?

「ええ、それは聞いていますが…… 天狼星(シリウス) を他の馬達が恐れないでしょうか?」

こちら側の馬は、なんとかなるんじゃないかな? それに、乗っている騎士やパーシバルは 天狼星(シリウス) に慣れているからね。

「それは、できるだけ大人しくさせておいて下さい」

「ええ、言い聞かせておくわ」

国境を越えた所での歓迎式典は、簡単に終わるそうなので、ホッとしたよ。

「それで、マードウィク辺境伯の館でも歓迎のパーティが開かれると聞きましたが、先を急ぎたいのに仕方ありませんね」

ベネッセ侯爵夫人は、国内は新年までに余裕を持ってソフィアに到着したいからと、派手なパーティとかは禁止して貰っていたのにと溜息をつく。

「ソニア王国内の旅程は、彼方が作りましたから」

シャーロット女官も不満そうだけど、パリス王太子とその婚約者のお披露目興行っぽいものね。

やっと、男性陣もサロンにやってきた。

マーガレット王女の目が輝いている。私もパーシバルを見つめちゃう。

でも、彼方も明日の国境越えの話をしていて、甘いムードとは無縁な感じ。

「カレン王女、お疲れになりませんか?」

いつも大人しいカレン王女だけど、旅に出てから、ずっと無口だ。

「今回の旅は快適なので楽をさせて貰っています」

そうだよね。ソフィアとロマノ、旅をして分かったけど、かなり遠いな。

「お兄様と同じ馬車ですから、お話しとかされているのですか?」

「ふふふ、二人とも寝ていますわ。温かくてつい」

「私達もですのよ」とコソッと話しておく。

兄妹って、そんなに話題が無いのかもね。それに、カレン王女もマーガレット王女と同じ馬車だったら、眠ったりできないし、お互いに気を使うから、別の馬車で良かったんだよ。

ゲイツ様がこっちにやってきた。

「ペイシェンス様、明日は 天狼星(シリウス) に何を食べさせるのですか?」

大人しくさせなければいけないから、満腹になるのか気になるのかな?

「エバが焼いてくれたレッドドラゴンローストを食べさせる予定です」

ええええ、ゲイツ様が欲しそうな顔をしているんだけど……あれは 天狼星(シリウス) の食事だよ!

「一切れ欲しいです!」なんて言うから、ベネッセ侯爵夫人のお説教タイムになっちゃった。

サロンの隅に連れて行かれちゃったよ。

この日も、そんなに遅くまでは起きていない。次の日も、朝早くから出発だからね。

「 天狼星(シリウス) 、良い子にしているのよ」

国境までは馬車移動だから、 天狼星(シリウス) も小さくなって床で寝そべっている。

マーガレット王女は、気合いの入ったドレスに小型だけどティアラも付けている。私は、メアリーは不満そうだけど、乗馬服にダウンコート。寒いのは苦手だから。

「もうすぐ国境です」とシャーロット女官が言ったすぐ後、馬車が止まった。

「 天狼星(シリウス) 、外に出ましょう」

パーシバルが 金の鬣(グルファクシ) に乗って、ベリンダが 馬の王(メアラス) を連れてやってくる。

「 天狼星(シリウス) 、元の大きさになって……それと、馬を脅かさないでね」

「ワン!」と一声鳴くと、ぐんぐん大きくなる 天狼星(シリウス) 。前より成長していない?

「ヒヒヒン!」と馬達がフェンリルが近くにいるので怯える。

「ペイシェンス様、 天狼星(シリウス) に気配を消すように言い聞かせて下さい」

ゲイツ様に言われるまでもなく言っているし、かなり気配は消している。

「もっと気配を消してね」と言ってから、クッキーをあげておく。

「ワン!」『わかった!』

相変わらず餌付けで言う事を聞かせる感じだ。

ついでに、 馬の王(メアラス) と 金の鬣(グルファクシ) にも、キャロットケーキをあげておこう。

「綺麗になれ!」と行列の全部に掛ける。

朝、カッパフィールド侯爵の館から、雪道を走ってきたから、やはり汚れがついているからね。

「ペイシェンス様の魔法は強くなっていますね」

そう褒めてくれたのは嬉しいけど、 馬の王(メアラス) 達にあげたキャロットケーキが残っていないか、探るのはやめて欲しい。

「プリームス!」とベネッセ侯爵夫人が注意してくれて、行列は進み出した。

国境は、こちら側はもちろんながらローレンス王国の兵が護っている。

そこを通り抜けたら、ソニア王国の兵が護っている国境だ。

わっ、思っていたより多くの人がいるよ! 歓迎式典、緊張しそう!