軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

長旅は辛いよ

早朝にロマノを出発して、かなりの距離を私やマーガレット王女がうとうとしている間に馬車は進んだみたい。

揺れない馬車って、本当に楽だ! これはゲイツ様に感謝したいよ。その上、暖房付きだから冷えてトイレに行きたくならないのも嬉しい。

昼食は、予め決まった貴族の館で頂く。今日は気楽なんだ! だってゲイツ様の館だから。

「帰りは、この館で泊まる予定です」

シャーロット女官が、旅程を説明してくれる。

負担が掛からないように、行きと帰りでは、昼食と宿泊を分けているそうだ。

サッサと食べて、泊まる屋敷まで行かないといけない。ここは、ゲイツ様がそう伝えていたので、余計な事は省かれていた。

ただ、馬を休憩させないといけないので、一時間以上は取ってある。

私は、パーシバルを見つけて、寒くなかったのだろうかと心配だ。

マーガレット王女もパリス王子にエスコートされて館に入っている。

「お嬢様もお部屋へ」とメアリーに急かされる。

トイレを済ませて、顔と手を洗う。昼食は美味しかったし、ゲイツ様の館、めっちゃセンス良い。きっと、ラドリー様が改修したのだと思う。

先代のお祖父様は、金が好きだったと言われていたからね。

金の鬣(グルファクシ) と 馬の王(メアラス) が気になるから、コートを着て馬房に向かう。

天狼星(シリウス) は、朝に腹一杯食べたので、暖炉の前でへそ天状態だから、出発の時に忘れずに起こして、馬車に乗せなきゃね。

今回の訪問団には、スレイプニルが三頭参加している。 馬の王(メアラス) と 金の鬣(グルファクシ) とパリス王子にプレゼントされた若い雄馬だ。

濃い茶色のスレイプニルも、サンダーとジニーが世話をしている。

「 馬の王(メアラス) 、 金の鬣(グルファクシ) 、良い子にしていた?」

特に、 馬の王(メアラス) は爆走する癖があるけど、ベリンダが上手く抑えて、馬車と同じスピードで走らせている。

ついでだから、パリス王子のスレイプニルも加えて、三頭に『綺麗になれ!』と唱えておく。

やはり街道にも雪溜まりがあったりして、サンダーとジニーがブラシを掛けてあるけど、ちょっと汚れていたんだもの。

他の馬も、脚元が濡れているので、綺麗にしておく。

ゲイツ様が作った馬車は、浮いているから汚れていないけど、他のはちょっと泥が飛んでいる。

全部綺麗にして、もう一度トイレ! 三時ごろに一度休憩があるみたいだけど、行っておこう。

「ペイシェンス様、馬や馬車を綺麗にしたのですね」

パーシバルは、外務省の下級書記官として訪問団に参加しているから、少し堅苦しい言い方だ。

「ええ、夕方までにまた汚れるとは思いますが、マーガレット王女の訪問団ですもの」

ちょこっと出発前でもパーシバルと話せて良かった。あらら、彼方でもマーガレット王女がパリス王子と話しているよ。

出発してからは、ずっとゲイツ様の領地を走ることになるんだけど、羨ましいぐらい発展している。

王都から近いのもあるけど、領都だけでなく、小さな町も点在しているし、丘陵地には葡萄畑が広がっている。

まぁ、ゲイツ様の領地にも教会はあるんだけどさ。大人しくさせていると話されていたけど、どうやったのかな?

