作品タイトル不明
青葉祭の錬金術クラブは大混雑
音楽クラブの新曲発表会を終えたので、錬金術クラブの熱気球試乗会に急ぐ。
本当なら、マーガレット王女やアルバート部長の新曲発表会も聴きたかったけど、練習で何十回も聴いたからね。
「ペイシェンス! よく来てくれた!」
カエサル部長に熱烈歓迎された。まだ騎士クラブは試合中なので、応援には来てくれていない。
「私は何をすれば良いですか?」
一応、熱気球の上げ下ろしはできる。女学生やご婦人方で、男子学生と狭い籠に乗るのを躊躇う方がいるかもしれないから、クラリッサと共に練習したんだ。
「今は、熱気球の操縦は間に合っている。それに、予約が徹底しているから、そちらは初等科のメンバーで大丈夫だ。ペイシェンスは、料理クラブと協力して、綿菓子を作って欲しい」
カエサル部長に言われて、ハンナ達の方へ向かう。
「ペイシェンス! よく来てくれたわ」
わちゃわちゃと、料理クラブのメンバーに囲まれてしまった。
「綿菓子なら、練習して素早くできるようになっていたと思うけど?」
ハンナに肩を掴まれた。
「綿菓子が問題じゃないの! 学生は良いのよ。でも、上級貴族の相手なんか私たちには荷が重すぎるわ!」
そうか! 料理クラブのメンバーは下級貴族が多いのだ。
「綿菓子は私たちが作るから、それを渡すのを手伝って欲しいの」
熱気球の発着場から離れた芝生の上に、ガーデンテーブルとチェアーが置いてある。
そこに、試乗待ちの保護者や学生達が座っているのだが、綿菓子を食べている人が少ない。
「熱気球の試乗券に綿菓子の代金も含まれているのよ」
去年の青葉祭は、アイスクリームだけ有料だった。材料費がかなり掛かるからね。
でも、自転車の試乗は、予約はするけど無料だったんだ。これは、これから販売する予定なので、宣伝を兼ねていたからだ。
今年は、熱気球の試乗も有料だ。だって、魔石を使って空気を温めているからね。最初は魔法でしようかと考えていたけど、一日中は無理だから魔法陣と魔石に変更したのだ。
その魔石代を試乗券で賄う事にしたのだけど、何となく綿菓子はおまけでつけた感じ。ただ、綿菓子も砂糖を使う。とはいえ、スプーン一杯で大きく膨らむんだよね!
「そうなの! 本当は全員に配りたいのだけど、あちらから言っては来られないから……」
ハンナ達は、保護者でもご婦人達なら、何とか声を掛けて綿菓子を渡していたのだが、熱気球目当ての紳士方には、少し声を掛けづらかったみたいだ。
「それに、ご婦人方の一部は、元々、熱気球には試乗されない方も多いので、どうしたら良いのか困っていたのよ」
ああ、それはこちらの判断ミスだ。
「なるほどね! カエサル部長に相談しなくてはいけないけど、ご婦人だけ来られている方はいらっしゃらないと思うわ。だから、旦那様が試乗されるのを見学されている方に綿菓子を配っても良いと思うの」
奥様が綿菓子を食べたのを怒る紳士はいないだろう。
「それと、綿菓子を販売して欲しいとも言われているの」
あっ、それもあるかも! 綿菓子って子どもが好きそうだもんね。
青葉祭の見学は、事前に申し込みをした保護者だけなのだ。今年は、陛下とその側近の方々が前日に試乗されたけどさ。
つまり、学園に入学する前の子どもは見学に来られないんだよね。ヘンリーは、去年の夏休みに熱気球に乗ったけど、本当は青葉祭でも乗せてあげたかったなぁ。
弟の事になると、私の頭は回転が早い。
「お土産の綿菓子を販売しましょう!」
前に錬金術クラブの体験コーナーでも、その場で綿菓子を食べないで家にお持ち帰りをしたいという女学生がいたので、ナイロン擬の袋を作っていたんだよね。
「クラブハウスから持ってくるわ!」
クラブハウスの鍵を貰うついでに、カエサル部長に販売の許可を得る。
「ああ、あれこれ考えていたのに、試乗されない方の綿菓子については抜けていたな。それと、親御さんなら家で待つ子どもにお土産として買って行きたい筈だ」
販売値段は、スプーン一杯分の砂糖代金に手間賃を上乗せした。
「まぁ、お土産が買えますのね!」
ハンナ達に次々と綿菓子を作ってもらい、それをナイロン擬の袋に入れて、トレイの上に乗せてガーデンテーブルを回る。
「やはり、ペイシェンスが来てくれたおかげで、スムーズに綿菓子を渡せるようになったわ」
それと、試乗前の紳士方に「奥様が見学されるなら、綿菓子をお配りします」と、試乗券の半券に付いている綿菓子券を奥様に渡して貰えるようになったのが良かった。
「当日になると、あれこれごちゃつくわね!」
かなり、皆でシミュレーションしたつもりだったのに、熱気球に試乗しないご婦人への配慮が抜けていた。
「学生は、試乗しない人は予約しないからなぁ」
なんて、呑気なことを言っているうちに、昼食時間になり、ハンナ達と交代でカフェで簡単に食べた。
午後からは、騎士クラブの増援があったので、よりスムーズに試乗は進む。まぁ、午前中の反省もあって、綿菓子券の半券を初めから奥様に渡して貰うようにしたのも大きいかもね。
「ペイシェンス! 来たわよ!」
マーガレット王女が煌びやかな集団を引き連れてやってきた。
「予約までの間、彼方のチェアーで綿菓子でも如何ですか」
マーガレット王女、リュミエラ王女、ジェーン王女、パリス王子、カレン王女!
ハンナ達は、驚いて固まっている。
王族関係を纏めたのではなく、音楽クラブ、コーラスクラブ、グリークラブの合間、つまり演劇クラブの発表時間しか空きがなかったのだ。
キース王子とオーディン王子は、騎士クラブと一緒に協力してくれるから、前日に試乗済みだ。
後のアルーシュ王子は、朝一に試乗したそうだし、王族関係はコンプしたかもね。
「ペイシェンスに接待を頼むわ!」
皆様、怖い方では無いけど、やはり王族オーラがすごい。
学友のエリザベスやアビゲイル、アンジェラや他の学友も一緒だけど、陰に隠れちゃっているね。
「まぁ、体験コーナーの時の綿菓子とは味が違うわ!」
やはり女の子は敏感だね。
「黄色はレモンね!」
リュミエラ王女は黄色を選んだから、嬉しそうに食べている。
「私の緑はりんご味ですよ。マーガレット様、そちらのピンクは何味ですか?」
おやおや、パリス王子は妹のカレン王女もピンクなのに、マーガレット王女と交換して食べているよ。
熱々だね!
「アンジェラ、熱気球大丈夫そう?」
私は、学友達のテーブルに座っているアンジェラにコソッと聞いた。
「ええ、とても楽しみなのです」
女の子らしいアンジェラだから、少し心配したけど、大丈夫そうだった。
熱気球の試乗が終わったマーガレット王女達に、私は講堂に連れて行かれる。
「グリークラブの伴奏があるから、ここで失礼します」
ナシウスとはすれ違いになっちゃった。
あの子は、歴史研究クラブの当番の関係で、朝一と午後遅くに錬金術クラブに来るのだ。
後片付けは、料理クラブのメンバーもダンスパーティの着替えがあるから、錬金術クラブメンバーでしてくれる事になっている。
「ああ、これで錬金術クラブの青葉祭は終わりなんだわ」
何となく、朝からおセンチな気分になることが多いな。