作品タイトル不明
出発からぬくぬく
昨夜は、ソニア王国へ行くので、かなり早めの夕食だった。
「ナシウスも中等科になるのだな」とお父様が感慨深げだ。
「ナシウス、素晴らしい成績だったのね!」
「お兄様、凄いです!」
褒めるとナシウスはくすぐったそうな顔で微笑む。
勿論、ナシウスの頑張りを信じていたけど、これで心置きなく旅に出られるよ。
今夜は、パーシバルもゲイツ様も其々の家族で送別会なので不在だ。ゲイツ様はお母様に命じられたみたい。
いつも我が家に突然やって来て、食卓に着いているけど、ベネッセ侯爵夫人に捕まったのだ。
少し早めの夕食にしたのは、明日の朝が早いからだけど、私のたっての頼みでヘンリーも一緒に食べたいとゴリ押ししたから。
ヘンリーは、夕食後に子供部屋に行くと眠っていることが多いので、いつもは七時からだけど、今夜は五時半からスタート。
それに、エバが張り切って私の好きな料理を作ってくれた。
「今夜はナシウスが飛び級したお祝いね!」
「いえ、お姉様の送別会です。無事にお帰り下さい」
ナシウスは真面目すぎるよ! でも、ヘンリーも頷いているから、そうかもね。
「一月以上も旅に出るのだから、身体に気をつけなさい」
珍しくお父様からの注意だ。やはり外国に行くのって特別みたいだね。
お風呂にも入って、早めに眠る。メアリーも早く寝させないといけないからね。
✳︎
朝は、まだ暗いうちから起きて、着替える。朝食も手早く食べて、起きてきたお父様、ナシウス、ヘンリーと挨拶して王宮へ!
この馬車は、パリス王子とカレン王女に貸す予定なので、私の荷物も載せ替えなきゃいけないんだよね。
足元には、朝からエバが大きな肉の塊をローストしてくれたのを食べた 天狼星(シリウス) が寝ている。
足首までふかふかの毛に埋もれて、ぬくぬくだ。
パーシバルとベリンダが 金の鬣(グルファクシ) と 馬の王(メアラス) に乗ってくれる。
私の騎士は同行しないけど、二頭のスレイプニルの世話の為にサンダーとジニーは同行するんだよね。二人は、パーシバルの 疾風号(ヴェント) とベリンダの馬に乗って行く。
御者は、グレアムだけど……この馬車はソニア王国の御者になりそう。でも、グレアムなら、何とかしそうだから任せておく。
朝早くのロマノの街、王宮には続々と馬車が集まっている。
「王妃様がお待ちです」と私とパーシバルは、シャーロット女官に案内される。
そこには、陛下と王妃様、マーガレット王女、それに見送りのリチャード王子、キース王子、ジェーン王女とマーカス王子が勢揃いしていた。
ベネッセ侯爵夫人とゲイツ様、並んでいると親子だと分かるね。
私達が到着したら、パリス王子とカレン王女がゲーリング大使と到着した。最後でなくて良かったよ!
陛下と王妃様から、気をつけてと最終注意をされてから、各々の馬車に乗り込む。
天狼星(シリウス) を私の馬車から、マーガレット王女の馬車に移動させる。毛は落ちていないと思うけど「綺麗になれ!」と掛けておくよ。
「マーガレット王女、 天狼星(シリウス) の上に足を置いても大丈夫ですよ」
一応、訪問団は公式なので、王女呼びだよ。
「まぁ、ペイシェンス! 馬車の中では良いじゃない!」
シャーロット女官は、恐る恐る足を伸ばしている。
「温かいわね。暖房もあるけど、やはり 天狼星(シリウス) の毛並みが最高だわ!」
「ええ、馬車の中は快適ですが、パーシバル様は馬で移動されているので寒いのではないでしょうか?」
「ふふふ、ペイシェンスったら! 熱々ね! でも、パーシバルなら平気なのでは? 金の鬣(グルファクシ) には、パーシバルしか乗れないのかしら?」
「サンダーなら何とか乗れるかもしれませんが、他国では気をつけなくてはいけませんわ」
「そうなのよね。ソニア王国では、貴婦人も狩りに参加されると聞いて驚いたわ」
「ベネッセ侯爵夫人は、殿方は貴婦人達に賞賛されたいそうだと話しておられましたわ」
二人で顔を見合わせて、笑う。
「お母様から、白々しくない褒め言葉を考えておきなさいと言われたのよ。ペイシェンスも一緒に考えて!」
「パリス王子を賞賛するのは、マーガレット王女もお得意だと思いますわ」
「まぁ、ペイシェンスったら!」
女子会をしながら、ロマノの街を出て、一路東へと向かう。
シャーロット女官もメアリーも、私とマーガレット王女のお喋りには参加しない。
「カレン様は、パリス様とお話しされているのかしら?」
「ご兄弟ですから、楽しいと思いますわ」
「ペイシェンス! 貴女は、弟愛が激しいから。私ならリチャード兄上やキースやマーカスと一緒の馬車なんて退屈だわ!」
「でも、私たちの馬車にカレン皇女を乗せたら……メアリーが……」
「私なら使用人の馬車で良いです」とメアリーが口を開く。
「カレン王女の女官は、何とかなりそうだけど……ペイシェンスとシャーロット女官とカレン王女の女官……少しキツくないかしら?」
この馬車は広くて贅沢な造りだから、平気だけど……眠り難くなるかもね。
「長旅ですから、退屈よりも身体を休める方を優先した方が宜しいですよ」
シャーロット女官に言われて、カレン王女を馬車に乗せる話は終わった。
だって、マーガレット王女も私も朝早く起きたので、眠たくなったのだ。
女官や侍女なら、気にしないで眠れるものね!
ガタガタ揺れないし、暖房でポカポカ、それに 天狼星(シリウス) の毛に足首まで埋もれているので、眠たくなるのも当然だよ!
「パーシー様は、寒くないかしら」と心配していたけど、昼食の貴族の館まで爆睡していたよ。