お茶の休憩をして、泊まる館まで夕暮れの中走った。

「かなり強行軍なのね」

揺れない馬車でも、一日中乗っていたら、お尻が痛くなっちゃった。マーガレット王女も、少し疲れた顔だ。

「まだ国内です。新年までにソフィアに着かないといけませんからね」

私の領地、グレンジャーまでも、早朝にロマノを経ったら、休憩を挟んで夕方に着く感じだ。

今度のラグーンは、ハープシャーで泊まってからになりそう。

今回は、マーガレット王女がいらっしゃるのに、強行軍になっているのは、新年までに余裕を持って着きたいからだ。

本当なら、先程通り過ぎた館に泊まる方が良いのかも? でも、外務省が宿泊場所も決めたので、適切な貴族の館なのだろう。

一年のうち、最も日の短い季節なので、宿泊する館に着いた頃は、暗くなっていた。

これが、春や夏なら、まだ明るかったかもね。

ここから、マーシャル伯爵の出迎え、そして部屋で急いでお着替えだ。

「明日の朝も早いですから、夜は食事を済ませたら休んで下さい」とシャーロット女官に注意された。

着替えるのは、メアリーに任せるけど、一日中馬車に乗っていたので、ヘトヘトだ。

「部屋で夕食を食べたい気分だわ」

マーガレット王女だって、同じ気持ちだろう。でも、夕食の為にドレスに着替え、髪もアップにして貰う。

もてなしてくれるマーシャル伯爵夫妻に感謝しながらも、食事後のサロンは余計だったな。

「お嬢様、早くお休み下さい」

お風呂に入るのは諦めて、お湯で身体を拭いて寝る。

湯たんぽ、持って来て良かったと思いながら眠ったと思ったら、メアリーに起こされた。

「お嬢様、起きてください」

まだ暗いなか、身支度をして朝食だ。メアリーが気を利かして、部屋にお茶とパンを運んできてくれた。

さっさと食べて、朝に弱いマーガレット王女の部屋へ急ぐ。

扉の前にはユージーヌ卿が立っていた。

「おはようございます!」と挨拶して、部屋に入らせてもらう。

「マーガレット王女、髪を整えますわ。食事をなさってください」

侍女のゾフィーに朝食を運ばせる間に「綺麗になれ!」と唱えて、ドレスに着替えさせる。

温かい紅茶を飲んでいるマーガレット王女の髪を整えて、身支度は完成だ。

「馬車でお会いしましょう!」

私は、 天狼星(シリウス) の朝食が心配なんだ。

夜に、大きな肉の塊を焼いて貰って食べたのは知っているけど、できれば朝にしっかりと食べさせておきたい。

メアリーに 天狼星(シリウス) 用の肉を焼いて貰うように、昨夜頼んで貰っていたけど大丈夫かな? いざとなったら生肉でも平気で食べそうだけど。

天狼星(シリウス) 用の肉は、冷凍馬車で運んで貰っているんだ。ドラゴンの肉も一緒に運んでいるけど、その半分は 天狼星(シリウス) が討伐したのだから食べても良い。

ゲイツ様の討伐したドラゴン肉は、王宮調理人と共に先発で送られている。

全部、ドラゴン肉でも良かったのだけど、ゲイツ様が半分は食べたり、親戚に配っても良いと言うからさぁ。嬉しい!

その補填に、ビッグボアやビッグバードを詰め込んだし、温めたら良いだけのようにエバが調理したのもあるんだよね。

天狼星(シリウス) にも許可を取っているよ。

「ワン、ワン、ワワン!」『ドラゴン肉飽きた!』だってさ。

冷凍馬車の中には、ドラゴンシチューもあるし、ドラゴンローストもある。

それらは、夜に外に出して、少し温めたら簡単に食べさせられる。

天狼星(シリウス) に昨夜はステーキだったから、朝はドラゴンシチューを温めたのを食べさせていたら、ゲイツ様が煩い。

「ペイシェンス様、それはエバが作ったドラゴンシチューでは?」

「ええ、でもこれは 天狼星(シリウス) 用ですの。ゲイツ様なら、もう少し香辛料が入ったシチューの方が口に合われると思いますわ」

それは、本当だよ! やはり 天狼星(シリウス) はまだ子どもだから、胡椒とか控え目にして貰っているんだ。

「ううう……早く大使館に着かなくては!」

それは、二日目の私も同じ気分だ。今夜は、メアリーに桶にお湯を入れて持って来て貰おう。足湯だけでもしたいな。

それに、パーシバルとの時間が持てないのも辛い! お風呂は、出発する前から、無理だと諦めていた。

マーガレット王女、パリス王子、カレン王女だけでも、負担になりそうだからね。

唯一、馬車が揺れないし、暖かいのが救いだよ。