軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

下級貴族の令嬢は逞しいな!

応接室で、ハンナ達を迎える準備をする。

「お嬢様、この生地もお出しして宜しいのでしょうか?」

メアリーが、伯母様から格安で譲って貰った少し織り傷がある生地も応接室に並べているのを心配した。

「私も夏休みに着るドレスをこの手の生地で作ったわ。織り傷がある所を避けて使えば問題ないと思うの。それに、この生地で作るのを嫌がるなら、それは、それで良いのよ」

なんて言っていたけど、ハンナ達は『まぁ、とてもお安くなるのですね!』とこちらの生地に飛びついた。

マリーとモリーは、四人の令嬢に次々と質問されて、初めはおどおどしていたけど次第に慣れて、的確なアドバイスをしている。

この二人は、もう貴族の相手をさせても安心だね。あとのお針子さん達も少しずつ教育していかなきゃ。

「このドレスを今風にリメイクして欲しいのです。銀のビーズ刺繍は私が夏休み中にしますわ」

姉が多いソフィアは、お古のドレスを何枚か持って来ていた。

それ、本当に理解できるな。前世では妹の立場だったから、よそ行きとかピアノの発表会のドレスとかお古が多かったもの。

男爵令嬢のハンナは、この中では一番ドレスにお金が使えるみたい。社交界デビューのドレスは新作を作って貰えると喜んでいた。

「でも、一着だけでは困るの……同じドレスを着回すのは難しいわ」

その新作のドレスも作って貰えない、姉が四人もいるソフィアに遠慮して、私にコソッと話す。

「私は、社交界に疎いのですが、そんなにパーティがあるのかしら?」

王妃様もマーガレット王女を何回もパーティに参加させるつもりはないと仰っていた。

正式な社交界デビューの王宮での舞踏会。パリス王子が主催するソニア王国の大使館で開かれるパーティ、リュミエラ王女関係でコルドバ王国の大使館のパーティ、あと一、二回だと思っていたよ。

正式な社交界デビューのドレスは、王妃様が作って下さるから、他のドレスを一枚か、二枚作れば良いんじゃないかな?

「えっ! ペイシェンス様はご自分の立場をご存じないのでは?」

ハンナに驚かれた。立場って女子爵だってことかな?

「パーシバル様の婚約者として、色々なパーティに招待されると思いますわ」

ああ、そちらか! モラン伯爵家は外交官関係のパーティが多いのかも? これは、パーシバルと要相談だ。

ソフィアは、一枚ぐらいは新品のドレスが欲しいと、織り傷のある生地の中から、デビュタントとして着ても良い白や薄いピンク、薄いブルーの生地を取り出して眺めている。

「これなら、なんとか私のお小遣いで作れるかしら?」

お古のドレスのリメイクはどうするのかな? と疑問に思ったけど、それは、マリーやモリーのアイデアを貰って夏休み中に自分で縫い直したり、銀ビーズ刺繍をすることにしたみたい。

「やはり一枚は新品のドレスが欲しいわよね!」

騎士爵令嬢のソフィアも社交界デビューの日は、王宮で国王夫妻に挨拶するのだ。他の令嬢ほど着飾れなくても、せめて新しいドレスが欲しいのはわかるよ。

「予算内に収められるようにいたしますわ」

私もソフィアと一緒に社交界デビューするのだ。友達が悲しい思いをしているのは嫌だもん。

「仮縫いまでして頂ければ、後は姉にも協力して貰って縫いますわ」

わぁ、この夏休みは裁縫三昧になりそうだね。

ハンナやリリーもソフィアの発言で、自分達も節約して、仮縫いまでにしようと言い出した。

「仮縫いまでなら、少しはお安くなるのかしら?」

まぁ、本縫いの方が大変だからね。ハンナは、それなら二枚作ろうと生地を選ぶ。

「それに、銀ビーズ刺繍などは自分で頑張れば良いのよ!」

リリーも二枚目を選んでいる。こちらも、正式な社交界デビューの白のドレスは作って貰えるから、色のドレスを選んでいる。

「ペイシェンス様、申し訳ないけど刺繍のデザインもお願いできないかしら?」

ハンナがお金を掛けないのは、悪いかな? と遠慮気味に言う。

「いいえ、お友達ですもの! それにしても、クラリッサはドレスを作らなくても良いの?」

他の社交界デビューを控えた上級生達に圧倒されて、クラリッサは唖然としている。

「いえ、私は……それに、私はドレスを作るぐらいなら、ロマノ大学の学費を貯めたいのです」

ああ、そう言えば、バリー氏は昔風の考えで、女の子は王立学園を卒業したら嫁に行けば良いって感じだったね。

「小父様は、ドレスは作ってくれそうだわ」

親戚のハンナがクスクス笑う。バリー氏は、官僚で金銭的には困っていなさそう。ただ、兄のエドしか大学に行かせないとは、いただけないな。

「ペイシェンス様、クラリッサが大学に行けるように秘書にされるのですか?」

ハンナに夏休みの領地での秘書のバイトをバリー氏に説得して貰ったけど、少し心配していたみたい。

私は、メアリーにお茶を用意してもらい、皆に秘密の結婚式の計画を告げる。

「侍女のメアリーを結婚させたいから、夏はクラリッサにも秘書として常に私の側に居てもらわないと困るのよ」

『きゃー』とメアリーに気づかれないように押し殺した嬌声が上がる。恋バナは、皆、好きだからね。

「でも、ペイシェンス様の信用しておられる侍女を社交界デビュー前に結婚させて宜しいのでしょうか?」

ソフィアが心配そうだ。

「ええ、だって結婚しても私の侍女を続けて貰うつもりですもの」

全員が少し驚く。えっ、そんなに驚くことなの? よくわからないよ。

「まぁ! ペイシェンス様はとてもお優しいのですね」

ハンナが代表して口を開いた。

「だって、メアリーは母の代から仕えてくれているのよ。私を育ててくれたのもメアリーだわ」

あっ、と全員が母親が亡くなっているのを思い出す。

「でも……住む場所はどうされるのですか?」

それは、私も悩んでいる。でも、一つ考えがあるんだよね。グレンジャー家は、とても広いんだ。それに、新居に決めた屋敷も広い。

「屋敷の裏に家庭持ちの使用人用のコテージを建てるつもりなのです」

今回はメアリーだけど、ジョージやエバ、それにワイヤットも結婚するかもしれない。皆、貧乏なグレンジャー家を支えてくれた使用人たちだからね。手放したりしないよ。