軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

最後の青葉祭

前日から疲れちゃうほど忙しかった青葉祭。当日は朝から、少しバタバタしちゃった。

「ペイシェンス、私やリュミエラ様だけじゃなく、エリザベス達の髪までセットするの?」

去年までは、エリザベス、アビゲイル、リリーナは家から学園に通っていたから、侍女に髪を整えて貰えていたのだ。

今年から寮生活で、アビゲイルは手先の器用さを活かして何とか見られる髪型になっている。エリザベスは、最初は志が高すぎてアバンギャルドな髪型だったけど、自分ができる範囲の限界を侍女に教えてもらったのか、今では編み込みを纏めた髪型に落ち着いている。

リリーナは、元々の髪が素敵だから、ハーフアップでも見られる。ただ、毎朝、微妙に高さが違うけど、美人って得だよね。

そのアバウトさも美しさに感じる。ただ、それは私の前世の感性だからかも? もっと、カチッとした髪型の方が評価が高いみたい。

「ペイシェンスと青葉祭を過ごすのは、これで最後なのね。収穫祭は、卒業生として観客だから一緒に演奏は出来ないし……私が音楽クラブの部長としてやっていけるかしら?」

アルバート部長は、青葉祭までで、その後はマーガレット王女が部長になると決まっている。

「マーガレット様以外に音楽クラブの部長は務まりませんわ」

音楽愛の深さは、クラブメンバー一だからね。

「私もコーラスクラブの部長だけど、上手くやっていけるかしら?」

リュミエラ王女は、もう部長としてやっていっている。

「お二人とも立派にやっていかれますわ」

女の子って『最後の……』ってセンチになるね。私も何となくしんみりしちゃったけど、そんな暇はない。

手はテキパキと動かして、5人の髪をセットする。

ペイシェンスも少し背も伸びて、かなり可愛くなったけど……マーガレット王女、リュミエラ王女、エリザベス、アビゲイル、リリーナ、とても綺麗だ。

「ダンスパーティの前に髪飾りをつけたら良いですね」

今年は、私もパーシバルというパートナーがいるから、ダンスパーティを楽しむつもり。でも、リュミエラ王女は、リチャード王子が参加できなくて少し悲しそう。

「青葉祭にはリチャードお兄様はいらっしゃらないけど、夏休みは一緒に過ごせるでしょう!」

今年の夏の離宮は、賑やかそうだ。私は近づかないようにしよう。

ローレンス王国の王族だけでなく、リュミエラ王女やカレン王女、そしてパリス王子とオーディン王子! まぁ、全員がずっと過ごす訳じゃないみたいだけど、豪華絢爛な世界だよね。

「ええ、帰国する前に二週間ほど、夏の離宮で過ごすことになったの」

ポッと頬を染めるリュミエラ王女は、恋する乙女だ。私もパーシバルと婚約中で、恋する乙女の筈なのに、どうも錬金術や領地のことがメインになっている気がする。

これではいけないのでは? なんて反省しながら、朝食をとり、急いで講堂に向かう。

「ペイシェンスにはトリを取ってもらいたかったが、今回の新曲は軽い感じなので始めでも良いだろう」

アルバート部長に錬金術クラブを重視し過ぎていると嫌味を言われたけど、私は初等科一年と一緒に一回目の発表だから、少しの時間で終わった。

これで、私の音楽クラブでの活動は、ほぼ終わる。アルバート部長も青葉祭が終わったら、部長をマーガレット王女に譲る。

マーガレット王女が部長だから、完全に引退はできないけど、少し余裕ができるかも?

それは、パーシバルも一緒だね! 青葉祭が終わったら、後は次の生徒会長にバトンタッチ。

ロマノ大学の受験とか、指導教授との面談とかあるけど、単位は秋学期は残りわずかだ。

私的には領地に行きたい所だけど、社交界デビューがあるんだよね。

うん、私だけならパスしたいけど、パーシバルは外交官になるし、顔つなぎも必要みたい。それに、領主としても、顔つなぎは必須みたいだね。

アルバート部長から離れた舞台裏で、あれこれ考えているうちに、音楽クラブの新曲発表会になった。

「ドキドキします」

アンジェラは今回が初めてだったね。

「練習した通りにすれば大丈夫ですよ」

手を握って励ます。

アンジェラは、問題なくハノンを弾いた。他の初等科のメンバーも練習の成果を発揮していた。

ラフォーレ公爵が「ブラボー」と騒いでいるのにも慣れたね。アルバート部長がすかさず止めに行くのもいつも通りだ。

さて、一回目のトリは私だ。

「ペイシェンス様、頑張って!」

アンジェラに激励されて、舞台に立つ。

今回は、始めだから軽い『ラプソディー・イン・ブルー』を最初に弾く。

そして、二曲目は『月光』。三曲目は『別れの曲』。

『別れの曲』を最後にしたのは、これで音楽クラブの活動が終わるからだ。あれこれ問題もあったけど、王立学園での生活の大きな部分だったからね。

ああ、ラフォーレ公爵がアルバート部長を振り切って、舞台に駆け寄っている。

私は、なるべく優雅に見えるように素早くお辞儀をして、舞台裏に引っ込んだ。

「アンジェラ、サミュエル! 私は、錬金術クラブに行かないといけないの。後はお願いね!」

足の遅いペイシェンスとしては、精一杯の早足で講堂から逃げ出す。

ここでラフォーレ公爵に捕まったら、何だかまずい気がしたのだ。