作品タイトル不明
ドラゴン討伐慰労会
ドラゴン討伐慰労会の為に着替えたけど、少し味見したので、次々とレシピが思い浮かぶ。
「まだパーシバル様は来られていないわね。来られたら教えてね!」とメアリーに言っておけば大丈夫。
「レッドドラゴンカレー! 贅沢すぎるかしら? いや、カレーならアースドラゴンかも?」
前世は関東に住んでいたので、カレーは豚肉派だ。でも、祖母は関西出身で、肉じゃがは牛肉派だった。私は、どちらも好きだったけど、兄と姉は肉じゃがは牛肉派!
親は共働きだったから、祖母の料理で育ったからかもね。両親には悲しい目に遭わせてしまったな。
「こちらで楽しく生きているのを伝えたいな……可愛い弟たち、素敵な婚約者に恵まれたんだよ!」
感傷的な気分になった時は、美味しい物を考えるのに限る。
「レッドドラゴンのスジ肉とかもあるなら、スジ肉カレーも良いかも? トロトロになりそうだもの! こんにゃくがないのが痛いわ!」
蒟蒻芋、あれって栽培方法がとてつもなく面倒なんだよね。一回収穫して、休ませて、また植える! 生活科で習ったけど、よく育てようと考えたものだよね。
「カルディナ帝国にはあるかもしれないわ! またパーシー様と買い物に行こう!」
調味料の醤油や味噌は、領地で作っているけど、他にもありそう。魚醤もグレンジャーで作れそうなんだけど、メアリーとかは匂いに拒否感があるみたい。
「小エビの塩辛、あれがあると料理の旨味付けに良いけど……匂いが無理な人が多そう」
食いしん坊のゲイツ様やラドリー様は平気そうな予感!
スジ肉の煮込みの蒟蒻から、レシピから頭が逸れたけど、何個も考えて書いておく。
「エバなら、シルフィドラゴンのパエリア、凄く美味しく作りそう! うん、バターシルフィドラゴンカレーも良いかもね」
ジャーマンポテトも、アースドラゴンで作ったら、めちゃくちゃ美味しそうだよね。
「屑肉でソーセージを作ってもらおう! 挽肉にするなら、キーマカレーも良いかもね。芋グラタンも挽肉の方が食べやすいかも? トマト煮込み、ナスと挟み揚げ、シルフィドラゴンの唐揚げ! タンドリーシルフィドラゴン、春巻きも良さそう!」
ナスは夏野菜だから手に入らないんだ。前世と違って季節ごとの野菜で料理をするんだ。温室はあるけど、やはりね。
トマトは、水煮にして瓶がパントリーに並んでいる。
「シルフィドラゴンのハムをラーメンの上に乗せても美味しそう! 家でなら、しゃぶしゃぶ、すき焼きも有りよね!」
レシピを思いつくまま書いていたら、メアリーが呆れた顔で「パーシバル様がいらっしゃいました」と教えてくれた。
「 天狼星(シリウス) とゲイツ様が帰って来られたのです」
真面目な顔をしていたパーシバルがプッと噴き出す。
「ペイシェンス、 天狼星(シリウス) の方が先なのですね」
満腹になって、暖炉の前でヘソ天になって眠っている 天狼星(シリウス) 、マジ可愛いんだもの。
「珍しくゲイツ様が来られていませんわ」
いつもマナー違反なのに早く来られるのだけど?
「それは、当たり前では? 今は、王宮で陛下に報告されていますよ」
そう言えば、第一騎士団が連れに来ていたね。
「サリンジャー様とラドリー様も招待致しましたの」
「ははは、あの趣味の悪いラグーン館を改修して貰わないといけませんからね」
「ええ……でも私から提案したのではありませんわ。ゲイツ様が言われたのです」
同じ結果だとしても、言い訳をしてしまう。パーシバルに図々しい女の子だと思われたくないんだもの。
「エバには、家向きの料理と大使館で出しても良さそうな料理のレシピを伝えています。どちらが出るか楽しみですね!」
それに、エバなら自分で考えた料理も作りそう。
「 天狼星(シリウス) とヘンリーには私がドラゴン三昧の料理をミニミニキッチンで作って食べさせましたの。途中でエバがやって来てチェックしていましたわ」
「それで、 天狼星(シリウス) は満足して寝ているのですね」
「疲れたのでしょう……それで、ソニア王国へは……」
やっと帰って来た 天狼星(シリウス) を置き去りにするのも心配だし、連れて行くのも心配なのだ。それと、パーシバルが来た時の顔、嫌な事があったのかと心配だ。
常にポーカーフェイスだけど、婚約者だから少しわかるんだよね!
