軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

明明とマキアス先生

週末は、マントに刺繍をしながら、弟達とゆっくりと過ごした。特に、ヘンリーは屋敷に一人だから、気をつけてあげなきゃね。

でも、朝はパーシバルが 馬の王(メアラス) の運動に来てくれるし、そのままナシウスとヘンリーの武術指導もしてくれる。

日曜の午後からは、エリザベスとアビゲイルが来たので、縫ったドレスを渡した。

ドレス代金は、布代と縫賃のお友達価格で金貨5枚! これって、庶民なら半年暮らせるのかも。

「こんなに安くて良いのかしら?」

お嬢様なのにお洒落なエリザベスは普段のドレスの値段もチェックしていたみたい。

「ええ、これからは織り傷のある布も使うつもりよ。勿論、傷のある所は使わないけど」

アビゲイルも喜んでくれた。本当は、この二人には安いドレスは必要ないのかもしれないけどね。

ナシウスは日曜の午後には寮に行く。でも、私は月曜の朝に行くつもり。ヘンリーを一人にしたくないから。カミュ先生がついていてくれるけど、やはりね。

それでも月曜の二時間目までには行くけどさ。明明とマキアス先生、何が問題なのか分からない。

まぁ、マキアス先生は、少し捻くれているし、親切とは言い難いけど、悪い先生じゃないと私は思う。

それに、明明も二回しか会った事ないけど、美麗様に尽くす態度を見ても悪い子じゃないと思うんだよね。ただ、カルディナ帝国の導師様とマキアス先生は違うのかもしれない。

カルディナ帝国で学んだ薬学とローレンス王国で学ぶ薬学が違うのは、明明も理解できると思うんだけどねぇ。

それか、あちらの導師様は人格者で崇拝していたのかも? マキアス先生は、魔女先生だからね。

私の中のペイシェンスが口にするのを阻むから、お淑やかな悪口にしかならなかったけど、私だけなら罵倒していたよ。

月曜は、下の学生食堂の横のカフェで明明と話してみよう。

そう、秋学期の課題の『学食の改善プラン』で私やパーシバルやフィリップスやラッセルの書いたレポートが採用されたんだ。

学食は、メニューが二つになったよ。いつもの量たっぷりの肉の煮物系と量控え目の肉の蒸し物系。

それと、面談室を潰して、カフェができたんだ。ここも二時間目から四時間目まで開いている。

メニューはお茶とトーストとサンドイッチとクッキー。食券を買って利用するみたい。

父親を送ってから、私は寮に行く。やはり、馬車は二台欲しいな。

マントの刺繍は終わったから、後からメアリーにゲイツ様に届けてもらう。

明明を温室の前で捕まえた。

「明明様、ちょうど良かったわ! 一緒にお昼にしましょう」

「でも……」と戸惑っている明明を強引にカフェに連れて行く。

「サンドイッチと紅茶で良いかしら?」

勝手に二人分買ってから、トレイにサンドイッチと紅茶を置いてもらって、席に着く。

「いつも 上級食堂(サロン) では見かけないけど、下の学食で食べているの?」

明明は首を横に振る。

「食事は摂らないで、屋敷に帰る事が多いです」

へぇ、そうなんだ。口に合わないのかな?

「学食のが口に合わないなら、 上級食堂(サロン) に来ても良いのよ」

美麗様の屋敷では美味しいご馳走ばかりだからね。

「いえ、薬師の資格が欲しくて通っているだけですから」

うっ、明明の口調が固い。薬師の資格を取るとは、前から言っていたけど、美麗様の屋敷ではもっとやる気があった気がするよ。

「何か嫌なことがあるなら、相談に乗りますわ」

目を伏せていた明明が、一瞬目を上げて、そしてまた伏せた。何か言いたい事はありそう!

「マキアス先生は、少し変わっておられるから、慣れるまで困惑されるかもしれませんね」

やんわりと水を向けたら、明明がぽつぽつと話しだした。

「初めは私がローレンス語が堪能で無いから、下級薬草を育てるのを失敗したのだと思ったのです」

ふむ、ふむ、先ずは下級薬草を育てるんだったね。

「でも、他の学生も枯らしています。だから、私はマキアス先生に『如何やったら枯れないのか教えて下さい』と教えを求めました」

なるほどね! それが普通だと思うよ。

「でも、マキアス先生は『一度言った事は二度と言わないよ』としか言われないのです」

ああ、そういう感じだったね。思い出したよ。

「明明様、あの先生はかなり意地悪ですが、学生の自主性とやる気を重んじます」

明明がキッと目を上げる。

「私はやる気はありますわ!」

そうだけどさ、それだけでは足りないんだ。

「私は、毒消し草の育て方でとても苦労しました。あの教科書通りでは、上手く育たなかったのです。図書館で何冊も、何冊も調べて、やっと育てる事ができたのです」

明明は、賢い子だから、ハッとしたみたい。

「私は、美麗様に言われたから、薬師の資格だけは取ろうと王立学園に入学しましたが、そんな消極的な気持ちでは駄目だったのですね」

すぐにでも図書館に駆けて行きそうな明明を止めて、一緒にサンドイッチと紅茶を飲む。

「薬師だけでなく、美麗様にローレンス王国の事を教えるなら、文官コースを取っても良いし、家政コースでマナーや刺繍や裁縫を学んでも良いのよ」

明明は、カルディナ帝国でも刺繍や裁縫は教えて貰っていたみたい。

「音楽やダンスは、全く違う感じですわ」

お国が違うと、難しい面もあるよね。

「でも、美麗様にローレンス王国風のダンスや音楽を披露したいと思います」

ああ、やる気になった明明! 良かったよ!

この週は、火曜と木曜は音楽クラブに行って初等科のメンバーの新曲を作るのを手伝ったり、他の日は錬金術クラブで自転車を作った。

ただ、この自転車の試乗は女学生には不評かもしれないので、別にご褒美は、りんご飴もしようと提案した。この水飴は麦芽糖でお安くするつもり。

こちらのりんごは、元々小さくてちょっと酸味が強いから、りんご飴に良いと思うけど、令嬢達はかぶりついたりしないのかもね。お持ち帰りできるようにしたい。

クラブが終わってからは、寮で勉強会だ。私は、領地に行かない二月の間に、レポートに必要な資料を集めたり、グラフにしておく。

「ペイシェンスの世界史のノート、凄くわかりやすいわ」

マーガレット王女とリュミエラ王女は、文官の世界史、地理、外交学、経済学、経営学を受講している。

「行政と法律のノートも教科書を纏めてあって、理解しやすいわ」

二人が単位を取りやすいように、これまで勉強したノートを渡している。

世界史と地理のノートは他の学生に貸したのを返して貰ったんだ。

リリーナは、リリーナなりに真面目に勉強している。Aクラスに戻るのは無理かもしれないけど、留年は無いと思う。

エリザベスとアビゲイルは、着々と単位を取ろうと頑張っているし、このままなら秋に社交界デビューしても大丈夫だと思うよ。