「陛下が 馬の王(メアラス) と 金の鬣(グルファクシ) を連れて行くなら、 天狼星(シリウス) も連れて行けば良いと命じられました。大使は、少し顔を青ざめていましたがね」
「マーガレット王女の評判を落とすようなことにならないと良いのですが……」
それが目的なのに、 天狼星(シリウス) が暴れるのは良くないよね? そこらへんも変だ。
「 天狼星(シリウス) は、ペイシェンスが危険な目に遭わなければ、大人しいですよ」
あら? パーシバルの目が怒っている。何かあったんだ!
「ちょっと馬鹿な噂話を耳にして……」と口を濁す。
「教えて下さい! 余計に気になりますわ!」とせがむと、重い口を開く。
「あのカインズ公子を覚えていますか?」
「パリス王子の留守の間に、盛大な誕生会を開いて流行病を広げた方でしたね」
これは本人のせいではなく、馬鹿な母親の大失策だ。本人も馬鹿だと披露されたみたいだけどね。
「そのカインズ公子の嫁にとか!」
「まさか、私を? カインズ公子って何歳でしたかしら?」
「十一歳ですよ!」と吐いて捨てる。
「ふふふ、怒って頂いて嬉しいですわ。でも、パーシー様とは比べようもありません!」
きっと、嫁に貰ってやっても良いとか、高飛車な噂だったのだろう。パーシバルと決闘だなんて勿体ない! 私がグルグル回しの刑にしてやるよ。
いちゃつきタイムになっちゃったけど、タイミング悪くゲイツ様がサリンジャーさんとラドリー様と到着だ。
お父様、ナシウスも一緒にドラゴン討伐の慰労会だ。
前菜からエバのやる気満々のメニュー!
「これ! これですよ!」とゲイツ様は泣きながらシルフィドラゴンのハムを食べている。
「これほど濃厚な味のハムは食べたことがありません」と食通のラドリー様にも絶賛された。
スープは寒い季節なので参鶏湯風! とろみが温かい!
アースドラゴンは、野菜を巻いて断面が綺麗だ。ソースはオレンジ風味。
それに、私がミニミニキッチンで作った塩漬けキャベツ巻きも! こちらは、醤油の甘辛ソース。
「どちらも美味しいです!」
ゲイツ様、野菜不足だったのでは? 私のお皿には一切れだけど、ゲイツ様達のは五切れ。お父様は三切れだね。
それに、さっき渡したばかりのレシピなのにタンドリーシルフィドラゴン! ヨーグルトが辛さを和らげて美味しいの。
「辛くても、ペイシェンス様の料理は美味しいです!」
食べ過ぎなんじゃない? レッドドラゴンに辿り着かないよ。
「レッドドラゴンのしゃぶしゃぶ! これですよ!」
泣きながら食べているけど……メインは別なんだけど……ミッチャム夫人が書いたメニュー、見ていないな!
「ゲイツ様、メインはレッドドラゴンのゲームパイですよ」と注意する。
他の人も見ていなかったのか、驚いている。鍋物は最後のイメージだからね。
「ゲームパイはお持ち帰りします!」と我儘を言うゲイツ様だ。
でも、折角のエバの力作だから、ワイヤットがワゴンに乗せて運んできた。
「素晴らしい!」とラドリー様が立ち上がって拍手する。
「これは、陛下に献上すべきなのでは?」と珍しく貴族っぽい言葉を発するお父様だ。
「そうかもしれませんわ」と首を傾げると、ワイヤットが微笑む。
「王宮料理人がレッドドラゴンのゲームパイを届けました」と言ったので、皆がホッとする。
さっきは、持って帰ると言っていたゲイツ様だけど「大きく切って下さい!」と騒いでいる。
今回は、ドラゴン討伐の慰労会だから、良いんじゃないの?
デザートは、ゲイツ様の好物のチョコレートケーキだったけど「小さくて良いです」と悔しそうだった。
ゲームパイの残りは、ゲイツ様とラドリー様とパーシバルに持って帰って貰う。
本当に美味しかったからね!